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【デュエマ】ルールの走り書1:オカルトアンダケインがループできなくなった原因は本当に「裁定変更」なのか?


1. はじめに


2020年の後半から主要パーツが殿堂入りする2021年7月1日まで猛威を振るったデッキ【オカルトアンダケイン】。

このデッキを今日ではほとんど見かけなくなったのは、主要パーツが制限されたのも原因の一つではあるが、「裁定変更」によって【オカルトアンダケイン】を凶悪たらしめた強力なループ(ロック)コンボができなくなったことも大きな原因だろう。

2. 【オカルトアンダケイン】のコンボ


コンボに使うのは以下の4枚。

卍誕した《零龍》
《フォール・クロウラー》
《アンダケイン》
《フォーエバー・オカルト》

初期盤面は以下。

バトルゾーン:《零龍》、《フォーエバー・オカルト》
墓地:《フォール・クロウラー》、《アンダケイン》

そしてコンボの動きはこうだ。

  1. 《フォーエバー・オカルト》を対象に、墓地の《アンダケイン》を1コストでフシギバース。《フォーエバー・オカルト》がマナに、《アンダケイン》がバトルゾーンに。

  2. 《アンダケイン》の効果で墓地の《フォール・クロウラー》をバトルゾーンに。

  3. 《フォール・クロウラー》の効果でマナの《フォーエバー・オカルト》を回収。相手もマナを1枚回収。

  4. 回収した《フォーエバー・オカルト》を召喚。この時コストを支払うかわりに、バトルゾーンにある《零龍》、《フォール・クロウラー》、《アンダケイン》を破壊してタダで召喚する。

  5. 《零龍》は自身の効果でバトルゾーンを離れず、《フォール・クロウラー》、《アンダケイン》は墓地に。

  6. これで初期盤面に戻るため、闇の1マナごとに相手のマナゾーンから1枚を手札に戻せる。


なんとも無駄のなく美しいコンボか。カード枚数にも無駄がなく、コストも最小限。
しかも《フォーエバー・オカルト》が都合よく「8コスト」で「召喚」によって出るため、《ラビリピト》がバトルゾーンにあれば相手の手札に戻ったマナを即座に墓地に送れる。


3. 「裁定変更」


とまあこんな凶悪なコンボであるが、《アンダケイン》は2021年7月1日に殿堂入りし1枚しか使えなくなり、更に追い打ちをかけるように2021年10月22日、「そもそもこのループできませんよ」とループパーツを名指しで裁定が発表された。

Q《煉獄の悪魔龍 フォーエバー・オカルト》の「コストを支払うかわりに~」の能力で、代替コストとして≪零龍≫のような「バトルゾーンを離れない」能力を持つクリーチャーを破壊できますか?

Aいいえ、破壊できません。「破壊されない」や「離れない」能力を持つクリーチャーを破壊して、かわりに破壊する置換効果を使用することはできません。

https://dm.takaratomy.co.jp/rule/qa/40503/

これだとコンボの4.が実行できない…。


で、今回話題にしたいのはこの裁定である。
より具体的には、この裁定が発表されたことを「裁定変更」と呼ぶことについて、である。


4. 「裁定変更」と呼ばれる理由


「いやいや、元々この動きができてたのにできなくなったんだから『裁定変更』以外に呼びようがなくないか?」という意見は当然あるだろう。

より裁定に詳しい方なら、「類似例である《超越の使い 蒼転》の挙動がほぼ同時期に、元々『できる』裁定だったところ『できない』裁定に変わったが、これと同じだから明らかに『裁定変更』である」と言うかもしれない。

ちなみに2021年9月24日(上の裁定が出る1ヶ月前)に出た《超越の使い 蒼転》の裁定がこれ。

Q《超越の使い 蒼転》のP能力の「破壊されない」を使われた状態のクリーチャーを置換効果で「かわりに破壊する」ことはできますか?

Aいいえ、できません。「破壊されない」や「離れない」効果を与えられているクリーチャーを破壊して「シールド・セイバー」のようなかわりに破壊する置換効果を使用することはできません。

https://dm.takaratomy.co.jp/rule/qa/40294/

2021年9月24日以前はこちら。

Q《超越の使い 蒼転》のP能力の「破壊されない」を使われた状態のクリーチャーを置換効果で「かわりに破壊する」ことになった場合どうなりますか?

A「破壊されない」は「破壊されるかわりにとどまる」と違い、そのクリーチャーに関する事実であるので、どのような置換効果によっても破壊されることはありません。ですので、たとえばシールド・セイバー(自分のシールドがブレイクされる時、かわりにこのクリーチャーを破壊してもよい。)を持つクリーチャーにこの能力を適用した場合、好きなだけシールドを守ることが可能です。

https://web.archive.org/web/20200921073400/https://dm.takaratomy.co.jp/rule/qa/31655/


なるほど、これだけ見れば紛うことなき「裁定変更」である。

しかしそもそもこの裁定の論拠はなんなのだろう?


5. 裁定の論拠


無論、デュエルマスターズには個々の事例を判断するための大元となる『総合ルール』というものがあり、これが論拠である。

ではこれのどの項目が今回議論に挙げている裁定の論拠になっているのか?

ここで一度、議論の対象にしている内容を明確にしよう。
今回重要な部分は、既に引用の際に太字で強調してきた部分だ。つまり

「AするかわりにBを破壊する(またはBを破壊して〇〇する)」という効果があった場合、Bの対象を「破壊されない・離れないクリーチャー」にして実行することはできない

という内容である。

ではこの内容の論拠になっている部分を最新の総合ルールから探してみよう。ちなみにこの総合ルールは、2023年8月10日版のVer.1.37である。
「置換」などで調べてみると以下の文が見つかる。

609.4. イベントが置換された場合、それは決して起こったことにはなりません。置換されたイベントの代わりに変更後のイベントが発生し、それによる誘発型能力があれば誘発します。変更された後のイベントが実行できない場合、置換する事はできません。

なるほどこれっぽい。確認のため、「よくある質問」のサイトで「609.4.」と入力して、このルールの具体例を見てみよう。

Q《「陰陽」の鬼 ヨミノ晴明》が破壊される時、自分の山札が4枚でした。この時、「このクリーチャーが破壊される時」の能力はどうなりますか?

A能力は使えず、《「陰陽」の鬼 ヨミノ晴明》は破壊されます。この能力は置換能力ですので、「かわりに」の後に書かれている「自分の山札の上から5枚を墓地に置く」が実行できない場合、使うことができません。
(総合ルール 609.4.)

https://dm.takaratomy.co.jp/rule/qa/33594/

この裁定の場合、「かわりに」の後に書かれている文章が「クリーチャーの破壊」ではなく「自分の山札の上から5枚を墓地に置く」であるが、つまるところどちらもAするかわりにBする』とあった時、Bができないなら実行しちゃダメだよ」=「変更された後のイベントが実行できない場合、置換する事はできません」という内容だ。

つまりこれが論拠となっていると言って良いだろう。


6.この裁定って「いつから」?


人によってはここで更にこんな疑問が湧くかもしれない。

「あれ?元々『できる』はずだった裁定が『できない』に変わったって話だったけど、ということはこの総合ルール609.4.って途中から追加か変更されたの?」
と。

では実際いつからこのルールが存在するのか確認してみよう。便利なことに、2019年03月15日以降の総合ルールのpdfのリンクは全て生きており、それらは「デュエル・マスターズ Wiki」にまとめられている。


が、遡れることなら遡れるだけ遡りたい。
実は2018年8月3日に公開されたクリエイターズ・レター Vol.25の中に、2018年6月11日版の総合ルールのリンクがありそれがまだ生きている。これはオカルトアンダケインが活躍していた2020年の後半から2021年7月1日までの間より明らかに前である。まずこれを見てみよう。

総合ルールのリンク↓
https://dm.takaratomy.co.jp/img/c_letter/vol25/dm_rule_20180611.pdf


ここにはこう書いてある。

609.4. イベントが置換された場合、それは決して起こったことにはなりません。置換されたイベントの代わりに変更後のイベントが発生し、それによる誘発型能力があれば誘発します。変更された後のイベントが実行できない場合、置換する事はできません。

…あれ?2023年8月10日版のVer.1.37と全く同じ文言だ。

そして《超越の使い 蒼転》の裁定が出る直前の2021年9月7日版や、まさに裁定が出た当日の2021年9月24日版の文言も変わりがなく、他の版でもこの内容は一度も変わっていない。


7. 論拠となるルールは「変わってない」


とまあ、回りくどく確認してきたが、ようやく結論だ。その前に状況を整理しよう。

1. ある事象について、もともと「できる」という裁定が出ていたのに、最新の裁定で「できない」という裁定になった。
2. そしてその最新の裁定は最新の総合ルールに基づいている。
3. しかしそのルールは「できる」と言われていた頃よりも前から変わってなかった。

これは一体どういうことか。言ってしまうと「公式も裁定もプレイヤーも全員ずっとルールに反したままデュエマをプレイしていた」ということなのだ。つまりある時期のデュエマは全員間違っていた。

で、その間違っていた状態を元に戻したのが【オカルトアンダケイン】の新しい裁定なのである。

なので正しい認識はこうだ。

1. ある事象について、本来「できない」はずなのに「できる」という裁定が出ていた。
2. しかし新しく出た裁定はルールを正しく反映して「できない」という裁定になった。
3. ルールは前から変わっておらず、裁定の方が正しく修正された。

しかも、実は前の方で「現在のルールを反映した裁定の具体例」として例に出した《「陰陽」の鬼 ヨミノ晴明》の裁定は2020年6月26日に出ているもので、《超越の使い 蒼転》の新裁定が出る2021年9月24日や、当の《フォーエバー・オカルト》の裁定が出る2021年10月22日よりも前のものだったりする。
つまりより正確には「公式も裁定もプレイヤーも全員ずっとルールに反しており、裁定に至っては正しい裁定と間違った裁定が同時に出ている時期が存在した」と言えるのだ。


ここまで理解した上で元々の題に戻りたい。

オカルトアンダケインがループできなくなった原因は本当に「裁定変更」なのか?

「ある事象について、もともと『できる』という裁定が出ていたのに、最新の裁定で『できない』ということになった」という認識ならば「裁定変更」と言ってもよいだろう。しかし実際は「本来『できない』はずなのに『できる』という裁定が出ていて、それが正しく修正された」のだ。

もちろんどちらも『変更』ではあるが、これらを同じと見做すことは無理がある。なのでこれは「裁定変更」ではなく、「裁定修正」くらいに呼ぶべきなのではないか…というのが今回の話である。

いかがだろう?

8. 余談:なんでこんなことになってんの?


とまあ、話したいことは話尽くしたのだが、「なんでこんなめんどくせえことになってんだよ!!」となる人もいるだろう。

色々原因はある気がするが、原因の1つに「よくある質問が全然厳密じゃないから」というのがある気がしている。

「よくある質問」の新しい方から適当に裁定を拾って見てみよう。

Q相手の《奇石 ミクセル / ジャミング・チャフ》がバトルゾーンにいて、自分のマナゾーンにカードが6枚ある状況です。
相手のターン中、自分は《灰燼と天門の儀式》を唱えて、墓地から《聖魔連結王 ドルファディロム》を出したのですが、この《聖魔連結王 ドルファディロム》は「EXライフ」でシールド化する前に、相手の≪奇石 ミクセル≫の効果で山札の下に置かれてしまいますか?

Aいいえ、≪奇石 ミクセル≫の効果より先に「EXライフ」のシールド化を行うため、《聖魔連結王 ドルファディロム》は山札の下に置かれず、かわりに「EXライフ」シールドが墓地に置かれます。
「EXライフ」は状態定義効果ですので、相手のターン中であっても、相手の≪奇石 ミクセル≫の誘発型能力より先に解決されます。

https://dm.takaratomy.co.jp/rule/qa/43594/

この例からわかる問題点その1。
「大抵の裁定は論拠となった総合ルールが何なのか書かれてない」。これではプレイヤーにルールを正しく理解してもらうのも難しいだろう(この場合「総合ルール 110.4f」などの引用が必要)。

次の例を見てみよう。

Q自分の山札が残り2枚の状況です。
カードを1枚引く時に《蒼神龍ヴェール・バビロニア》の置換効果でかわりに2枚引く場合、自分は《水上第九院 シャコガイル》の「自分の山札の最後の1枚を引いたことによってゲームに負ける時、かわりに勝つ」によってゲームに勝てますか?
類似例:《日曜日よりの使者 メーテル》《蒼黒神龍バビロン・ヴェイル》

Aいいえ、勝てません。置換効果は連鎖しません。《蒼神龍ヴェール・バビロニア》の置換効果を適用したので、《水上第九院 シャコガイル》の置換効果は適用できず、自分は山札が0枚になったことでゲームに負けます。
(総合ルール 101.5)

https://dm.takaratomy.co.jp/rule/qa/42932/

これはちゃんと総合ルールの引用がある裁定である。しかしこの説明を厳密に行うには「703.4b 山札が 0 枚になったプレイヤーは、ゲームに敗北する」も併記するのが良い。

これが問題点その2。
「裁定に必要な引用が完全には行われていない」。まあ例はちょっと重箱の隅をつついてる感はあるが、明らかに複数のルールの引用が必要なのにない事例は割とある。

次の例を見てみよう。

Q《禁断竜王 Vol-Val-8》の「攻撃する時」の能力で自分の山札の上から5枚を見た場合、必ずパワー6000以下のクリーチャーをすべて破壊しなければいけませんか?

Aいいえ、自分の山札の上から5枚を見た場合でも、破壊するかどうかは任意で選べます。
「自分の山札の上から5枚を見て、その中から2枚まで手札に加える。残りを好きな順序で山札の下に置く」と「パワー6000以下のクリーチャーをすべて破壊してもよい」は"。"で区切られているため、別々の処理として、それぞれを使うかどうか選べます。

https://dm.takaratomy.co.jp/rule/qa/43595/

で、この上で実際の《禁断竜王 Vol-Val-8》のテキストを見てみる。

・このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から5枚を見て、その中から2枚まで手札に加える。残りを好きな順序で山札の下に置く。その後、パワー6000以下のクリーチャーをすべて破壊してもよい。

このテキスト、「その後」の部分が「そうしたら」だった場合、「そうしたら」より前の行為を試みることができなければそれより後の行為を自由に選ぶことはできないし、後のテキストが「パワー6000以下のクリーチャーをすべて破壊する」の場合、後の効果は強制で行わなくてはいけない。任意で選べるのはそうではないからだ。

つまるところこの裁定のポイントは「"。"で区切られている」かどうかではない。

これが問題点その3。
「裁定の説明が的外れなことがある」。これは結構厳しい。上の自分の説明を厳密にやるのも大変だが、キモがどこかは外さないほうが良いだろう。


他にも問題点は色々あるし、そもそも総合ルールもちゃんと整備されてないとこいっぱいあるわ、総合ルールに書かれていないままのルールもあるわでいろんなことが原因になっている感じがする訳だが…まあこれだけ公式側で整理が成されていない様子なら、正しい裁定と間違った裁定がごっちゃにもなる気はする。

最近はまた徐々に改善されてはいるので、うまいことやっていただければありがたい。


9. おわりに

ということで走り書にしては長々とした話でした。暇があったらまたなんか別の事書きます。では。

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