見出し画像

あなたの知らないハイジ

 こんにちわ。皆さんはアルプスの少女ハイジをご存知でしょうか?全く知らない、という人もそうそういないのではと思います。若かりし頃の宮崎駿氏、高畑勲氏が手がけ、ファミリーアニメの金字塔とも言うべき日本が誇る名作です。相当昔の作品ですが、その輝きは褪せる事なく今も語り継がれております。

 冒頭の絵は私がウロ覚えで描いたハイジ像です。「似てねー!」「こんなんハイジじゃない!」などの糾弾の声が聞こえる様です。しかし後ほど皆さんも、私がウロ覚えでしかもペンタブはおろかマウスすら使わず、タッチパッドだけで描いたこの落書きが、結構マシなものである事がお分かりになるでしょう。

 ハイジのアニメはスイスの原作をもとに日本で作られましたが、ヨーロッパにも輸入され当時大いに人気を博したようです。日本人同様いまだに知ってる方々も多いようですが、実はこれが日本で作られたと言う事を知る人は少ないそうです。

 ドラマ完成度の高さといい、愛らしい絵柄といい、これがまさか敗戦間もない極東の島国で作られた、と当時は思いもしなかった、というのが実情でしょう。ドイツやイタリアで人気を博したアニメ版ハイジですが、何故だかお膝元のスイスでは放映されなかったようです。

 そのスイスにはハイジのモデルとなった少女が過ごしたと言う、ハイジ村なるものがあります。私は前にオランダで暮らしていた事があり、スイスも近いのでこのハイジ村に行ってみた事があります。

 何しろ本場ですから、とにかく風光明美です。鉄道の窓から見える起伏に富んだ山々は緑が深く、絵葉書がずっと動いているような所ではありました。綺麗な山=スイスみたいなイメージが自分に如何に深く刷り込まれているか、良くわかる経験でした。

画像1

 さて件のハイジ村に着くと早速ハイジが暮らしたという山小屋を模した建屋を尋ねました。ここまではいい気分でハイジゆかりの地を満喫しようと意気揚々でしたが、実際のその建屋は本格的なログハウスで、綺麗に手入れされた造り物臭が漂っており、なんだかイメージと少し違うなあ、と感じたのが衝撃の時間の始まりでした。

画像2

 中に入って見ると、なんて言うんでしょうか、独特のシリアルキラー感というか狂気が漂っています。居間のテーブルにおそらくハイジとペーターでしょうか、妙な人形が二体置いてあり、静寂の日常に突如訪れる狂気の瞬間、みたいな緊張感があります。私の表情も幾らか陰鬱になっている事がお分かりいただけるかと思います。

画像3

 なんかこれは期待していたのと違う、と思いながらも帰る訳にはいきませんから続きを見に家の中を散策しましたが、どの部屋もだいたい似たような紛い物と静寂に満ちた狂気漂う空間でした。屋根裏におそらくはクララ愛用想定の車椅子があったので座ってみたのは他にやる事がなかったからです。

画像4

 なんだ、これで終わりかと外へ出ると、もう一棟あり、こっちはハイジ資料館的な建物でした。ここには世界中で翻訳され出版されたハイジ本の数々が展示してあり、ちょっとした見ものだったのですが、それを一覧したときの私の心にまず浮かんだのは「こいつはクレージーだぜ、、、」という感覚でした。

画像5

 今回、ご紹介するものの中ではこれが比較的マシなやつでした。ハイジもペーターもどことなく人間離れしていますが、妖精さん的な可愛らしさがある、とも言えます。しかしちょっとペーターの目つきに何かただならぬものを感じます。

画像6

 次はこちら、最大のポイントはやはりアルムおんじでしょう。この脂ぎった感じはどうでしょうか?確か話の中では戦争で人を殺した噂がある、という事でしたが、これからまだまだ殺しそうな感じです。しかし麓村の嫌われ者だった、と言う設定に対してはなんだか説得力あるような気もします。

画像7

 これもなかなかの名品です。こんなにも妙に大人びたハイジとペーターは完全に想定外ですよね。禁断の愛、とか青春の光と影、とかそんな言葉が頭に浮かびます。ハイジの目線が男を惑わせる魔性のファムファタル的なイメージを醸し出しています。

画像8

 これはどうでしょうか?私はすごく狂気を感じます。さきほどのハイジハウスといい、ほんのり狂気風味を利かせるのが当たり前なのでしょうか?この肖像はおそらくクララなのでしょう。絵なので幸いにも音は聞こえませんが、もしこのクララが発している言葉を聞いたら、きっと呪われそうな気がします。

画像9

 これはいくらなんでもヒドイ、アニメ版ハイジに慣れ親しんだ私たちの中ではそう思う方が多いのではないでしょうか?この絵とあの感動の物語がどうしても結びつきませんが、そう思うのは日本人だけで、他の国の方々としてはまあ普通なのかもしれません。後ろのほうにいるアルムおんじが鬼にしか見えないのは私だけでしょうか?

画像10

 もうそろそろ私たちのハートはズタズタです。これで最後にしておきましょう。日本人は欧米の方よりも若くみられる事が多いのは事実ですが、それにしてもこのハイジはなんだかもう、かなり色々な事を分かってしまっている感じがします。私はこんなの見なければよかった、と思いましたが既に後の祭り、皆さんも同様です。

 「俺のハイジを返せええ!」一通り見終わった後、私は胸中でこう叫んでいました。しかし繰り返しますがアニメで育った我々と違い、大多数の外国の方としてはこれが普通なのかもしれません。ヨハンナ・スピリ原作の二次創作という点ではこれらファンキーなイラスト群もアニメ版も同等な立ち位置にあります。これがダイバーシティというやつだ、自分が信じ込んでいるものだけを正当化してはいけない、と胸に刻み込むいい勉強になりました。

 ただ、アニメ版で育った皆さんにとっては、冒頭に挙げた私の落書きがそんなに悪くないと言う事だけは、お分かりいただけたのではないかと思います。

 長々とくだらない事を書き連ねてしまいましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?