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#6 こどくグータン

浮気とシュレーディンガーの猫

「浮気も一生隠し通すのなら浮気じゃない」
この理論、諸君はどう思うだろうか。以前友人と食事に行った時に肉寿司を頬張りながらこんな話になった。私はこの理論に常々疑問符が浮かび続けていた人間の1人だ。自分が認知していないことは、行われていないことと同じ。それは同じか?
肉寿司を飲み込みながら私はひとつの思考実験を思い出していた。「シュレーディンガーの猫」である。これは1935年に物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが発表した思考実験であり、物理学的実在の量子力学的記述が不完全であるとするために用いた思考実験である。後半の文章は難解なので私も説明できる自信はないが、浮気の話をするためにここではできるだけ分かりやすく話そうと思う。※なお以下の解説は読み飛ばしても良い。思考実験は以下を読まなくても可能である。

量子力学界には「観察者効果」というものがあるらしい。例えば素粒子を思い浮かべてほしい。私の様に量子力学の知識がないものは「めっちゃくちゃ小さい何か」くらいでももはや良いであろう。その素粒子は何もない状態では「波動」として霧のように漂っているだけであり、誰かに観察されてはじめて物質となると言われている。観察することが影響を与え、ミクロの物質の状態を変えるのである。まぁ詳しいことや現在の学術的に正しいことをここで深く追求して述べるのはやめておこう。量子力学の世界では観察者の存在の有無によって、結果が変ってしまうということだけ留めて置いてほしい。あくまで私は浮気の話をしたいだけなのだから。

というわけで、ここで少し思考実験をしてみようではないか。
①不透明な箱を用意する
②その箱に猫を入れる
②同じ箱に放射線を発生させる装置がある(放射線がいつ発生するかは予測不能)
③放射線が発生した場合、必ず同じ箱に入っている検知器が作動する
④検知器が放射線を検知した場合、検知器に接続されているハンマーが作動し、青酸カリが入った瓶が割れ、猫は死に至る


「さて1時間後猫はどうなっているか」


放射線は素粒子の塊だ。上述したように素粒子は観察されるまで霧のようにもやもやと漂っているだけである。その状態は検知器に伝えられ、検知器は放射線を検知しているし、検知していない。そしてそれによって青酸カリの入った瓶は割れているし、割れていない。では猫は…?
勿論、生きているし、死んでいる。この状態が観測されるまで重なり合っているというわけだ。そして人間が箱を開けて観察者として介入することで、猫は生きている状態か、死んでいる状態かを確定させ、元の状況から形を変える。

はい、やっと話を戻す。ここからはネット掲示板くらいまで知能を下げて見ていただかないと困る。量子力学への知識が深い者は一切の希望を捨てよ。
肉寿司を食べ終わった私は「浮気もシュレーディンガーの猫と同じではないか?」という思考回路になっていたわけだ。浮気を観測するまで、恋人は浮気している状態と、していない状態が重なり合っている。
ただ、問題は恋人は箱の中の猫とは違い、箱を開けたからといって、白か黒かを判断することはできない。私たちが恋人の観測ができるのは浮気を観察したその時だけだ。「浮気していない」ことの証明は不可能なのだから。これこそ「悪魔の証明」というやつである。浮気していないことを証明できないなら浮気している、という理論。つまり恋人のいる皆様は常に恋人に浮気されていると言い換えることもできる(暴論感)。
「浮気も一生隠し通すのなら浮気じゃない」
この検証へと移る。ここまで考え詰めると、これはもう間違った論説であることがお分かりいただけるだろう。我々は常に浮気されているし、されていないのだ。
この重なり合った不透明な状態の中で、自分に都合の良い状況を選択することが、いわばすなわち「相手を信じる」ということになるのではないだろうか。



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