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LEDは発電する!エネルギー変換教材

この記事は,理科教育 Advent Calender 2021の22日目の記事です。
私が専門とする研究内容は「教育評価・学習評価」なのですが,今回は教材のことを記事にしてみようと思います。何か科学的に間違いがあった場合,教えて頂けるとうれしいです…(すぐに修正します)。
それでは,発光ダイオード(LED)を用いた教材の話にお付き合いください。
理科や科学を専門とする方には当たり前なことかもしれませんが,実は電球などで使われているLEDは発電ができます
いつものように電気を流せば発光します。(なかなかしてみようとは思わないですが)逆に光をあてると発電します。
LEDは光を電気に変えます!

LEDはどうして発電するの?

うまく説明できる自信がないので,ざっくりと。
原理としては太陽電池と一緒です。
まずは,発光する仕組みを説明します。下の図です。
LEDはpn接合をもつ半導体素子でできています(もう難しい…)。
電気を流すとn型半導体の中の電子がp型半導体に移動します(図でいうと右から左へ移動)。その時に,エネルギーの高い伝導帯からエネルギーの低い価電子帯に落ちるため,エネルギーギャップ相当の光エネルギーが放出されます。これが発光の仕組みです。
この可逆反応として,pn接合に光をあてると,光エネルギーが電子を価電子帯から伝導帯へたたき上げるので,電子はn型に正孔はp型に引き寄せられ,電位差が生じて発電されます。

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LEDで教材開発!

LEDは電気を流すと発光して(電気を光に変換して),光があたると発電する(光を電気に変換する)ように,光と電気の間でのエネルギー相互変換ができます。これを利用して,開発した教材の写真です。

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使用した材料です。左から,LED(赤色)2つ,コンデンサー(220μF,16V),抵抗(2kΩ,1/6W),ビニルチューブ,トアロンチューブ,アルミニウムテープ,OHPシートです。全部で70円程度です。

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内部構造図です。

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回路図です。スイッチを開いた状態でLEDに光をあててコンデンサーに電気を蓄えます。スイッチを閉じるとコンデンサーに蓄えた電気でLEDが点灯します。2つのLEDで充電をして,1つのLEDで放電をします。1つの教材で光と電気の間の相互変換ができます。

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使い方です。シンプルです。
①LEDに光をあてて,充電をします。

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②スイッチを押して,放電をします。

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LEDを点灯させるために必要な電圧(約2V)をコンデンサーに充電するための時間ですが,光源が赤色LEDだと40秒程度,白熱電球(100V-90W)だと3分程度,太陽光だと1分程度,蛍光灯では7~8分,プロジェクターの光では5秒程度です。(※使用するLEDの種類にもよります。今回はOSHR5111Aという型番のLEDを使用しています。)
何度も光→電気,電気→光のエネルギー相互変換を体験することができます。また,児童・生徒にとって容易に製作が可能です。自分で教材を製作→体験ができるため,教材がブラックボックス化せず,「エネルギーは変換できるんだな!」ということを実感できると思います。(コンデンサーは小学校第6学年の理科で扱われていますので,それ以降の児童・生徒の使用を想定しています。)

教材の発展的な活用を考える!

あるLEDにそのLEDの発光する色と同じ色の光,またはその光より短い波長の光をあてると,光をあてられたLEDは発電します(自分よりもエネルギーの高い光があたると発電するということです)。
この性質を用いて教材を使用すると,光の色(波長)と光がもつエネルギーの関係を調べる実験ができます。
下の表は,発電側のLEDと光源側のLEDの組合せで,発電可能か不可かを整理したものです。

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○は発電可能,×は発電不可です。
赤色LEDは,赤,緑,青,紫外線の光をあてられたときに発電します。赤色よりも波長の長い(エネルギーが大きい)光だと発電ができます。
一方,青色LEDは,緑,赤の光をあてても発電しません。同じ波長の青の光をあてるか,青よりも波長の長い紫外線をあてないと発電ができません。
教材に用いるLEDの色や光源で用いるLEDの色を変えることによって,光の色(波長)と光のもつエネルギーの関係を考えさせることができます。光は赤よりも緑や青,紫外線の方がエネルギーは高いんだなと実感ができます。(なるほど,紫外線で日焼けするもんな・・・みたいに)

おわりに

ここまでの内容は
渡辺理文・鎌田正裕(2011)「光と電気の間でのエネルギー変換を実感させるための教材」『物理教育』第59巻,第1号,9-13.
の内容の紹介になっています。
この論文は,私が初めて書いた査読論文です。当時まだ私は学生で,掲載が決まったときに飛び上がって喜びました。
10年前の論文ですので,10th Anniversaryということで紹介させてもらいました。

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