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#94 おもたせと手土産

還暦間近の私を実の息子のように、かわいがってくれる母親みたいな人がいる。

彼女の家へ行くと、帰り際にいつもと言っていいほど、「おもたせ」を持たしてくれる。時には野菜だったり、お菓子だったり、果物だったり、肉だったり、とにかく何か家にある物を見繕っては持たせてくれる。

中でも私の一番のお気にいりは、彼女の仲良しが経営している洋菓子屋さんのトリュフだ。これは本当においしい! 特に出来たては、まだ中が柔らかく口に入れるとすぐにとろけてしまう絶品だ!

これをもらうと子供に還ったように心が弾んでくる! だから我が家の家族にもバレないように、こっそりと独り占めをしている。(全く大人げないが。)

いつかこの話を彼女にしたら、次に時に2箱渡され、「子供達にも分けてあげな」と言われた。

その時は随分と迷ったが、あとからうちの子が彼女に会った時に、お礼を言わないとさすがにまずいと思ったので。1箱だけ貰った事にして、その1箱は自分も含め家族で分け合い、残りの1箱はしっかりと自分だけで食べた。(さらに大人げないとは思ったけれど)


自分の大好きな物を、誰かから貰うという事は本当に嬉しい。特に長年懇意している人からのいただき物は、気心も知れているので、素直に受け取れる。

しかし初対面や、さほど親しくない人からの貰い物には、正直困惑することがある。例えば自分の苦手な食べ物や、使うことの無い(趣味の合わない)日用品などは、悪い言い方をすると「処分に困る」

勤務先の取引会社が持参した、何だか意味ありげな手土産も、受取って良いものかと迷うこともある。今時それ程高価なものを持参する業者もそうはいないが、接待の意味合いがあるような品は、私にとっては何だか買収されてるようで複雑な気持ちになる。

また、社員が休暇明けに旅行先のお菓子を職場に配る事も、あまり好きではない、貰った方は自分も同じようにしないといけないと思い、気が重くなる者もいるのではないかと思う。

「その人の事を良く知らない場合でも、物をあげるのにそれほど深く考えなくても良いではないか、欲しく無い物を貰っても贈り主の誠意は伝わる」という考えもあるかもしれないが、私はどうしてもそのように思うことが出来ない。

物をあげたことによって、迷惑や、プレッシャーや、「こんな物で自分を釣ろうなんて」など、相手にとって嫌な思いをさせるぐらいなら、何もしない方が良いのではないかと、私は思ってしまうのだ。

お近づきの印に何かプレゼントするという考え方も、私にはうまく理解できない。相手の好みを少しずつ知ってから、その人が心から喜んでくれるものを贈りたいと私は思ってしまう。

それは、贈り物に「費用対効果」を考えるようで、それはそれで卑しい考えなのかもしれないが。

しかし冒頭の私の母親みたいな彼女は、物を渡すとき「○○と▲▲どっちがいい?」とか「■■があるが持っていくか?」と聞いてくれるし、私も「▲▲の方が欲しい!」とか「■■は家に沢山あるから要らない!」と遠慮なく言えるので、とても楽である。

いつも一方的に貰ってばかりだが、困った事があればすぐに連絡が来るので、早急に手助けをしに行く。そして御褒美(おもたせ)を貰って帰って来る。

助けてほしいから物をやるわけでもなく、物が欲しいから助けるわけでは無い。自分が何かあげたいと思う相手と、困った時に助けてあげたいとおもう相手であるからこそ成り立つ関係だと思う。

私の方から家族以外で、何か物をあげたいと思う人はまだいない。

いや家族すら大好きな物は、分けたくはないという奴だ。

まだまだ成長の伸びしろはあるかも?。



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