今こそ、全力で遊ぶのだ。
「今こそ、全力で遊ぶのだ。」
中吊り広告で見かけたキャッチコピー。
筋肉隆々のターザンの後ろ姿だけの、シンプルながらインパクトあるポスター。
地元では名の知れた公園の広告だ。
たまたま座った座席のちょうど目の前にあるポスターに、運命的なものを感じて
しまう。
退職を決意した今の自分を応援してくれている気がした。
就活も迷走期でも、遊び心を忘れたら、干からびてしまう。
時間は有限。
よし。
アソボー
とか思っていたら、降車駅をとっくに過ぎていた。
休日で行き先が違うのに、通勤の乗り換え駅に到着していた。
サラリーマンの習慣って怖い。
平日の朝、
ラッシュ時に乗り換えの駅で、能面みたいな顔したスーツの軍団が
改札に向かってゆっくりゆっくりうごめくのを見て、
ロボットみたい、といつも思ってた。
いつの間にか、自分もロボット化してたんだな。
目的地に向かった折り返し電車。
目の前にスーツを着た波平ヘアーのおじいちゃんが、ボロッボロのビジネスバックを台にして文庫本を読んでいる。
そのカバンときたらほんっとに年季入っていて、黒い革が茶色というよりウンコ色になってる。
こうやって何十年も毎日同じカバンで電車に揺られて、禿頭になるまで働いてきたんだな。
もしかしたら好きな仕事じゃなくて、時には行きたくなくて、出世争いに敗れて
辛い時代があって。子供の学費が嵩むからカバンも新調しないで、家族のために
折り合ってきたのかもしれない。
知らんけど。
でもさ。いずれにしても。
サラリーマンって偉いなぁ
みんな頑張ってんなぁ
変に遠回りをして到着したのは娘の中学の合唱祭。
学校でなく、ちゃんと音楽ホールで行われるのだ。
入れ替わり立ち替わり舞台で歌う子供達。
ヘッタクソだなぁ、と心では思うのに何故だか号泣する私。涙が止まらない。
情緒大丈夫そ?
音楽って偉大だ。来て良かった。
音楽ホールに併設の広大な自然公園に久しぶりに寄ってみる。
森の匂いがする。なんて良い匂いだろう。
どんぐりを拾いつつ園内を進むと、見たことのないローラー滑り台ができていた。
遊び心を取り戻したい四十の私はひとり、ヒールのブーツで走り出す。
楽しそう。すっごく楽しそう。
心が躍っていた。
階段を駆け上がったら、
「6〜12才までのお子様の遊具です」
だとよ。さいですか。
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