「スープの中の蠅―ある文学全集の一冊のための解説」 中村 真一郎
【つまり、二十世紀の前半の文学の歴史は、「純文学」と「推理小説」との境界線を取りはらう道を歩いてきた】
〈週刊文春〉のミステリーレヴューを読もうとコンビニで立ち読みしていたら、書評欄で綿谷りさが麻耶雄嵩の『さよなら神様』を取り上げていて、驚いた記憶がある。
私はなにもそれを基にして、「ミステリが純文学に近づいた!」とか「麻耶雄嵩が文学に認められた!」などと騒ぐつもりはない。私が姦しく騒がずとも、推理小説は文学と共に歩んできたからである。中村真一郎は『20世紀の文学』に寄