『ワールドトリガー』19巻感想

はじめに

こんにちは。こんばんは。綿毛です。

感想データが諸事情で消えてしまって暫く悲しみに打ちひしがれておりましたが、何とか書き上げられました。遅くなり申し訳ございません。

さて今回は、『ワールドトリガー』19巻お好み焼き屋回の感想です。

ここから先はネタバレ満載になりますので、未読の方はご注意下さい。

では参ります。

旧ボーダー

初っ端から重要な情報がてんこ盛りの19巻。
林藤支部長の姪だというゆりさんの口から、もともとボーダーの本部は玉狛にあったという事実と、「旧ボーダー」の存在が初めて明らかにされました。

19人の旧ボーダーのメンバーが映った集合写真には、迅さんをはじめ見知った顔がチラホラといますね。その和気藹々とした彼らの中には、満面の笑顔を浮かべた切り傷のない城戸さんが…………

……そっかぁ、6年前まではこんな風に明るく笑える人だったんだ……そうだよね、大切な仲間が大勢亡くなってしまったら性格激変してても不思議じゃないよね……はぁぁぁぁーーーーキッッッッッッッッッツ!!!!!!!!!!!!!!

読む前までは「新キャラの登場だ~~わーい(*'▽')」ぐらいにしか思っていなかった私は無事死亡しました。こ、こんな重い話が急に飛び出してくるなんてキイテナイヨ……?

ゆりさん曰く、19人中10人が死亡し、何人かは黒トリガーになったとのこと。
でも今のボーダーが所有している黒トリガーって、風刃と天羽君の黒トリガー(+空閑君の黒トリガー)だけだったような…?
そうなると「何人か」という表現とミスマッチしているように感じますね。…もしかして、仲間の黒トリガーの何本かは回収出来ていなかったりするのかなぁ。

「……問題は 城戸さんより正しい方法を考え付けなかった私たちのほうにあるのよね……」

この台詞は随分と意味深ですね。ゆりさんの真意が読み取れず、「……?」を浮かべる三雲君。

そこに突如、悲鳴を上げた小南ちゃんがやってきました笑

相変わらずコミカルな表情と動きが可愛いですね、小南ちゃん。でも、当時の写真を見てもゆりさんよりかなりサッパリしたというか湿っぽくない反応だったのは、彼女の性格的にちょっと意外だったな。過去は過去として清算しているのか、当時の詳しい事情を知らない三雲君に湿っぽい姿を見せたくなくてわざと虚勢を張ったのか、はたまた彼女には真実とは異なる情報が知らされているとか……気になるところです。

『お好み焼かげうら』

影浦君の実家のお好み焼き屋さん!
わあ〜お好み焼き美味しそう~~食べたい〜。ほふほふしながらお好み焼きを頬張る空閑君はとても健康に良いですね……幸せそうで何よりです……

メカか昆虫らしい空閑君と東さん

「普通のやつは攻撃してくる時 攻撃より先に「攻撃すんぞ」って感情が刺さってくる 俺のクソ副作用のせいでな」
「けどこいつにはそれが無え メカか昆虫かってくらい攻撃の感情が読めねぇ」
「こんなに感情を消して攻撃してくんのは こいつ以外じゃ東のおっさんくれーのもんだ」

………………。

……待て、待ってくれ!?
まず、無心の剣は何となく分かる。紛争地帯を練り歩いてきた近界民の空閑君がそうなるのも分からんでもない。

だけど、東春秋はどうして出来るんですか?????????

確かにBBFにはそのヒントになるようなことは書かれていましたよ↓

Q:東さんは一体どこでスナイパーとしての技術・心構えを身につけたのですか?
A:東さんは体験から学ぶのが好きなので、ほとんどは訓練やランク戦など、実践の失敗の中から学ぶことになりました。

……いやいやいやいや。貴方、一応地球出身のただの()大学院生ですよね???そりゃボーダー最初の狙撃手として積み上げてきた数年間の経験値は大変密度の濃いものだとは認識しています。されど、他者を撃つという日本では非日常的な行為に対して、たった数年で無心の境地までいける?いけなくない??
…え、もしかして流行りの異世界転生経験者とかなの???人生△周目だったりする???

とりあえず1番言いたいのは、巻を追うごとに「お前は一体、何者なんだ…?」感が増していく東春秋がガチで凄いし大好きだってことです。

子供と大人の境界線

好きな人雨取ちゃんのためにわざと試合に負けようとしている絵馬君。

「……だって べつに影浦隊うち 遠征狙ってるわけじゃないじゃん」
「だったら真剣に遠征狙ってる人に 譲ったほうがいいんじゃないの?」

絵馬君は少し大人染みたというかクールっぽい側面が前に出ているキャラではありますが、こういったことを臆面も無く言える部分は中学生男子っぽいな~って思います。
絵馬君って、緑川君と同じ14歳設定なんですよね。この2人の”自分の言動が周囲にどう捉えられているのか、どんな影響を与えているのか”は思考の外にありそうなところに、リアルな14歳の少年感を感じて私は好きです。

でも、わざと負けようとしている絵馬君に対して、不誠実だと怒ったり否定しようとする人がいないって、よく考えたら割と凄いことですよね。
ボーダー隊員は街を守る防衛任務の傍ら、ランク戦という順位が付く勝負事に身を置いているわけなので、絵馬君のある意味スポーツマンシップに背いたような考え方に嫌悪感を見せる人が1人ぐらいいても不思議ではなかった場面だったとも思うんです。けど実際は、真っ向から強く否定する人は誰もいなかった。
やっぱりB級以上のボーダー隊員に上がれる人は、あくまでも理性的に物事を考える思考の持ち主が多いんだなー。

こういう部分も含めて、ワールドトリガーという作品は、年齢による扱い方の線引きが意識的に描き分けされているように感じます。
迅さんや諏訪さんといった19歳以上は完全に大人として扱われている節があるし、絵馬君や三輪君といった17歳以下は逆に子供として扱われている印象を受ける。となると、18歳は子供と大人の境界線…過渡期や変容期に当たるのかなと。大人側に見える子もいれば、まだ子供側に見える子もいる。

今巻では18歳組が多く登場していたのでようやく気付いたんですが、この学年ってぶっちゃけトラブル多いですよね…?
荒船さんのポジション転向による村上君とのすれ違い、影浦隊の降格、そして鳩原さんの密航事件など。
子供から大人への移行を求められる不安定な時期故に、それだけメンタル面の振れも大きいタイミングだと考えると、これらのトラブルは非常に納得できる事柄なんですよね。彼らが18歳であるという設定に対しての説得力がきちんとあるというか、そこまで細かく考えてるの!?っていう葦原先生への驚きが凄い。

あ、メンタル面での悩みで関連した感想だと、お好み焼き屋のシーンで1箇所気になる描写がありましたね。自分のツイートから以下引用します。

これまでのエピソードを鑑みても、村上君はやっぱりわざと負けた経験ありそうなんだよなぁ……でもそれだと悲しいから出来ればただの妄想であってくれ……

合理性の男・荒船哲次

そしてここで突然、推し登場
(ジャケットにシャツに帽子…なんかよく分からん格好だな…)

「……なるほど 話は大体わかった けど 何も難しいことはないだろ」
「絵馬が個人で遠征メンバー目指して 玉狛のチビちゃんについて行けばいいだけの話だ」
「それならわざと負ける必要もないし 玉狛のチビちゃんを一人で行かせる必要もない」

はえーーーすげー簡潔で合理的な方法で最適解っぽいけど、普通に難易度高い提案で草。
荒船さんのこの言葉、絵馬君ならそれが出来る実力があると思っている前提で言ってるのか、単に問題解決の手段を提示しただけなのか、どっちなんですかね。前者と後者では大分意味合いが変わってくる気がする。

と言うか、村上君との一件で薄々勘付いてはいましたが、荒船さんって割とドライというか他人の感情に関心が無いというか、基本的には己の合理を主軸に行動するタイプなんだろうなぁ。

来馬さんがわざわざ雨の中自転車を漕いで荒船さんの元へ事情を聞きに行った際も、来馬さんから「それを鋼にも言ってやってもらえないかな?」とお願いされたのに、荒船さんの最初の反応「……?」だったし笑
来馬さんにお願いされてやっと村上君を励ますっていう発想に至ったんだろうね、鈍すぎちゃう?

でも、だからこそSE持ちの影浦君や村上君は荒船さんと仲良しになれたのかな〜とも思ったり。荒船さんは合理優先で心の機微に疎い故に、周囲に対してフラットに対応する=特定の個人を特別扱いしないような人なのではないかな、と。SEのせいで良い意味でも悪い意味でも人とは異なった扱いを受けてきた”特別な”2人にとって、荒船さんみたいな人は一緒にいて気楽だと思うんですよね。

ま、まぁ、逆に言うと…みたいな部分も、ありますけど…(BBFに掲載されている3人のリレーションの矢印…)

「チビちゃんが心配なら 自分で行って自分で守れ」

荒船さんについてワーワー言いましたが、こういうことをサラッと言えちゃうかっけー男でもあるんですよね彼……好きだ……

「チカ子は人撃てるだろ」

キターーー!!!
この当真君の一言によって、雨取ちゃん人撃てない問題の解決が今後前向きになっていきそうですね。

確かに、当真君の言葉をそのまま借りるなら雨取ちゃんはバトル向きの性格に分類されるかも。ただ、雨取ちゃんが人を撃てないことに対して、空閑君がそれを嘘であると感じたような描写はこれまで無かったように私は記憶しているんですよね。
となると、雨取ちゃんは自分自身を欺けてしまうぐらいには”人を撃てない”と、強く思い込んでしまっているんでしょうか?
うーん、実際の戦闘シーンで人を撃てるようになるにはかなりの荒療治が必要になりそうだな…

遠征の前にしっかり追い込んで人を撃てるようにしといたほうがいいと思うぜ」と言える当真君は、遠征経験者だから遠征時の危険を身をもって体感したことがあるんでしょうね。狙撃手だと斥候を担う場合もあるでしょうし…死亡する危険性は全然あるよなぁ…

ROUND7

遂にやってきたB級ランク戦ROUND7。
実況は、A級8位片桐隊のオペレーター・結束夏凛ちゃん。元東隊なんですね!あと数字キャラという属性、把握しました。

「スカウト旅」という興味深い単語も登場。
へぇ~現役ボーダー隊員がわざわざ赴くんですね。でもその間、学校とかどうしてるんだろう?休学してるの?

解説は犬飼君と嵐山さん。何だか不思議な組み合わせに感じます。

ヒュースの電撃加入というビッグニュースを背負って現れた玉狛第2に対し、絵馬君の「相手が何人だろうと 勝つのは影浦隊うち」っていう強気発言、良いですねー。
この台詞、お好み焼き屋での空閑君の「どっちにしろ 勝つのは玉狛第二うち」と合わせてるんだろうな~。

今回のマップは市街地D。
犬飼君の「人によってはクソMAP認定もありなステージです」という言葉で瞬時に思い出される、諏訪さん…笑

ある程度予想は出来ていましたが、やはり今回の玉狛第2はワイヤー陣の採用を見送りましたね。

「まず第一に今回は過去2戦の勝ちパターン……「ワイヤー陣」は狙わない」
「理由は大きく分けて3つ」
「まずMAPが狭くて建物が大きいから ワイヤー陣を効果的に張れる場所が少ないこと」
「次に敵部隊にそれぞれ狙撃手がいて ワイヤー地帯の外から反撃を受ける可能性が高いこと」
「そして最後に ワイヤー陣を敷いたとしても 今回の相手は乗ってこないだろうってことだ」

めっちゃくちゃ地味なんですけど、三雲君の説明の仕方がシンプルに上手いな笑
人前であがったりすることも無さそうだし、絶対三雲君はプレゼンとか得意だと思う。

夜の戦い

そして始まった試合は、今までとは打って変わって「夜」という環境設定がされていました。

「暗い所と明るい所を出入りするたびに視覚支援を切り替える必要があるので オペレーターの負担は少し増えるかもしれませんね」

最初の嵐山さんの解説、めちゃくちゃ当たってた笑
漫画的に言うなら伏線が高速回収されていましたね。

太一君の「スイッチョフ」作戦は、影浦隊にとっては有利にも不利にも働いたという結果に。
来馬・村上VS影浦・北添では、影浦君が大ダメージを食らう反面、絵馬君が三雲君に大ダメージを与えるきっかけにもなりました。

影浦隊といえば、鈴鳴第一の新戦法に押し負けそうになった際に影浦君が退がる判断を下して店内へと場所を移したことに、犬飼君が「影浦隊にしてはめずらしく 頭使った戦い方だね」ってナチュラルにディスってたのが面白かったです。

まぁでも実際、普段は戦術や策略や知謀なんてもの、影浦君はやってないんでしょうね。ごり押しでも大抵の相手には勝てる実力があるから。
犬飼君はどちらかというと頭使うタイプの人間だろうから、余計に気に掛かったのかな。

照明の切り替えで相手を翻弄するという太一君の作戦は、発想自体は良かったものの(「よそんとこのオペレーターに毒を盛る」発言はあったけど)、彼自身は無得点のまま制圧されてしまったのは少しドンマイでしたね。
(その後の空閑君とヒュースの「点を獲りに行くぞ」→「行くか」は、イケメンすぎた…!)

村上君の黒い弧月は、BBF内で触れられていたことをたまたま覚えていたので、出てきた時は「あっ!?BBFで読んだやつじゃん!!!」となって大変驚きました。

まだROUND7は始まったばかりですが、
今回は全体的に、ランク戦開始前に東隊が話していた「オペレーターの処理能力に圧力プレッシャーをかける」ことが肝となっていましたね。

東「人数が多い部隊チームと戦うときにすることは?」
小荒井「オペレーターの処理能力に圧力プレッシャーをかける」
奥寺「情報を増やして「忙しく」させて 相手の連携に混乱と隙を作ります」

実際に、4人チームの玉狛第2はオペレーターの負担がより大きいため、珍しく宇佐美ちゃんの警戒アラートミスによって奥寺君と三雲君が接敵してしまうという事態に陥りました。これはオペレーターの処理能力に圧力をかけて上手くいったパターンでしたね。

でも、すぐに三雲君が「大丈夫だ!」って力強く言ってたのが個人的には嬉しかった〜。三雲君は戦闘面でも少し頼りがいが出てきましたね。

それにしても、オペレーターに目をつけて相手の隙を作るという点が、バトル系全般ド素人の私からすれば目から鱗でした…!
戦闘員以外の存在って、つまり戦闘力がないわけなので戦況に大きく関わるような描写がないというか、あくまで外野のポジションっぽく見えるものだったんですが、ワールドトリガーではむしろオペレーターの優劣?が戦況を変える芽になっているのが面白い。

おわりに

ROUND7の最中で幕を閉じた19巻。個人的には、ボーダーの過去の一端も明かされたし推しも出てきたし戦闘シーンいっぱいで、めちゃくちゃ好きな巻になりました!

ところで、レイジさんの恋はいつか成就するのでしょうか?笑
ゆりさんは察しが良さそうな人だからレイジさんの想いには気付いていそうだけど、本人から直接アプローチが無い限りは特に何もしないって感じなのかな。

三雲君の謎の不安と、迅さんの「揺れるな」というアドバイスが何を意味しているのかも気になる…

20巻を読むのが楽しみです。

それでは今回はこの辺で。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

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