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歯科医院開業の立地探しでの失敗

 実は3年ほど前に一度失敗しています。悪徳業者ではないのですが、ギリギリのやり口に捕まれそうになった経験談をお話しします。


やっと見つけた理想の土地

 きっかけは1枚のチラシでした。駅から程よく近く、敷地面積もちょっと大きいけど許容範囲。前面道路は広く歩道あり、車でも徒歩でも来院しやすい立地でした。近くには幼稚園が2つ、小学校が1つ、そして上場企業も近くにある。かなり理想的でした。

 比較的大きなホームメーカーだし、大丈夫だろう。さっそく電話でアポイント入れて話を聞きに行きました。


「この土地に歯科医院を建てようと考えてまして」
担当者
「この土地はかなり人気で、もう何名か相談しに来てるんですよ。たぶん1週間以内には売れてしまうと思うんですよね。早くしたほうがいいですよ。とりあえず今日仮押さえだけでも進めましょう」

 いつもの常套句だとは思いつつも、内心ではちょっと焦ってしまいました。ここはいったん帰ってよく考えることにしました。妻はHMに不信感があったようで、この話は進めないほうがいい、と言っていました。

ここで辞めたら、次は本当に良い土地が見つかるのだろうか…。
半年以上も探していて、やっと見つけた理想に近い土地だしな…。
確かに怪しい感じがしたけど、大きい会社だから大丈夫だろう。
次の日に担当者から電話がありました。ここで購入の意向がある旨を伝えました。

不真面目な建築士

 建築条件付きだったため、ほかの会社で建てることができません。
歯科医院の経験があるか担当者に聞いたところ
「うちは手広くやっているので大丈夫です。経験豊富な1級建築士を連れてきます!」
とのことで現地下見を済ませ、これからの予定をざっと聞いて終了。

 次の打ち合わせで建築士が同席しました。間取りは歯科材料メーカーと相談しつつ、HMとも話を混ぜながら進めました。
 話を進めるうちに、どうもぎくしゃくする感じがありました。大丈夫と言っておきながら、このHMは歯科医院を一度も建築したことがなかったことが発覚しました。

 一般住宅と違い医療施設はかなり特殊です。医療機器という特殊な設備、法的な制約、保健所の検査…。特に歯科医院は配管が複雑です。上下水道だけでなく、エアーの配管やバキュームの配管があります。たしかに当初から「歯科医院を建てたことがある」とは言ってないので嘘ではないです。

 打ち合わせのたびに話が二転三転、なんとなく話を逸らすような言い回し。私の母も「あの設計を担当している人、不真面目だけど大丈夫なの?」と不安を口にしていました。

いきなり1億2千万!?

 順調に打ち合わせを重ね、3日後に請負契約が迫った時です。担当者から1枚の見積もりを提示されました。

そこには初耳の工務店の名前
詳細見積もり欄はほぼ空欄!
最後に1億2千万円!!

どうなってるんだ?意味不明な展開に頭が真っ白
営業と建築士が話していることは頭に入ってきません。

そして請負契約の日が来ました。
こんな状況で契約できるわけがない!

この日だけ上司と思われる人が同席しました。
「この金額になってしまったのは当社にも落ち度があります。そこで建築条件付きの土地だけを特別にお譲りします。ただしこの金額でお譲りすることはできないので、各種工事費用や手続きの費用および・・・」
建築士だけが、一瞬だけ妙にニヤニヤしているのが見えました。

「こんな不真面目で誠実さのない御社とは取引することはできません。お断りします!」

 初めから土地だけを割り増しで売りつけるつもりだったのではないか、と考えています。当初から建築する気など全くなく、
表面だけの打ち合わせを重ねさせ
医療機器メーカーなどとも話を進ませておいて、断りにくい雰囲気にして
契約直前に無理な金額を提示して断らせる。
そこで、土地だけ割り増しで売って利益を確定させるシナリオだったのでは。

 「辞めたほうがいい」という妻の進言を素直に聞き入れておけばよかったと反省しています。ここだ!と思ってしまい視野狭窄していたのでしょう。
打ち合わせの段階で気付けるところは多々あったはずです。違和感を隠して、ここで開業したいという思いが先行してしまいました。
 医療機器のメーカー担当者様やディーラー担当者など、大勢の方に迷惑をかけてしまいました。本当に申し訳なく思います。

 今思い返すとこれで良かったです。
なんの未練もありません。
金額が大きい分、思考回路がおかしくなったんだと思います。考えさせないで、どんどん話を進めさせる。歯科医院開業を考えている先生は独断で決めずに、いったん立ち止まって周りの人の意見や、自分のなかの違和感に率直になったほうがいいです。

ワタベデンタル
https://www.watabedent

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