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【推理小説批評大全・総解説】

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推理小説の批評的散文70編を厳選し、それぞれに解題を付した。2017年12月1日~2018年2月8日まで1日1編ずつ公開予定。
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2017年12月の記事一覧

「アーチャーが私をつくった ロス・マクドナルド」 各務  三郎

【両評者のあいだに、レトリックの差がありすぎることにおどろき、さらに小説を読みこなす力倆…

松井和翠
6年前

『パパイラスの舟 海外ミステリ随想』(抄)  小鷹  信光

【しかし〝英雄〟は私の中で死滅したのです】  〈世界ミステリ全集〉の第五巻〈レイモンド・…

松井和翠
6年前

『夜間飛行 ミステリについての独断と偏見』(抄)  青木  雨彦

【わたしは、情事(アフェア)を失った代わりに、何かを得たのである】  例によって例の如く『…

松井和翠
6年前

「法治国家と推理小説」 中島  河太郎

【今後、日本の民主化が進めば進むほど、推理小説は知的な読物として、もっともっと国民大衆に…

松井和翠
6年前

「風を視る」(抄) 高木  彬光

【生来天邪鬼な彼としては―この天邪鬼という要素は推理小説の作家には絶対に欠くべからざる才…

松井和翠
6年前

「乱歩妖説」 山田  風太郎

【それは乱歩先生のおつむのことである】  江戸川乱歩は純愛の作家である。「芋虫」にせよ、…

松井和翠
6年前
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「スープの中の蠅―ある文学全集の一冊のための解説」  中村  真一郎

【つまり、二十世紀の前半の文学の歴史は、「純文学」と「推理小説」との境界線を取りはらう道を歩いてきた】  〈週刊文春〉のミステリーレヴューを読もうとコンビニで立ち読みしていたら、書評欄で綿谷りさが麻耶雄嵩の『さよなら神様』を取り上げていて、驚いた記憶がある。  私はなにもそれを基にして、「ミステリが純文学に近づいた!」とか「麻耶雄嵩が文学に認められた!」などと騒ぐつもりはない。私が姦しく騒がずとも、推理小説は文学と共に歩んできたからである。中村真一郎は『20世紀の文学』に寄

「新本格推理小説に寄せて」  松本  清張

【今や推理小説は本来の性格にかえらなければならない。社会派、風俗派はその得た場所に独立す…

松井和翠
6年前

『極楽の鬼』(抄)  石川  喬司

【しかしそうした困難を克服して(…)、ある程度の共通項をとりだして客観的な採点の物差を作成…

松井和翠
6年前

『ミステリ百科事典』(抄)  間 羊太郎

【インディアンの拷問の一つに、沙漠に仰向かせたまま四肢を地面に固定し、両瞼を切り取って、…

松井和翠
6年前
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「『墫』私見」 鮎川  哲也

【クロフツは机に向って思考することをしなくてはならない】  『鮎川哲也は推理小説しか書か…

松井和翠
6年前

「ドグラ・マグラの世界」 鶴見  俊輔

【主人公のおかれた状況は、コミュニケーションの網目の発達した二十世紀で各個人が社会にしっ…

松井和翠
6年前

「密室論」 紀田  順一郎

【密室に夕暮れが訪れた。カンヌキのかかった厚い扉をこじあけようとする者は、すでにいない】…

松井和翠
6年前

「松本清張批判」 大岡  昇平

【松本や水上の感情は、平野の言う通り「みかえしてやろう」もしくは「仕返しをしてやろう」というほどの下世話なものである】  文壇屈指の論争家・大岡昇平の面目躍如たるこの批判文に対し、肯否の何れに立つか、我々は安易に、また性急に判断してはならない。  そのためには、まず、大岡が流行作家への嫉妬で片手間な罵倒を繰り広げているわけではないことを読み手は諒解しなければならない。片手間で批判をしたい者が、如何に《胆石の切開手術》で入院中とはいえ《初期の作品から系統的にまとめられている》