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切除不能悪性胸膜中皮腫の一次治療におけるNivo+Ipi療法(CheckMate-743)

Lancet. 2021;397(10272):375-386.

悪性胸膜中皮腫(Malignant pleural mesothelioma: MPM)は呼吸器内科医でなければ年に1~2例診るかどうかの症例だが、ついこの間MPMの方が私の外来に来たので、これから治療を行うにあたって論文を確認しておこうと思った。

CheckMate-743試験では、切除不能MPM 605例に対し化学療法(CDDP+PEM or CBDCA+PEM q3w 6コースまで)を対照群として、Nivolumab+Ipilimumab (Nivo 3mg/kg q2w + Ipi 1mg/kg q6w)を治療群として1対1に割り当て。Nivo+Ipiは最長2年までの投与した。Primary endpointはOS。
結果として、中間解析時点でmOS 18.1m vs. 14.1m  (HR 0.74)でNivo+Ipi群が有意に予後延長しておりpositive studyと判断され終了。いわゆる予後良好な上皮型より、予後の悪い非上皮型(肉腫型, 二相型)で効果が高かった。
・ 上皮型(全体の75%) mOS 18.7m vs 16.5m (HR 0.86) 
・ 非上皮型(全体の25%) mOS 18.1m vs 8.8m (HR 0.46)
PFSも上皮型では途中でKaplan-Meier曲線が交差しているが、非上皮型ではNivo+Ipi群が常に上を行っている結果。奏効割合はORR 40% vs 43%, DCR 77% vs 85%でむしろchemo群で良好な傾向。(Time To Responseは2.7m vs 2.5mでほぼ同じ)
後治療への移行割合はchemo群で41% (そのうちのほぼ全例がICIを後治療として受けている), Nivo+Ipi群 44%であった。Subgroup解析においても概ねNivo+Ipi favorableだが75歳以上, PD-L1 TPS<1% (全体の約30%)は他のsubgroupと比較し2群の差が小さかった。

irAEについてはIpilimumabが少ないせいかそれほど割合は多くなく、Any Grade ≥3で30%, 内訳として下痢/腸炎・リパーゼ/アミラーゼ上昇などが多かった。irAEで治療中止に至った割合は15%であった。(chemo群では7%)

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結果的にはひとまずMPMの1st lineはNivo+Ipiでよさそうな気がするが、上皮型については判断が分かれるところかもしれない。何故なら恐らく日本では本試験より後治療割合が高くなることが予想されるため、K-M曲線の後半の開きが再現されない可能性がある。
となるとAE profileやリスクに応じてchemoでも悪くないという判断もあろうかと考えるが、私としてはAEもプラチナ+PEMよりNivo+Ipiの方が全体的に軽いんじゃないかという感覚があるので、やっぱりICIを先に使ってしまうと思う。chemo+bevacizumabが日本でも使えれば、話が少し複雑になるのでより議論が進むかもしれない?(開発状況が把握できていないので何とも言えないが) 


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