見出し画像

非小細胞肺がん一次治療としてのオシメルチニブ+化学療法併用 (FLAURA 2試験)

N Engl J Med 2023;389:1935-48.

EGFR TKIに化学療法を併用するレジメンは、日本で行われたNEJ-009試験(gefitinib+CDDP+PEM vs gefitinib)では、最終的なOS解析では有意差は出なかったものの併用療法が良い傾向。インドの単施設で行われたP3ではPFS, OSともに有意に良好であったと報告されている。

NEJ-009試験のPFS2とOS

EGFR TKI単独で治療を行った患者の内1/3くらいは二次治療に行けない現状があり、肺がんを専門でやっている呼吸器内科の先生方には「1次治療はオシメルチニブ単独で十分と言えるのか」というCQがあるようだ。(biomarkerに恵まれない消化器がん領域から見れば羨ましい話であるが)本試験はそのようなCQから生まれた試験の一つである。
また最近は一次治療にオシメルチニブではなくRAM+erlotinib→T790M変異が出たらオシメルチニブのシークエンスが良いのではないか(Relay試験)という報告もあり、オシメルチニブは安定の標準療法とはいえsubgroupによってはまだまだ個別化の余地はありそうだ。


対象患者はchemo naiveでExon 19 delもしくはL858Rが確認されたNSCLC患者。脳転移は無症状であれば可とされた。患者はオシメルチニブ±3週毎のPEM+CDDP 4cycle→PEM maintenanceに1:1に割付られた。主要評価項目はPFS, 副次的評価項目はOS, ORR, Duration of Response, DCR, Depth of response, 2nd-PFS (ランダム化~2次治療後のPD or 死亡までの期間), 安全性。(非盲検P3のため中央判定を併用)

 結果

2020/6~2021/12の間に557人の患者が集積され、併用群279例, 単剤群 278例に割付された。患者背景は年齢中央値61歳, 女性, アジア人, Exon 19 del が各々6割。脳転移(+)が4割, 肝転移(+)が2割であった。
data cut off時で約5割が治療継続中であり、残りの患者の治療中止理由はPDが併用25% vs 単剤43%, AE 11% vs 6%だった。観察期間中央値・併用19.5m vs 単剤16.5mの期間で, mPFSは25.5m vs 16.7m (HR 0.62, P<0.001), 24m-PFS割合は57% vs 41%。Exon 19 delでは27.9m vs 19.4m (HR 0.6), L858Rでは24.7m vs 13.9m (HR 0.63)であった。脳転移陽性例においては24.9m vs 13.8m (HR 0.47), 陰性例は27.6m vs 21.0m (HR 0.75)だった。

脳転移陽性 or 陰性におけるPFS

2nd-PFSはNR vs NRでHR 0.7であった。ORRは83% vs 76% (中央判定92% vs 83%)。Duration of responseは24.0m vs 15.3m。12m-OSは89% vs 92%, 24m-OSは79% vs 73%。AE≥G3割合は64% vs 27%で併用群に多かった。(主に消化器・血液毒性に差) IPは3% vs 4%だった。治療中止に至ったAEは11% vs 6%。オシメルチニブのRDIは95% vs 98%で両群同様だった。

2nd-PFSとOS

discussionによると本治療の優位性はCDDP+PEMの相加効果によると書かれている。とすると本治療の利点は"一次治療に上乗せすることで、2次治療に移行出来ない患者をrescue出来る"ことという理解になる。(まさにこれが冒頭のCQの解決策の一つで、本試験の意義だが)つまり全患者が2次治療に進めるなら理論的には差は出ない可能性がある。
Supplementeryを読むと、オシメルチニブ単剤群で2次治療を行わなかった患者は全体の20% (1次治療中止例の約4割)と記載されている。どういう患者が2次治療をしなかったかまでの記載はないが、PFSから脳転移例やL858Rなど予後の悪い患者が後治療に移行できていない可能性が考えられる。多少PSが落ちていてもオシメルチニブなら何とか投与できるが、CDDP+PEMはちょっと厳しいので、そういう患者を1次治療でrescueすることが本治療のbenefitと言えるのかもしれない。

そういう目で冒頭のNEJ-009試験の結果を見ると、OSに有意差がつかなかった本試験では単剤群の9割が2次治療に移行出来ており(さすが日本の試験)、かつOSのsubgroupでも脳転移の有無で点推定値の相違は認められていない。つまりこれもEGFR TKI + chemoが相加効果に過ぎないことを示す傍証とも考えられる。(Discussionではオシメルチニブが後治療として登場したため前治療のPFSがOSに反映されていないと考察されているが)

NEJ-009試験における後治療への移行状況
NEJ-009試験のOSのsubgroup解析

まだOSがimmatureなので結論は出せないが、個人的な解釈としては1次治療が失敗したら2次治療に行けなくなりそうな症例に対して、PSと臓器機能が許せばEGFR TKI+chemoは選択肢の一つになりうるであろうと考えた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?