コモディティ(金)の基礎知識
Q1. 金の産出量が多い国は?
中国、ロシア、オーストラリアが金の産出量年間300トンを超える世界3大産出国(2021年時点)。1960~70年代には南アフリカが1,000トンを超える年もあるなど、圧倒的だったが、現在は100トン前後に減少した。
日本では戦国時代から江戸時代に佐渡や土肥などの鉱山から大量の金が掘り出されたが、残念ながらほぼすべて掘りつくされている。ちなみに唯一の国内金鉱山(鹿児島県・菱刈鉱山)からは年間約6トンの金が掘り出されているが、世界的に見ると微々たる量である。
Q2. 金の供給状況は?
2021年の金の総供給量は約4,710トン。およそ75%が金鉱山から、25%がリサイクルからだった。金鉱山から新たに掘り出される金は「新産金」と呼ばれる。一方、リサイクルによる供給は「2次供給」とも呼ばれる。精錬・加工・販売された金製品を回収し、これを再び熔解・ 製錬し直した金が、市場に再供給されている。金のリサイクル供給の割合が比較的多いのには、金の総量が限られている、という事情がある。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、人類がこれまでに掘り出した金の総量はおよそ19万トン。現時点で、今後採掘可能な金の総量は、およそ5.4万トンとされている。昨年、鉱山から掘り出された金の量は約3,500トンだったため、このペースだと15年ほどで地球上の金は掘りつくされてしまう計算だ。
金は今のところ代替できる物質がなく、総量も限られている。つまり、金鉱山の産出量やリサイクルによる供給が一時的に増えたり減ったりしても、価格への影響は少なく、価値が下がりにくい面があると言える。
Q3. 金の需要は?
供給の影響が少ない分、金価格の値動きをつかむには、需要の要因を知ることが重要となってくる。金の需要には、大きく分けて「実用品需要」と「安全資産需要」がある。
「実用品需要」とは、宝飾品や工業製品に使うための需要。金のネックレスやスマホの部品用など、金そのものが必要とされているものである。この「実用品需要」は、景気がよく、消費がさかんな時に増える傾向あり。
一方、「安全資産需要」は、インフレヘッジや景気後退、地政学リスクの悪化などに備えた買い、公的部門(IMFや各国中央銀行)による金準備など、その時々の環境をふまえ、相対的に金保有が有利という状況で発生してくる需要である。
22年中、中央銀行が購入した金は世界の鉱山生産量のほぼ3分の1にあたる1136トンに上った。米国側や西側諸国が米ドルを経済的武器にしたことによって、ロシア、中国等でドル離れの動きが活発となったのだ。中銀が外貨準備を米ドル一極集中から金などへ移す動きが見られている。
Q4. なぜ金は通貨として使われたのか?
金は自然界で希少な金属であり、酸や酸化に対して耐性があり、長期間にわたって劣化しにくい特性を持っている。また金は国境を越えて共通の価値を持つため、異なる地域や文化でも受け入れられる通貨として適していた。金の重さや品質は比較的容易に確認できるため、信頼性が高かったと言える。
Q5. 金に投資する方法は?
金現物、ETF、投資信託、金鉱業界に対する投資、金先物取引、金価格指数への投資など様々ある。
金現物は盗難リスクがつきものであるが、貴金属商などに保管してもらうこともできる。金現物投資では、毎月一定額で積み立てる方法もある。
金鉱山株の例としては、金の採掘と産出で世界最大手の米ニューモント・コーポレーション($NEM)やカナダの金鉱山大手バリック・ゴールド($GOLD)がニューヨーク証券取引所に上場している。ただし金鉱山株は、必ずしも金価格とは連動しないこともしばしばある。
最後に…
人類と金の付き合いは500年に及ぶ。その歴史を考えてもある日突然、金の価値がゼロになる可能性は低いだろう。長期的な目で、ポートフォリオの一部として、組み込んでおきたい。
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