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ミュージカル『東京ラブストーリー』@東京建物Brillia HALL (東京・池袋)


カンチ(柿澤勇人)とリカ(笹本玲奈)/提供:ホリプロステージ

『東京ラブストーリー』といえば、柴門ふみによる原作漫画も、織田裕二と鈴木保奈美のテレビドラマもリアルタイムに体験してきた世代だけに、今回のミュージカル版に対してはあの長い恋愛物語をどのようにして2時間少しの舞台作品に、さらにミュージカル仕立てにするのか、期待と不安が半々というのが正直な気持ちだった。結果としてほぼ原作通りに物語を綴って見せたものの、全体を通して駆け足な印象は拭えず、漫画で言うならバラバラと斜め読みをした気分だった。


カンチの変化を柿澤は見事に演じきった/提供:ホリプロステージ

 だからといって作りが雑だったというわけではないのでご注意を。むしろしっかり作り込まれた王道のミュージカル作品に仕上がったのには驚ろかされた。プロモーションで主要キャストが話していたとおり、ジェイソン・ハウランドによる楽曲はとてもキャッチーで、さらに様々なシーンをイメージさせる巧みなメロディがいくつも用意されている。主要キャストを取り巻くアンサンブルによるダンスは華やかで、いかにもミュージカルらしい振付が印象的。さらに男女一組のダンスカップルが、キャストの心象風景を象徴するダンスを見せてくれる。映像や移動式の壁を効果的に使った演出も、東京という大都会を充分に表現していたと思う。


三上(廣瀬友祐)とひとみ(夢咲ねね)/提供:ホリプロステージ
笹本も奔放なリカを好演/提供:ホリプロステージ

 そして何よりカンチ、リカ、三上、さとみの4人を演じた柿澤勇人、笹本玲奈、廣瀬友祐、夢咲ねね(以上、空キャスト)の存在感が際立っていた。地方から上京しカオスな都会に戸惑うカンチが、終盤に向けて垢抜けていく様を柿澤は見事に表現したし、恋にも人生にも自由奔放に生きるリカが放つオーラを、笹本はしっかり再現していた。一幕最後に聴かせた『ミス・サイゴン』を想い出させる笹本の熱唱には思わず鳥肌が立った。

 原作が余りに有名なこともあって、かつてこの物語に親しんだ人にとっては食わず嫌いになりがちなミュージカル版『東京ラブストーリー』だが、先にも書いたように本格ミュージカルとして充分に楽しめる仕上がりだけに、チャンスがあれば是非足を運ぶことをお薦めする。12月18日まで。(11月29日マチネ、空キャスト)



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