無題137

読書感想文~~スラムダンク~~

自炊を始めたおかげで、今までは本棚の容量を気にして買えなかった漫画も、気兼ねなく購入できるようになった。とりあえず、昔読みたかったけど読んでなかった名作漫画、というのを読み漁りたい。というわけで、まずはスラムダンクから読んでみることにした。


・意外と面白い、部活漫画の金字塔!

正直、部活漫画というのを舐めていた。主人公の桜木花道は、最初こそモテるためにバスケをやり始めるのだが、途中からバスケにハマっていく。しょうもない美少女キャラとか出てこないし、出てくる女キャラも最低限で、男同士の熱い友情やライバル関係がこれでもかと描かれる。出てくるキャラクターには嫌な奴もいるが、心底嫌いになるようなキャラは一人もいない。みんなバスケに真剣だからだ。また、監督のオッサンも、一癖あるやつばかりなんだけど、みんな選手のことをちゃんと考えている。最近話題のパワハラ体操コーチや、日大の監督なんかとは似ても似つかない。印象的なのは「嫌ならやめろ」みたいなことを誰も言わないことだ。バスケの練習はきついし、競争も激しい。そこで弱音を吐く選手もいるわけだが、そこで安易なことを言い放つ監督は出てこない。監督と言えば湘北の安西監督。主人公の監督だが、最初こそ影が薄いものの、やがて安西監督の下でチームがまとまってゆく。ぶっちゃけゴリ(赤木)が優秀すぎるので、ゴリありき、な気もしないではない。登場キャラでは仙道や魚住が好きだが、主人公チームでは三井が好きだったりする。人はみんな心の中に三井を抱えているのだ、ということにしといてくれ。こいつが不良仲間を引き連れて喧嘩しに来るシーンは不良漫画としても面白かった。バスケ漫画なのに、「不良との喧嘩」でほぼ二巻まるまるのページ数を割いている! こういう不良っていうのも、90年代くらいまでは本当にいたのだが、最近ではパンダより先に絶滅してしまった。今では漫画の中でネタにされるくらいの存在でしかない不良――それを実際に見てきたであろう作者の実地の見識が反映されている。こういう分かりやすい不良が消えた代わりに、最近ではイジメの陰湿化が起こっていたりするので、むしろ不良のように見えていた方が良かったのかもしれない。


・意外と負けたりする。挫折の美学

 スラムダンクのいいところは、けっこう主人公サイドが負けたりすることだ。最初の陵南との練習試合なんてその典型例だろう。だが、負けたからこそ、悔しい→次へ向けて練習を頑張る、という構図がちゃんと出来上がっている。このあたりのストーリーの作り方は、リアルと漫画をバランスよく配合してあって面白い。特にインターハイ最後の戦いでは思わず歓声を上げそうになったほど、「本当の試合を見ている」感があった。作者の経験と漫画技術が惜しみなく投入されていて、融合したからだろう。徐々にメンバーがそろっていくところは「七人の侍」みたいでもある。


・絵のリアルさと、余計な萌え要素のなさ

 絵もほどほどリアルだが、リアル過ぎない感じ。イケメンも出てくるが、イケメンでないやつも出てくる。最近はイケメン、美女しか描かない・描けない漫画が多いが、こういう普通の漫画、というのはもう出てこないだろう。最近は美少女化すること、だけがトレンドになってきているし。あるいは美少女の日常系漫画。もうこれね、なんでこんなに流行っているのか分からないね・・・とかいいつつ次は「よつばと!」を感想文する予定なので、楽しみにしといてね。

・欠点とか

 だが、読んでいて違和感があったのは、桜木の身体能力だろうか。バスケのしごき練習に難なくついていく。それまでやっていたのは不良の喧嘩だけなのに。バスケは初心者だが、身体能力はあり得ないほどのチート性能が付加されている。まあ、これくらいのチートがないと主人公は務まらないだろうから、仕方ないか。あと、作中の時間の経過がすごい緩慢で、31巻で4か月しかたってないというね・・・ちょっとスッキリしない終わりだったことが、それ以外は完璧な漫画だけに悔やまれる。

・総評

 読んでいて非常に面白かった。部活漫画でこれを超える作品はそうそうないだろう。むろん、現実の部活なんてこんな綺麗じゃない。しかし、あくまで漫画作品としてみた場合、すごく出来がいいし、最近の萌えばかりの漫画と比べるとよほどよくできている。名言も多いし。

 ただ、これ以降の部活漫画でやたらと部活・スポーツが美化されていったことは、逆にこの漫画が伝説となった弊害だろう。スポーツなんてこんないいものではないのは、日大タックルを一目見れば十分わかる。いや、スポーツなんて本当は金をかけて大層にやる必要なんてないのだ。逆に金をかけるから、このような理想からドンドン離れていって、商業的でドライなスポーツ事業になっていっているのだと思う。まあ、この辺はスラムダンクではなく、その後のスポーツ美化の弊害なので、また改めて別の記事にでもしようと思う。

 総評すると・・・中古で3分の一くらいの値段で買えたが、非常にいい買い物だった。自炊したおかげで、これからまた再読する楽しみもできたし、自炊と名作漫画の組み合わせは最高なので、ぜひ皆さんも試してみてください、以上!!

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