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疫病退散や無病息災の郷土玩具(東日本編)_20200324

日本の郷土玩具にこめられた願いの多くは、人生における大小様々な厄災から身を守りたいという願いだと思われます。
安産祈願(死産が多かったのでしょう)、子どもの健康祈願や無病息災(大人になるまで育つ子が少なかったのでしょう)、五穀豊穣(作物の疫病や天災が多かったのでしょう)など、およそ共同体の存続のために様々な厄災を除けることが重要だったことが、郷土玩具から窺い知ることができます。

現代の「医学」や「科学」がまだなかった頃の、目には見えずに襲ってくる病気や人智を超えた自然の脅威に対する「感性」が、郷土玩具という分野でも多くの形を残していまでも見ることができます。

この「感性」というのは、共同体の環境(どのような自然環境でどのような生活をしているかなど)に影響を受けて形を変えるもので、ほとんどの共同体に存在するというか、この「感性」を持っていることが共同体の条件だとも言えるかも知れません。ですからどの共同体にも厄除けの機能や祈願を託すための何かしら(寺社、郷土信仰、郷土玩具、郷土料理など)があるのかも知れません。

今回は、今も入手可能なもので東日本に存在するものを紹介してみるとともに、過去に自分が張子にした記事も合わせて書き連ねてみたいと思います(網羅しているわけではなく思いついたものの紹介ですので、これを読まれた方はぜひご自身の地域のものを探してみてはいかがでしょうか)。

「アマビエ」なる妖怪?神様?がいるのを新コロナウィルス流行で知ったので、こんなのもありますよ、という感じです。
現在も世界中が大変なことになっていますが、各分野の専門家の方々に頑張って頂き、それを受けた政治家の方々の判断を注視しつつ(ここが日本の場合はなんだかなあ、ということがあまりにも多いですが、、)一日も早くこの流行がおさまりますように!

・子どもの疳(神経症)の虫封じ:人形笛(下川原焼土人形)_青森県・弘前市

土人形と呼ばれるもので、かつては日用雑器をつくるかたわら、冬季の余暇につくられたものです。
人形の後ろやお尻の部分に穴が開いていて笛になっているユニークなものです。
このタイプの人形を土笛とか笛人形と呼ぶのですが、昔は子どもの「疳(神経症)の虫(※)封じ」として信じられてきました。

※虫:腹の虫など人の体内で悪さをして、様々な病気の原因となるとされていたもの。戦国時代頃から医学文献で確認されている。

・病気退散:赤芥子(堤人形)_宮城県・仙台市

堤人形-赤けし

【引用元URL】

仙台の堤人形、岩手の花巻人形、山形の相良人形は東北の三大土人形と呼ばれ、特に堤人形は花巻人形や相良人形、また福島の三春張子人形それぞれに大きな影響を与えていると言われ、東北地方の郷土玩具の源流のような位置にあります。

地方によってご利益の内容が微妙に違うのですが、病気退散などを祈願して神社に奉納している地域もあるそうです。

・無病息災:起き上がり小法師_福島県・会津若松市

起き上がり小法師

【引用元URL】

指先ほどの小ささの起き上がり小法師で張子です。会津には他にもこれをつくっているところがありますが、このいびつで一体一体違う形と表情を持つ起き上がり小法師はかわいいです。

約400年前に、当時の藩主であった蒲生氏郷が藩士につくらせ正月に売らせたのが起源と言われており、「家族の人数+1」個を買い神棚に飾り(家族が増えて繁盛するようにとの願い)、一年の無病息災を祈ったそうです。

・天然痘除け:黄鮒(きぶな)_栃木県・宇都宮市

かつて天然痘が大流行した際、宇都宮で金色の(黄色い)鮒を食べた人は病が治ったという伝説から、悪病除け、無病息災のまじないとされるようになったといわれ、いつしか張子の黄鮒を新年に神棚に供えたり軒先に吊るすようになったそうです。

・子どもの虫封じ:虫切り獅子頭_群馬県・高崎市

虫切り獅子頭

高崎市内の山名八幡宮で授与される"安産・子育て"を祈願する縁起物です。

幼い子どもの頭にかぶせると虫切り(虫封じ)になり、丈夫で健康な子どもに育つと言われています。

"虫"とは、子どもの夜泣き、かんしゃく、ひきつけなどを起こすと言われる"疳(かん)の虫"、"泣き虫"、"腹の虫"など、医学でもわからない神経や気性の原因とされるものです。

頭には色鮮やかな羽と鈴がつけられ、泣く子をあやすのにも良さそうな郷土玩具です。

山名八幡宮で通年授与されているそうです。


・疱瘡避け:鴻巣(こうのす)の赤物_埼玉県・鴻巣市

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全体が赤く塗られた物が多く(「赤物」と呼ばれる)、中国から伝わり古くから疱瘡除けの色とするまじないがあることから、子どもの無病息災のお守りとして珍重したそうです。
「赤物」と呼ばれる人形は各地に存在しますが、特に種類が豊富でユニークなものが多いのが、江戸時代から雛人形の産地として栄えた鴻巣でつくられる、桐のおがくずを練った生地に直に着彩する「練り人形」です。

こちらで見られるように、金太郎と鯉や鯛や猫などの組み合わせが面白いです。

・子どもの魔除け:笊(ざる)かぶり犬_東京都・台東区

笊かぶり犬

東京の縁起物の代表とも言えるのが犬張子です。子どもの魔除けや、子育てのお守りとしてポピュラーです。

種類も色々あり、でんでん太鼓を背負ったものや、模様なども豊富です。

この「笊(ざる)かぶり犬」は、人形問屋や宝飾品の材料問屋が今も多く並ぶ浅草橋から、かつておもちゃ問屋が並んでいた蔵前へ向かう途中の鳥越神社で授与されるものです。

この犬が竹笊をかぶっているのは、「竹」の下に「犬」で「笑」という字になるという江戸っ子の洒落からだそうです。

また笊が風を通すことから、子どもの寝ている天井に吊るすと「鼻づまり」を防ぎ、風邪を引かないとか、病気を起こす虫を笊ですくい取るというおまじないでもあるそうです。

笑いを絶やさない子どもたちで満たされた世界になりますように。

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