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<はじめての手帳スケッチ> その4.手帳スケッチの長所と短所 こんな人におすすめです

はじめに

 その3.では手帳スケッチに適した各ジャンルを紹介しました。それらは、今回述べる手帳スケッチの長所を考慮して選んだものです。

 その1.でも述べたのですが、紙のサイズが小さいからと言って、必ずしも絵が簡単に描けるわけではありません。

手帳スケッチの長所と短所

 大型の水彩紙に描く本格作品に比べてペンによる手帳スケッチがどのような長所と短所があるかをまとめました。下に図を示します。

手帳スケッチの長所と短所

 記載した文でご理解できると思いますが、以下若干補足説明をします。

長所の補足説明

 ・いつでも・どこでも・負担感無し: 負担感が無しというのは、心理的負担感のことです。大型の水彩紙を現場で広げてスケッチするのは、数多く経験していても緊張するものです。ましてや、経験があまりないと最初からおっくうになってしまいます。その点、手帳サイズの紙であれば、あまり抵抗感なく描き始めることが出来ます。

 ・カムフラージュ性: 特定の人の肖像画の場合は、当然その人に承諾の許可を取りますが、街の風景を描く場合、通行している人、お店の中の人、公園内の人々を描く、または乗り物の乗客を描く場合、例えば電車内の人物をスケッチする時は、短い時間で知られないように描く必要があります。

 絵を描く場合は、写真と違って特定の人として判別できないので、以前は気が付いても気にしない人が多かった気がします(むしろ絵を見せると一緒に喜んでくれるケースが多かった)。しかし昨今は権利意識が高まっているので、スケッチと言えども気を付けたほうが良いと思います。

 手帳サイズの場合は、文字を書いているのか絵を描いているのかカムフラージュになって分かりにくいので、その点が長所になります。

 ・観察・発見の記録と記憶: 手帳スケッチに限らず一般にスケッチするときは対象をよく観察してペンを動かして紙に定着する作業を伴います。そしてその時に感じたこと、発見したことがその絵に詰め込まれて記録されます。ですから、後で描いたものを見ればその場の記憶がありありとよみがえってきます。一方、同じ映像でも写真の場合はシャッターを押す作業だけなので絵に比べると記憶のよみがえりの度合いが低くなります。

 ・様々な彩色画材を楽しめる: このシリーズで解説している手帳スケッチは水性顔料・耐水性のサインペンで線描し、透明水彩絵の具で彩色する「線スケッチ」を基本の方法として記述しています。

 一方、透明水彩絵具の様々な長所(明るさ、鮮やかさ、透明性、みずみずしさなど)を引き出すには、専用の高級水彩紙が必要なので、手帳スケッチのように水彩紙ではないことが多い場合は、他の彩色画材を使った方が良いケースも出てきます。

 以前は色鉛筆ぐらいしかありませんでしたが今ではアルコールマーカーや水彩色鉛筆などが使えます。水彩用ではない紙の場合は、線描を消さないこれらの彩色画材を試して遊んでみたらどうでしょうか。

 ・他人に実作品を見せられる: 大きな紙の場合、実作品を人に見せるためには額装して展覧会を開くしかありません。一方、手帳スケッチの場合、常日頃持ち歩いていれば、すぐに人に見せることが出来ます。
 離れてみるのではなく、手に取ってみることが出来るので、鑑賞する人の満足感も大きいと思います。

 開示可能な限り手帳スケッチを積極的に人に見せてください。大抵誉め言葉がもらえます。また自分では思ってもみなかった視点からの感想をもらうことがあります。今後の制作に役立つだけでなく、長く継続するための励みになります。

こんな人におすすめです

 手帳スケッチを始めてもらいたい人をまとめました。下の図をご覧ください。

こんな人におすすめです

 最初の項でのべた手帳スケッチの長所を頭に入れておすすめする人を考えてみました。

 中でも最初の初心者の項について補足説明します。

 何度もこれまでに述べていますが、紙が小さいからといって、絵が描きやすいとは言えません。やはり基礎練習が必要です。そのうえで手帳スケッチに向き合ってほしいのです。

 なぜ「手帳サイズだから絵を描きやすいと言えない」のか、理由は以下の通りです。

  1.  手帳で文字を書くのと絵を描くのは、ペンの持ち方、腕の動かし方が基本的に異なります。確かに文字を書く要領で線を引くことが出来ます。しかし、そのやり方ではいつまでたっても自分でも満足できる絵にはなりません。

  2.  ペンの持ち方、腕の動かし方の基本を習得したのち、次はモノの輪郭の観察の仕方と線描の練習が必要です。いきなり手帳サイズで練習するのではなく、A4サイズ以上の紙で大きく描く練習を並行して行うとスケッチの要領を早く体得できます。

  3.  以上の練習を続ければ、個別のモノの手帳スケッチは自在にできるようになるでしょう。しかし、人物がいて奥行きのある実空間も描きたいのであれば、やはりさらなる訓練が必要です。それは、多くの人がつまづく次の項目です。
    ・線遠近法による空間描写
    ・樹木の中景、遠景の描き方
    ・人物の描き方

以上、初心者の場合の補足説明を終えます。

おわりに

 以上で、手帳スケッチについてのおおよその解説をしました。次回から、画材の具体例、手帳スケッチの実践編に移りたいと思います。

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