たった数秒を延長することの辛さも一日が一生のように感じる苦痛も経験せずに済むのならきっとその方が幸福な人生であったのだろう。ただそれを経験してしまった今を生きている者だけが手にすることができるものだってあるはずなのだ。それを使いこなすことは容易ではないだろうがその先があるのなら…
自分自身の中の大切な何かを壊されぬよう守り続けることがどれだけ困難であるか。それでいて他人と円滑な関係を築くふりを続けることなど無限に続く最難関の試練でしかない。もしもどちらか一方を優先せざるを得ない状況に置かれたとしても犠牲にした一方に囚われ過ぎることなく生きていられたなら…。
もしあの時選択を見誤ってたとしても自身の選んだ道であったのならきっと納得できる人生となっていたのだと思う。後悔したとしてもその先で自身の中での正解のようなものは見つけられていたのではないかと思うのだ。多数派の選択をし続けることだけが自分自身の心を満たすことに繋がるとは思えない。
帰る場所ではいつでも快適な生活が保障されていて、その上で外では多くの困難を乗り越えるべく日々戦い、寿命を全うする。内も外もない環境で、眠っている時でさえ戦いを強いられる世界でぼろぼろになりながら最後を迎える。環境も価値観もそれぞれ違う中で、これらを簡単に比較対象とできるだろうか。
蜘蛛の糸のような一本の線で繋がった世界で生きている。いつでも引き返せるようにそれでいてその糸に絡まってしまわないように細心の注意を払って。頑丈なようで脆いこの線はいつだって好きな時に引きちぎることができるのだ。でもきっと今じゃない。できるなら一番美しい景色が見えた先でそうしたい。
それぞれの生き方をそれぞれが尊重しながら生きていくことが私達にとっては当たり前のことであったのだがどうやらまだそうではなかったらしい。 理想主義だと言われても構わないが世間と自身が違うことは違うとはっきり示したい。 いつまでも否定され続けることを容認したふりをして収めたくはない。
悲しみを一人で背負わないで。 多くの人は自分が傷つく前に人を傷つけて生きている。 自分さえよければいいなどと思う人間がこの世の中に存在することすら知らなかっただろう。 罪悪感を抱えたままで構わないからその悲しみを少しでも取り去る方法があるのならそのやり方を実行してしまってもいい。
誰かを守るための言葉が相手を酷く傷つける言葉に変わっていたとしても、それでも譲れないものはあるだろう。 相手の未来をどの角度から想像してみても、私からは今以上に傷つく未来しか見えなかった。 それでも笑って見送ることができるほど、私は強くはなれない。 全ての心を守れる強さが欲しい。
いつでも好きな方を選べばいい。
近寄らないよう注意を促すことができても、もうすでに近くにきてしまったものを蹴散らすことはできなかった。 いつも同じ結末、激痛に耐えながら癒着した箇所を引き剥がすしか手段を知らない。 どうしてこうなった、が脳裏をよぎる。 本来の願いや祈りはそうじゃなかったはずなのだ。
選ばなかった方の私がここにはたくさん溢れている。選んだ方の私が生きている世界には、選ばなかった方の私のような人間は一人もいなくてとても苦しいけれど、ここにはたくさん存在する。そのことが私にとってはとても救いだ。どちらを選んでいても私の想像通り、正しい世界であることを示してくれる。
たとえ皆が喉から手が出るほど欲しいものを手に入れたとしても、今ある取り除きたい塊は一生消えはしない。 替えが利く幸福なら、所詮その程度のものだったのだろう。 これを捻くれ者と罵るのなら、私は一生純粋な捻くれ者でいよう。
一つずつ自力で壁を壊していく。どこまでいけば終わりかもわからない壁をただひたすら壊しては進んでいる。本当にまれにだが視界が良好な開けた景色が見えることがある。次の壁まで距離がある時にのみ見える景色でこんな美しい場所が見えるのはこの世界でただ一人だけだと思うととても嬉しく思うのだ。
理想通りの人生など一つもないのだから、せめて声に出して呟くくらい許してもらえないだろうか。それを聞いて、そんな甘い世界などないと返答するのではなく、そんな甘い世界などないことは理解した上で、たった数秒だけの美しい世界を見ていたい。現実と理想が身近な人とちっとも合わない人と共に…。
いつか付が回ってくることくらい、そんなことは充分に理解した上で今まで進んできたつもりでいる。 きっとこれからもそうで、いつでも最悪の想定はできている。 その想定を超えてきたものは今の所見たことはない。 幸福も不幸も自分自身の心にしか存在しないことを今一度理解しなければならない。
醜い人間 自分自身をそんなふうに思ったとしても、自分自身の目に映ってきた醜い人間のようにならなければそれでよいのではないだろうか。 美しいものだけを目に映すことはこの世界では難しいことかもしれないけれど、なるだけあなたの視界がそんなものに囲まれた世界でありますようにと思っている。