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メラノーマ患者でのICI rechallenge, retreatmentの概念について

Eur J Cancer 2021; 155. 268-280

固形がんの化学療法を行っていて、Nivo PD後にPembro投与ってどうなんだろうと思ったことがある。調べていたら上記の総説が出てきたのでちょっと見てみた。


"Retreatment"とは術後補助化学療法終了後の再発に、同系統の薬剤を投与することと定義され、選択された患者におけるPD-1治療後のICIの効果を見ている。PD-1阻害薬単剤によるadjuvant中の再発に対して、PD-1単剤を投与することはmelanoma患者では効果がないため、switch or escalationによる戦略が望まれる。これら患者に対してCTLA-4阻害薬(単剤 or PD-1阻害薬との併用)については臨床的有用性が示唆されている。

"Rechallenge"とは、転移再発治療において、前治療lineで効果があったがPDとなった患者に対して、同系統の薬剤を投与することと定義される。


KEYNOTE-054試験ではadjuvant Pembro投与終了後6か月以降に再発した47例の内、20例にPembro retreatmentが行われた。その内奏効を評価可能だった9例のデータではCR, SD, PDが各々1, 3, 5例であり、median PFSは4.1ヵ月であったと報告されている。

retroの報告でadjuvant治療後に再発した20例の内、2/5例でPD-1抗体単剤で奏効、2/5例でIpilimumab(±PD-1)に奏効、9/10例でBRAF/MEKiに奏効したとされている。単剤で奏効した2例は1年間のadjuvantを完遂した患者であり、各々完遂後5.6ヵ月、10.3ヵ月時点で再発していた。
一方adjuvant中に再発した患者では0/6例がPD-1単剤に奏効, 8/33例がIpi (±PD-1)に奏効, 18/23がBRAF/MEKiに奏効したと報告されている。
このことからPD-1単剤 retreatmentの対象は、adjuvant完遂した一部の患者に限られ、通常はIpi(単独or併用)あるいはBRAF/MEKiを使用すべきと結論付けられている。

Rechallengeについての報告。KEYNOTE-006で2年間Pembroを投与しCR/PR/SDでprotocol治療一旦終了となった患者15名に、PD確認後Pembroを再投与したところ3例がCR, 4例がPR, 5例がSDの結果であった。
PD-1抗体抵抗性となった患者にPembro+Ipi併用を行った(escalation)データではORR 29%, median PFS 5.0ヵ月, OS 24.7ヵ月であった。


本当はもっと色々書いてあったんだけど、端折ってしまった。
自分としてはPD-1抗体使用後の、PD-1抗体の効果(例えばMSI-high癌に対してNivo→Pembroとか)について知りたかったが、本文献ではPD-1抗体後のCTLA-4抗体(つまりICIというくくりでの再導入)を主に論じていた。ICIだけど作用機序が違えば奏効しそうな気がするが、結果としてもその通りでPD-1抗体→CTLA-4抗体は効果があるが、PD-1→PD-1は効果がないとの結論であった。

本論文のTable 4にはrechallengeの症例報告データがまとめられており、CR or PR後長期の休薬を挟んで奏効しているケースがあるようだが、これらは本当にrechallengeなのか疑問。つまりPDになったのが治療中ではなく、2年投与し一旦休薬した後であれば、そもそも感受性が失われていない可能性が高いので厳密にはrechallengeとは言えないのではと思う。固形がんでは治療中のPDがほとんどなので、そういうケースにrechallengeの可能性があるのかどうかが知りかったところ。

その他、データを見て言えることは初回でSDだったら、再導入でPR以上になる事はなさそうだということ。やはりrechallengeは初回奏効していることが必要条件のようだ。(1例だけNivo+IpiでSD後、21.5ヵ月のintervalを経て再導入しCRになったと記載があるが孫文献までは当たっていないので詳細不明)

結論としては同タイプのICIを再導入するメリットはなさそうだということのようだ。

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