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ゲイリールーミスのロッド

結局、少し古めのG・ルーミス中心にしたのですが、自分なりにこの選択がすこぶる嬉しくてわざわざノートに書くことにしました。めんどくさい文章が好きで、目一杯ぐねぐねしてみました。


賞金稼ぎでもなく、腕前で食っていく程の力量はない。子どもの頃から結構やってきたバスフィッシングではあるが、15年ほどのブランクがあった。どういうわけか昔以上に入れあげて、今は生活のど真ん中にあるものの、言うなれば遊び道具を選んだだけであり大仰に語るほどでもない。それなのに、ことさら大いに語り、あわよくば誰かに見てもらいたくなった。

先に断っておくと、素敵な相棒を見つけたが専門的な見地から紹介する訳ではないし、わかりやすく纏めるつもりもない。ただ、バスフィッシングにいろんな形でイカれてしまっている人や、道具と自分に勝手に物語が生まれる人には引っかかるかも知れない。

ルアーフィッシング。とりわけバスフィッシング用に開発されるルアーの種類は群を抜いている。そのルアーを扱うためのロッドやリール、ラインなども細かく用意されていく。バスフィッシングは、1匹のバスに出会うためのアプローチがいくつも生み出された珍しい釣りだ。ルアーの数はもちろんのこと、ロッドだけでも硬さ、長さ、曲がり、重量というモノの違いから、用途の専門性、汎用性という性格、さらにブランド毎の表現が入ってくる。常に新しいアプローチが生まれ、専用のタックルが開発され、毎年多くの新作、モデルチェンジが行われる。

つまりこうなる。

いろんな手法、考えで自分なりのバスフィッシングの世界観を「道具でも」表すことができる。どう捉え、どう感じ、どう考え、どう表すか。新自由主義の根本の性質が一つの釣りに詰まってる。

ただし、新自由主義の性質は社会と同じく、悪い方にも働く。格差の拡大と、マウント病に推し病だ。

と、ここまで書いて我に帰る。このままではイデオロギーの是非に議論を持ちかける方向になってしまう。そんなことを言いたいんじゃない。ロッドの話だ。しかも、ロッドを揃えたよ。嬉しいよという話だ。

というわけで、バスフィッシングというものは、もちろんロッド一本で始めることができるが、やりたいことが増えていくとロッドもリールもルアーもどんどん増えて行ってしまう。3本のロッドに1つのリールで使い分けるというわけにはいかず、ロッドと同じ数のリールを用意する羽目になる。そして、3本では満足できなくなる。。

いざ揃えるとなるとそれなりにお金はかかる。さらに、日々新しいアプローチが生まれるため気を抜いているとつい目新しいものに飛びつきそうになる。バスフィッシングを道具で満たそうとすると非常に厄介なことだ。

小学4年生から30代の中盤くらいまで波はあれどバスフィッシングを続けできたけど、プロスポーツの仕事に就いたあたりから仕事がいちばんの興味の対象となり、家族も増えたこともあり遠のいた。15年ほど経った今、そのプロスポーツの仕事から足を洗って、またバスフィッシングを再開。残念だけど離婚しちゃってその時に持っていた道具は全部処分してしまったので、1から集めることに。

この15年ほどで、釣具屋さんにはぼくの知らないブランドばかりになっていた。調べると、当時活躍していたプロたちが各々のスタイルを表現する形でブランドが立ち上げたらしい。おお奥村さんのデプスすごいことになってるな。DRT?なにこれ渋い。常吉さんも会社になったか。今江さんはニックネームのままブランドね。ケイテックの林さん亡くなられたんだ。。RAID、bottom up、Dstyle.....まぁノリーズは変わらんねー。などなど浦島太郎。結構時間をかけていろんな情報を手に入れながら、再開するきっかけをくれた師匠の借り物で釣行を重ねる。

ロッドを揃えるにあたって、2つの方向性があると思っている。用途にマッチした道具を選ぶか、使い手にマッチした道具を選ぶか。
前者ならロッド毎に異なるブランドの、その用途にバッチリのものを選ぶことになる。後者であれば、ブランドへの愛着、自身のバスフィッシングに求めるもの、手に取った感覚の同一性などから、比較的同じブランドから展開されるシリーズを選ぶことになるだろう。個人の好みだけど、その人のものごとの考え方が現れる。僕は後者だ。

世の中にいいものはたくさんある。そして欲求は肥大する。

どうやって自身が心惹かれる相棒を選び、どうやって自身の欲望に少しの歯止めをかけるか。自身のバスフィッシングに対する考え方もこれから更新されていくだろう。その時に今の道具じゃ満たされないとなるのは寂しいことだ。とはいえ道具ばかりを追いかけて上ずるのも味気ない。ある種の普遍性と、一定以上の機能的な信頼。そう言うものを探していこうと決めた。そこに自身の好みも加味していこう。

よし、あの頃憧れて手にできなかったものから揃えよう。となればルーミスだ。

G・Loomisというアメリカのロッドメーカーがある。ゲイリールーミスというおじさんが始めたブランドで、現在まで続くグラファイト素材でのロッド作りの大きな流れを作った大人物だ。フライフィッシングに端を発し、バスや海でのゲームフィッシングロッドも手がける。

彼は、大病を患いG・ルーミス社をシマノに売却し引退した。その後完治し復活。彼は新たに自身のブランドを立ち上げる。ノースフォークコンポジット社。彼は今でも設計に携わり、自社ブランドだけでなくさまざまなメーカーにブランクス(竿の元)を供給している。

G・ルーミスのロッドは飾り気がなかった。シンプルで、潔い。アメリカンロッドというのはとかく派手だったり、重かったりする。その中でルーミスは異色だった。そして、張りがあるのに、かかると曲がる素晴らしいロッドだと常に評価されていた。ただ、とても高価で手にすることなんてできるものじゃなかった。

ありがたいことに、今の世の中にはメルカリやヤフオクという仕組みがある。僕は気長に気長に、ルーミスの欲しい番手が出ることを期待して、1日に何度も2つのサイトを覗いた。さらに釣具屋ごとの中古販売情報も抜かりなく。

長年愛用していた方が2本のロッドをヤフオクに出していた。番手はGLX MBR783と784。GLXというのは、特に日本で売れたモデルで、いわゆる当時のルーミスのフラッグシップ。15年近く前とは思えない軽さと、きっちり曲がり、必要な感度と備えている。MBRは、マグバスシリーズと言って色々なルアーや釣り方に応用が効く用途の幅が広いモデル。1番欲しいシリーズが出た。数日後無事落札。これでミディアムヘビー、ヘビーアクションのロッドが決まった。僕は主にジグやワーミング、そしてスイムベイトなどに使う。

そして翌月、とうとう見つけた。
CBR783 ルーミス使いなら誰もが持っているだろう一本。グラスロッドのように扱え、グラスロッドより倍ほど軽いクランクベイトロッド。ノリーズのロードランナーのハードベイトスペシャルが極めて近いと思う。シックなバーガンディカラーがいかす。

2本セットでの販売で、もう一本はGLX 783,すでに持っているロッドだ。
散々迷うもののミディアムヘビーのバーサタイルロッドなんて何本あっても使うだろうとポチってしまった。結果、それが吉と出る。このセットになっていたモデルはブランクスから組んだロッドのようで、ガイドセッティングや味付けが先に買ったものと違い、使い方も変化をつけられる。
手元に憧れのCBR。しかもほぼ無傷。これだからルーミスユーザーは最高だ。ちゃんとしている人が多い。

そのあとスピニングモデルを増やし、ブロンズバックと言うスモールマウス用の巻物ベイトロッドを国分寺のプロショップで出会頭に即購入し、そしてその店でショートレングスのGLXミディアムアクションを取り置きしてもらっている。このロッドがジグだけでなくスピナーベイトにハマりそうなら、あとはクランクロッドのミディアムライトアクションCBR781が揃えば完璧。

年代ははっきりとわからないが、15-20年前くらいのルーミスのロッドでシステムが出来上がった。この頃のルーミスのロッドはまだゲイリーが関わっていた時のもの。ジョブズがいた頃のアップルという感じだ。

これから、僕がおそらく長い時間をかけて愉しむバスフィッシングの相棒を決めた。

スピニングはおそらく今後ノースフォークのジャパンモデルから専門性の高いものを探すだろうが、とにかくベイトタックルが決まった。中古とはいえ相当の投資となったが、折れたり芯が抜けたりしない限り何十年も使える。

ロッド選びのこの一年、途中で手を出したキスラーやロードランナー、そして島の友人が作ってくれたロッドも合わせると11本。やりこんでる人はこの3倍ほどだろうが、それでも多いことは確かだ。釣行のたびに、この中から5本ほどを選ぶあの時間がたまらない。

天才デザイナーが手がけたバスロッド。
子どもの頃は手が出なかったG・ルーミス。
今、お古だけど僕の部屋に並んでいる。

こんなことを書いていたら、早く湖に行きたくて仕方がない…。昭和を生きた人間らしいロッド選びができて嬉しいのだ。


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