BRAFV600E変異の希少がんに対するダブラフェニブとトラメチニブの併用:第2相ROAR試験
BRAF変異陽性の固形がんにDabrafenib (タフィンラー) + Trametinib (メキニスト)療法が保険承認されたと聞いて、元文献を確認。本試験には血液がんも含まれているが、私は現在血液がんを担当していないのでその部分は割愛させていただく。
ROAR試験はBRAF V600E変異を持つ腫瘍に対するDabrafenib + Trametinib併用療法のバスケット試験。本試験には甲状腺未分化がん、胆道がん、GIST、小腸腺がん、低/高悪性度グリオーマ(LGG/HGG)、Hairy cell白血病、多発性骨髄腫のコホートが含まれていた。Dabrafenib (150mg, 1日2回), Trametinib (2mg, 1日1回)でPD or AE中止まで継続。固形がんにおける主要評価項目はORR。副次評価項目はDuration of response (DoR: CR, PR例のみ), PFS, OSであった。
結果
固形がんのORR, DoR, PFS, OSは下記の通りであった。
(NR: not reached, NE: not evaluated)
甲状腺未分化がん (56%, 14.4m, 6.7m, 14.5m)
胆道がん (53%, 8.9m, 9.0m, 13.5m)
GIST (0%, NR, NR, NR )
小腸腺がん (67%, 7.7m, NE, 21.8m)
低悪性度グリオーマ (54%, NR, 9.5m, NE )
高悪性度グリオーマ (33%, 31.2m, 5,5m, 17.6m)
主な有害事象は発熱 (40.8%), 疲労 (25.7%), 悪寒 (25.7%), 悪心 (23.8%), 発疹(20.4%)であった。
全てのがん種のデータがあるというわけではないものの、結腸直腸がんを除くBRAF V600E変異がんに対して本治療は優れた奏効割合をしめしている。本文中からBRAF V600E変異の頻度は黒色腫 (40~70%), 甲状腺乳頭癌 (45%), 卵巣癌 (35%), 胆管癌 (5~7%), 非小細胞肺癌 (1-3%), その他の固形がん (1-3%)などと記載されている。引用文献などをみると卵巣がんは組織型がlow grade serous だと頻度が高いようだ。(それ以外だと2%などと書いてある論文もある)。上のORR表には載っていないが過去に行われたNCI-MATCH試験のデータでは卵巣がんも良い奏効を示したことが報告されている。
私はBRAF V600Eというと大腸がんでしか診療をしたことがないので、一度は効くもののPFSはあまり稼げないという印象があったが、本試験の結果を見るとDoRも長期に維持できている様子。どうやら大腸がんのようにBRAF V600Eがあるのに本併用療法が奏功しない腫瘍はむしろ"例外"で、多くのがん種においてRAF+MEK阻害は効果を示すことが期待されており、本邦においても・標準的な治療が困難なBRAF 遺伝子変異を有する進行・再発の固形腫瘍(結腸・直腸癌を除く)という適応が通ったようだ。
徐々にprecision medicineが臨床応用され治療選択肢が増えているので、今後臨床医としてはがんゲノム検査を早期に、あるいは複数回行える体制を期待したい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?