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Stage II-IIIA NSCLC術後gefitinib vs CDDP+VNR (IMPACT, WJOG6410L試験)

J Clin Oncol. 2022;40(3):231-241.

先日ADAURA試験の記事を載せた際にgefitinibの事をちらっと書いたんだけど、丁度その試験の論文があったので併せて確認。

対象は根治切除の得られたStage II-IIIのNSCLC患者でEGFR exon 19 deletionもしくはL858Rを認めた患者。Adjuvant gefitinib (250mg/day)を2年間 vs 標準治療である3w毎 CDDP+VNRを4コース施行。primary endpointはDFS。secondary endpointはOS, 安全性, 再発形式, AE。


 結果

2011-2015年に234例の患者が日本の25施設から登録。各々116例の患者がITT解析に組み入れられた。約60%が男性, 年齢中央値は64歳, EGFR del 19が約55%だった。65%の患者がStage IIIだった。
治療強度については約6割の患者が2年のgefitinib内服を完遂。16%が再発中止, 22%がAE or 患者希望中止。CDDP+VNR完遂割合は78%であった。1%が再発, 21%がAE or 患者希望中止。median follow upは70ヵ月。

median DFSはgef. vs CDDP/VNR = 35.9m vs 25.1m, HR 0.92, P=0.63 (K-M曲線は4年時点でcrossしている。下図参照)  gefitinib 2年完遂した患者のDFSは29.8mであった。5y-DFSは31.8% vs 34.1%。患者背景と明らかな交互作用は見いだせず。

median OSは両群未到達で, 5年生存割合は gef. 78% vs CDDP/VNR 74.8%, HR 1.03, P= 0.89だった。subgroupではNは少ない(46)が、70歳以上ではgefitinibが良い傾向にあった。HR 0.589 (95%CI 0.101-0.981)

AEは概ね既報通り。ILDは認めなかった。再発形式については両群ほぼ差は認めなかったが、脳転移再発はgefitinib群でやや多かった。(P=0.07) 再発後の治療についてはCDDP/VNR群でEGFR-TKI使用割合が多かった。

DFS と OSのKaplan-Meier曲線

他のAdjuvant EGFR-TKI vs chemoの試験と比べて本試験で何故DFSの有意差が出なかったかについてDiscussionでは、follow upの長さ、評価者のmaskingなどが挙げられている。本試験でも確かに術後4年まではgefitinibが上を行っており、そこで切れば有意差が出たであろうことは予想できる。
OSについては試験開始時代より全体的に良くなっており、また他の国の再発後の医療状況と比べ、本邦ではより差がつきにくかったと予想される。

筆者らはDiscussionの末尾でADAURAは術後chemo+EGFR-TKIの試験でありtoxic newの治療であること。それと比較し本試験はless toxicな治療であり、(非劣性は証明できていないが) CDDP/VNRが選択できない患者に対するoptionとしても考えられるかもと述べているが、まあそういう捉え方も出来るかなあと思った。

既に日本におけるStage II-III肺がんのadjuvantの標準はOsimertinibだが、この前段階としてCDDP doubletをやるべきかやらなくて良いかという点についてはまだはっきりと結論は出ていない。ただ、本試験のK-M曲線が4年DFSで交差していることを考えると、もしかすると化学療法でrescueされるべき対象が抜け落ちたことでこの結果につながったかもという想像は出来る。
一方で70歳以上の高齢者ではOSにgenifitib群で交互作用が出ていることから、この対象にはそれ以上にCDDP+VNRのtoxicityの影響が出ている可能性はある。

全てはADAURA試験のOS結果待ちだが、この試験の結果を実臨床に応用するとすれば基本的には全例CDDP+VNRの術後補助はやった方が良いかもしれないこと、ただし高齢者では省略出来るかも知れないことは推論として述べてもいいのかなと感じた。


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