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普通の歯医者が自由診療だけで開業した理由

私は博士号もなければ、海外経験もない、有名な先生にお墨付きを与えられたわけでもないし、なにか特別な才能があるわけでもない。
はっきり言って凡人。
普通の歯科医師です。
そんな普通の歯科医師が保険診療をやめて、自由診療で開業してしまいました。
しかも都心から離れたベッドタウンに。
普通に考えて無謀ですよね。


親父の背中をみて

私の父は超田舎の開業医です。開業して40年以上も事業を継続させている大先輩です。では私の父が40年以上も継続できている理由はなんでしょうか。

驚異的な売り上げ? 成長戦略? 1億円歯科医院? 分院展開?
どれも違います。

父はケチです。超ドケチです!
技工代金がもったいないから自分で鋳造したり、石膏を余らせないでジャストで盛るし、臨床着も何年も同じまま・・・。
ちっちゃいメモにちくいち燃費を記録して、1円でも安いガソリンスタンドで給油して
夕飯を釣ってきたり、栽培したり、山で採ってきたり、近所の人からもらったり

私が小学生の頃はバブルで、周りの歯医者さんたちはみんな超高級外車に金ぴかの腕時計
そんななか私の父は山仕事で使えるジープみたいな車、時計はよくわからない安いやつ

見栄を張らない
生活水準を上げない
経費を切り詰める

直接教えてもらったわけじゃないけど、この超ドケチ根性が40年以上も事業を継続できた理由だと確信しています。
かっこよく言えばコストリーダーシップ戦略です。
事業の破綻は売り上げではなく、コスト管理にあります。

患者さんが責任を取ることになる

自由診療だけで開業した理由は「そのほうが安い」からです。
はっきり言って保険医療機関で開業するのは超高額です。
1億円でも足りないのでは…。
大勢の患者さんの診察が必要であるため、大きなクリニックになります。
土地や建物、内装工事費や家賃など、大きければ大きいほど高額になります。
大勢の患者さんはそれぞれの悩みがあり、多くの悩みに対応しなければなりません。
多くの症例に対応しようとすると、それだけ医療機器を増やさなければなりません。
多くの患者さんを診察するには、それだけスタッフを雇用しなければなりません。
莫大な人件費を維持しなければならず、求人に要する費用も高額になります。

その莫大な費用をどうやって回収するのですか。
善意だけでなんとかなるのでしょうか。

市民病院のように潤沢な税金の投入や寄付金によって、赤字垂れ流しで社会貢献することは許されません。
だから大型の歯科医院を維持するためには高額治療が必須なのです。
インプラントやマウスピース矯正などの高額自由診療の売上が必要なのです。

高額コストのしわ寄せは患者さんに押し付けられます。

無駄な治療
無駄な検査
無駄な通院

一人でも多くの患者をさばくことが売り上げにつながるため、無理やり予約を詰め込みます。その代償は待ち時間として患者さんに押し付けられます。
歯科医師もスタッフも患者さんも、みんなイライラしている。
余裕のない状態は医療ミスを助長させます。

無理な規模の拡大、無謀な経営戦略は最悪の場合、詐欺に近い医療行為につながることもあります。
マウスピース矯正
インプラント
不幸な医療行為の結果を受けるのは患者さんです。患者さんが責任を取ることになります。

これって間違っていると思いませんか。

小さい歯科医院

私の医院は建坪9坪くらいしかありません。スタッフは1人に、ユニットは2台だけです。
保険診療がないので高価な電子カルテやオンラインレセプトが不要です。
専門的で高額なセキュリティ対策も不要で、万が一のための保険も最小限で済みます。
なんちゃら加算のために、余計な医療機器を購入する必要もないです。
その他の小機器も最小限で済ませることができます。
資金繰りも最小限なので、開業コンサルタントなどの専門業者も不要です。
一般的な開業費用の半分以下で開業しています。
風が吹けば飛んでしまいそうなクリニックですが、小さすぎることで風にすら当たりません。

余計なものを背負ってないので、その分を患者さんに還元することができます。
ひとりひとりにしっかりと時間を確保でき、丁寧に診察することができます。
1回の治療をしっかり完結できるため、術後症状が少なく短期間で終わらせることができます。
余計な通院や無駄な治療、保険請求のためだけの検査が不要です。
高額な医療機器など無くても、丁寧な診察で高い精度を維持できます。
自由診療なのにもかかわらず、結果的に時間も費用も抑えることができます。

患者さんも私も穏やかで楽でいられます。
心に余裕があるから、おおらかな気持ちで診察できます。
小さいことは、決して貧しいことではありません。

見栄を張らず、無駄遣いしないでコスト意識を持つ
6年以上も愛用しているTシャツを着て、この記事を書いています。

ワタベデンタル
https://www.watabedental.com/

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