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歌舞伎初心者アナウンサーのひとりごと。~エネルギーあふれる2週間に感動!2021年南座・三月花形歌舞伎~

先日、きっと、いや必ず、歌舞伎界の新たな春の風物詩となるだろう歴史的な1ページをこの目で見ることができました。
3月上旬から2週間、京都・南座で公演された三月花形歌舞伎です。
主要なお役を務めたのは、中村壱太郎さん、尾上右近さん、中村米吉さん、中村橋之助さんの4名。公演当時の年齢が全員30歳以下ということで、新たな取り組みもふんだんに取り入れられたエネルギーと情熱溢れる、(誠に勝手ながら笑)いち同世代としてとても刺激的な公演でした。

さて、この三月花形歌舞伎。
人気作品のひとつ「義経千本桜」のなかから、舞踊「吉野山」と「川連法眼館」が、Aプロ・Bプロの異なる配役で上演されました。私はBプロを拝見。配役は、静御前=米吉さん、佐藤忠信実は源九郎狐=橋之助さん、源義経=壱太郎さん、そして歌舞伎の魅力=右近さん でした。


”素”の役者さんを知ってもっと歌舞伎が身近に


今回、劇場内外で行われた歌舞伎界初の試みも話題になりました。
まず劇場内の取り組みから。
お芝居が始まる前に行われた「歌舞伎の魅力」。これがとてもユニーク!
役者さんが日替わりで、作品のみどころや、舞台装置、演出方法などを実演形式で教えてくれるんです。役者さんはお化粧をしていない状態ですので、歌舞伎の舞台で”素”の役者さんを見られることがまず新鮮でしたが、作品についても、舞台上に設置された大きな相関図なども用いて詳しくわかりやすく解説してくれるので、なんだかちょっとした講義を受けた気分にもなりました。

この「歌舞伎の魅力」。面白いのがこれだけじゃない!
SNSでファンから募ったリアルな質問に役者さんが答えてくれるんです。
素朴な疑問に役者さん自ら答えてくれる機会があるのはとても嬉しいし、何より勉強になり、まさに新たな歌舞伎の魅力を感じられるコーナーでした。

私が拝見した「歌舞伎の魅力」は右近さんがプレゼンター役。
右近さんは歌舞伎役者としてだけではなく、唄い手・清元栄寿太夫(きよもとえいじゅだゆう)としてのお顔も持っている二刀流!
生唄を披露してくださったり右近さんならではの演出が施されていました。
他のお三方も個性あふれる解説や演出をされていたそうで、まさに四者四様のコーナー。4パターン制覇された方が羨ましいです・・・(笑)

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(今回はお写真タイムもありました☆南座の花道横は舞台から近くて迫力もすごかった!)

続いては劇場外での取り組み。
公演期間、毎夜7時半から配信されたインスタライブ
これまで役者さん個人のアカウントでプライベート的にインスタライブが配信されることはありましたが、今回のように劇場のアカウントを介してオフィシャルに行われるのは初めてです。
舞台を終え急いでお化粧を落とした役者さんが日替わりで、南座の楽屋から配信するスタイル。
舞台上では絶対に聞けない裏話やリアルな気持ち、熱い想いを聞き勉強になったと共に、“素”の役者さんを知って、さらに応援したい!という気持ちになった方は多いと思います。

すべて永久保存版の配信で、どうかアーカイブ消えないで〜!と願っているのですが(笑)
特に印象的だったのが、中村米吉さんと尾上右近さんの92年生まれ同世代コンビの配信。

大変おこがましいのですが、私も92年生まれ。お二方と同学年です。
社会全体で見ればそろそろ中堅クラスに入る世代で、仕事の悩みも新人の頃とはまた違ったものに変わってきて、色々と葛藤することも増えてきました。
舞台は全く違いますし、何よりもお二方は伝統芸能を背負っているので一緒にするのは罰当たりかもしれません。でもこの夜の配信では、同世代のお二方の悩みのようなものが少し垣間見れた気がして、「私も頑張らないと!」と刺激を受けました。

こういったオフィシャルのインスタライブ配信は、是非とも今後も色々な公演で取り入れていただきたいなあ〜…と思います!!!



かわいさと凛々しさと艶やかさと

何だか篠原涼子さんの名曲のタイトルのようになってしまいましたが(笑)今回の公演を見ての感想です。

前述したように今回上演されたのは『義経千本桜』から舞踊『吉野山』と『川連法眼館』。お話の舞台は奈良県の吉野山。桜の名所ですね。

ここで簡単にあらすじを。
『吉野山』は、兄の頼朝に命を狙われ隠れている義経を追う、義経の愛人・静御前と、義経の家臣・佐藤忠信の主従関係にあたる2人の旅の模様を描いています。
実は、この忠信、源九郎狐というキツネが化けている姿!しかも、静御前が持っている“初音の鼓”に使われている皮が、何とこの源九郎狐の親狐の皮で、静御前がポンっと鼓を鳴らすたびに亡くなった親狐を慕って現れる、、、というファンタジーな世界観と、男女の道行ならではのどこか色っぽい雰囲気が魅力の作品です。

『川連法眼館』では、タイトルの川連法眼館に匿われている家臣・義経を訪ねて(人間の)忠信が訪ねてきたところに、静御前と(狐の)忠信が現れます。実際に静御前と旅をしていたのは(狐の)忠信・源九郎狐。
親を慕う子狐は(人間)忠信に姿を変えてまで、静御前と鼓を守ってきていたのでした。人間の義経が血の繋がった実兄から命を狙われている一方で、動物の子狐の肉親への情愛や慈愛を描いた、ほろっと涙する感動作です。


舞踊「吉野山」とお芝居「川連法眼館」通して感じたのが、タイトルにもある「かわいい、凛々しい、艶っぽい」です。

まず米吉さんの静御前。今回Bプロを選んだのも米吉さんの静御前を見たいがためだったのでとても楽しみにしていました。想像通り、いや想像していた以上に可愛い!とにかく可憐!花道に登場された瞬間思わず「かわいい・・・・」と心の声が漏れてしまいました。幸か不幸かマスクをしていてよかった(笑)でも可愛いだけではなく忠信へ送る目線は凛々しさがあり、吉野山では男女の道行ならではのどこか妖しげな雰囲気もあり歌舞伎らしい艶っぽさも感じました。
一途で可憐なだけじゃない、芯のある女性、米吉さんの静御前を是非ともまた見られたら!と思いました。

続いて橋之助さんの忠信、源九郎狐。人間忠信と狐忠信の演じ分けが凄いなあと思いました。人間忠信は川連法眼館の冒頭部分しか出てきませんが、家臣・義経への忠誠心や実直な性格がにじみ出ていると思えば、源九郎狐からは可愛らしさと親狐を慕う健気さを感じて、短時間でお役のキャラクターを切り替えるプロ魂を感じました。また、何といっても源九郎狐のアグレッシブな演技!もはやアスリート・・・。ヒーローショーを楽しむ子供のように、次はどこから出てくるんだろう~!とわくわくしていました(笑)

そして壱太郎さんの義経。動きが少ないお役でしたが、座っているだけでも品格と凛とした佇まい、そして実兄に命を狙われている人生への悲哀も感じられました。私個人としては、壱太郎さんの立役(たちやく・男性キャラクターの役)を拝見する機会がなかなかなかったのでとても新鮮でした。


今回の三月花形歌舞伎。Aプロでは静御前が壱太郎さん、佐藤忠信実は源九郎狐を右近さんのお二方が演じ、義経はそれぞれ偶数日奇数日で配役が変わる全4パターンでした。
私は泣く泣くBプロのみの鑑賞となりましたが、出来ることなら全4パターンを鑑賞し、同じキャラクター・セリフでも、役者さんによって変わる作品の違いも楽しみたかったと、後ろ髪を引かれる思いで南座を後にしました。


同世代の役者さんが奮闘する姿に感動し刺激を受け、さらに歌舞伎の魅力にはまったことを実感しています。
今後も今回のような若手役者さんを中心とした公演は続けてほしいですし、いろんな役者さんで、また南座だけではなく、全国でも上演して頂きたいと心から願います。


最後に。今回の公演も新型コロナ対策として、歌舞伎座やほかの劇場同様、客席を減らしての開催となりました。使用できない客席には座れないようにタスキがかけらてているのですが、南座ではそこに桜の花が。
南座スタッフさんの発案だそうですが、役者さん達だけではなく、スタッフさんも総出で、まさに劇場が一体となり盛り上げようとするエネルギーを感じました。
是非ともまた南座へ伺わせていただきたいです☆

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長くなりましたが最後までご覧いただきありがとうございました。

渡邉唯(ボイスワークス所属フリーアナウンサー)
Instagram:
https://www.instagram.com/watanabeyui.0108

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