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舞台『BARON』 Actors Tribe Zipang

女優としてだけでなく、昨今は演出家としても活躍している鳳恵弥が主宰するActors Tribe Zipangの新作公演は、実際に起きたペットの医療過誤・詐欺事件を元にした物語。これまでも鳳は主演を務める『こと〜築地鮨物語〜』や『シーボルト父子伝』で家族の絆や愛情を描き続けてきたが、本作も飼い犬を失った家族と、それを囲む仲間達の絆を描き出す作品だった。

鳳は愛犬バロン役。なかなかの名犬っぷりだった

鳳が演じたのは主人公ならぬ主人犬のバロン。この配役にはともかく驚かされたのだが、無邪気に明るいバロンのキャラクターが存分に表現されていたと思う。特に後半、病に冒された切ない姿には思わずグッとくる。

このバロンは、大黒柱である父親の病気をきっかけにバラバラになりかけた主人公一家に偶然やってきた大型犬。その去勢手術をきっかけに一家は担当した獣医師とのトラブルに巻き込まれていく。バロンを失った一家は一丸となって獣医師側に立ち向かうのだが、そこで安直に家族をまとめてみせるのではなく、あえて家族の中に不協和音を持ち込むことで、絆の強さを際立たせる仕掛けも見事だった(もっともこの物語は実話を元にしているので、これについても演出ではないかもしれないが)。

前半はバロンと他2匹の飼い犬による3匹組によってコメディタッチに進められるが、その明るさがあるからこそ、バロンが病に倒れてから始まる闘いの日々が際立ってくる。その点も見事な演出だと思う。

また、鳳作品の常連である亀吉をはじめとする俳優陣の熱演も心地いい。ベテランから若手までバラエティに富んでいるので、時にはヒヤヒヤする部分もあるのだけど、その中で獣医院のスタッフ(そしておそらく院長の妻)がみせるマクベス夫人を連想させる不気味さはなかなかに際立っていた。


他にも2匹の愛犬が登場

全国には多くの愛犬家がいて、飼い犬を家族同様に愛していることだと思う。だからこそ、少し小規模にしての全国キャラバンも実現できるのではないか。そんなことも考える作品だった。(12月23日 新宿・サンモールスタジオ/12月28日まで)

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