見出し画像

幸福によって暴かれるもの~セネカ~

平和自体も新たな心配事をもたらす。
安全な状況に置かれても、ひとたび心が動転すれば、安全とは思えなくなる。
なんにでもおびえる習慣が身につけば、心の平安を守ることはできない。
本当に危険を避けるのではなく、逃げ出すだけだからだ。
ところが危険に背を向ければ、ますます大きな危険にさらされる
~セネカ『倫理書簡集』~

黒後家蜘蛛の会のコーヒーブレイク

ゴンザロはたばこの煙にむせながら言った。
「幸福によってもたらされる新たな心配事とはね、
一番わかりやすいのは家族だよ。
どれだけ勇猛な軍人でも、自分の子の前では甘々だし、
子の病には気が動転するだろうよ。』

ルーピンは分厚い眼鏡の奥から目を光らせながら言った。
「この言葉はセネカだからこそ説得力を持つよ。
財務官として働いていたのに、島流しの憂き目にあう。
その後、皇帝の側近として活躍するも、
その皇帝から自死を命じられだ。
これだけ酸いも甘いも味わってきたんだ、こんな言葉も出るだろうよ。」

ドレイクはグラスを片手に歌うように言った。
「その通り!
彼の素晴らしい点はどのような不条理、不幸に対しても背中を向けなかったことさ。
彼は哲学者として最後まで、自分のできる最善を尽くしたのだろうよ。」

ドレイクの演説が終わると、稀代の給仕ヘンリーがすかさず声をかけた。
「皆様、お食事の準備ができました。どうぞこちらへ……」

気づき

・セネカの言葉は全体的に真面目な印象
・というよりは、エピクテトスの講義がだいぶあれなのかも
・「セネカの最後」は「アテナイの食堂」とともに人生で見たい絵画の一つ
・安定とは停滞であり、不変はこのように存在しない。つまり、最も恐れるのは変化を恐れることそのものだ。変化するのは当たり前であり、それをどう受け止めるかを準備すること、変化に対応する力を身に着けるために努力することこそが、本当の強さなのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?