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タービンのキーン音を激減させる工夫

 歯を削るタービンの音が苦手な人ってけっこう多いです。この不快音をちょっとした工夫で激減させることができます。個人的には飛行機のジェットエンジンの音っぽいので嫌いじゃないのですけどね。

反響音で不快倍増

 以前に勤務していた歯科医院は騒音の嵐でした。ユニットも患者さんも多いので仕方ないのですが、いたるところから削る音が響き渡り、患者さんの話が聞こえにくくて大変でした。声を大きくしなければならず、怒っているような印象を与えてしまったこともあります。
 おそらく多くの方が「歯医者ってこうだよね」と思っているため慣れているというか、諦めているというか。

 歯科医院の騒音の原因は機械の音が大きいことです。これは個人ではどうにもなりません。メーカーの皆様にがんばってもらうしかないです。

 でも騒音の原因は機械だけではありません。建築にも問題があります。
一般的な歯科医院は巨大なワンフロアをパーテーションで区切り、ユニットをギッシリ配置します。音を遮蔽する壁がないため、隣のユニットの音が丸聞こえです。
 さらに天井が高いこともデメリットになります。以前の勤務先は吹き抜けていたため、まるでコンサートホールのように音が反響していました。
 大きな空間に音を遮蔽する物がないため、ガーガーキーキー音がバッチバチ散乱して、すさまじい反響音となります。機械が出す騒音に加えて、跳ね返ってきた騒音が混じりあうため不快感が倍増します。

静寂な空間への工夫

 ワタベデンタルでは完全個室で狭い空間です。ひとつの空間にユニットが1つしかないため、ほかのユニットからの音が壁で遮蔽されます。そもそも一人ずつしか診察してないので関係ないですね。
 天井高は2,400mmでマイクロスコープがギリギリ当たらない高さに設定しました。天井を高くし過ぎるとコンサートホールみたいに響き渡る不快音になるためです。

 さらに天井に杉板をルーバー状に張りました。工務店の社長さんからの提案だったのですが、これは本当に名案です!ルーバー状の構造が音の拡散を抑えることと、木そのものに吸音効果があるため反響しにくくなります。正直に言うと、私は意匠程度だと思っていました。だから別の部屋には雰囲気を変える目的で木張りの天井にしませんでした。
 するとどうでしょう。木張り天井の部屋はすごく静かです。まるで機械が変わったかのように静かなのです!木張り天井にしなかった部屋は音が反響しているのがよくわかります。
木の天井にすればよかった…。リフォームしようかな。
 ちなみに木張り天井にしなかった部屋も歯科医院とは思えない静かさです。断熱材のグラスウールに吸音効果があるようで、効果を実感できます。

 先輩から「医院が静かだと患者が不安になるぞ。昔、開業したての時に患者が入ってきて、静かだからやってないって思ったらしく、そのまま帰っちゃったことがあったよ。だから最初のころは意味もなくタービンを回していたよ。」と言われたことがあります。
 そんなことないだろうって思っていましたが、ほかの歯医者さんと違って静かすぎるため、人によっては不安になるかもしれません。
 ただそれも最初だけです。空間に慣れてしまえば、木の香りとほどよい静寂感に安心感を覚えると思います。私自身が「やっぱりこだわってよかった」と実感できていますので。


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