まやかしの楽園で、雪が降るまで精神はミュート

むきだしの光に目が眩む。僕が明かされてしまうその前に断て。断て。断て。嘘で何枚にも貼り合わせた皮膚はこんなにも厚くなったのに、一向に涙が止まない。誰かの目に映るために戯けてみせた、演じてみせた、その度に濃くなる影は瘡蓋。楽園の出口を密かに閉めてこもる、僕らはまだまだ天使になれない世界の底でも出会えない。          
三角座りで俯きながら釣った口角を戻す。当たり前になってしまった愚直な行為に、間違いはないと何度も何度も試す。笑い方が曲がっているから愛されないんだね、と言葉にした途端にその独り言は空気を付箋に変えました。嗚呼何を言ったって鏡は全てを映してくれないし、僕は僕を一生かけても見ることができない。僕の中身はあらかじめ用意された生のエネルギーで焼け死んだ、あるいは魂があぶくを吹いていて、きっと定かでなくなった世界に対してこれからは擦り寄っていくしか生きる方法がないのだ。気味の悪い癖だと指摘されても、僕のありとあらゆる視線はそれを捉えることができないのと同じようにこれもまた学ぶことのできない事実。
記憶の縁に座礁した、きみはもう古びてしまって、がらくたも同然の人形がくるくると回るのを眺める。汚れることに怯えながら救い出してくれと願っているうちはどこにも行けないままだ。せめてこの中身のない姿をあるがままの形で残してくれ、と叫んでみるも宛てがない。平気で見ぬふりをされた数多の少年少女、救われるためには同情を誘う粘着力がいる。僕らの若さを以っても逃げきれないのならば、たった今、曇り空のうちに首に手をかけなくてはいけない。落下する煙が闇に馴染む速さで力いっぱいに、沈黙を揺さぶらなくてはならない。しかし従順であることはどれほど悲しいだろう、世界のつま先にいる気分だ。宿るもの全てに意味のないバリケードを張って仰いだ薄暗い空のこと、今でも鮮明に思い出せる。内に刃を向けてする頷きは、夕立を飲み込むようにひたすらに感情を殺していて、血液が脳みそ付近で停止し落下する。今は、言葉が漂っているから寂しいとわかる。現実にピントが合う。初めから簡単に届いたらつまりません、でもできるだけ近道でほのめく死を見てしまうだろう?それ以外の解決策がないから死を待ち伏せる僕ら。死ねば正しくなれると思っていますか、と言う問いには返事ができないままに化石のように生きている。恥ずかしげもない様が平凡だ。
メッキが剥がれていく街と僕には見向きもせず、瞬きの分だけめくれる季節を愛しています。僕のスカートは年々長くなり風も響かないほどに重くなるゆえに好き。「ここはきっと楽園だね」「終わりのない」「始まりもない」とどまり続けるから美しい場所。時を靡かせて、幻を見るように目を瞑る。僕は、僕に一番近づきたくて、僕になりたくて、僕をどうにかするためにまやかした。明日に向かって死を呟けどそこは小さく自転している。まだ、まだ、まだ生きてるよを繰り返す。僕らはそれぞれの震える足で、あまりにも長すぎる間立ち尽くすしかないのだと知った、頃には全ていつも通りで、そこには無力さを許すための時間があるに過ぎないと思う。

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