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立派さはどこにあるのかを『RAVE』を読んで考えた

こんばんは、小山内です。

最近、小学生の頃にハマった『RAVE(レイヴ)』という漫画を一気に読み返しました。それで、「一人前になる」とか「立派になる」とはどういうことかについて考えました。

「姉ちゃんが言ってた」と言わなくなった主人公

RAVEは、初代レイヴマスターから聖石レイヴを受け継ぎ、2代目レイヴマスターとなった少年ハル・グローリーとその仲間の冒険活劇。

主人公のハルという少年は純粋で心優しく、腕力はピカイチという少年漫画のお手本のような主人公。悪のために拳を振るいますが、降参した相手にトドメを刺すことはありません。こんなに「いい人」を地で行っている主人公は少年漫画で彼ぐらいだと思います。

小学生の頃は、RAVEのストーリー展開に心動かされたのですが、この歳になってもう一度読み返してみると、主人公ハルの行動には見えない内面の成長に深く感動しました。

成長と言っても、ハルは登場時の1巻から「正義感」と強敵を倒していける「ポテンシャル」が十分に備わっていました。だから、ものすごい悪人が善人になったとか、ものすごい凡才が急に天才になったというわけではないんです。

そんなハルですが、ことあるごとに「〜って姉ちゃんが言ってた」と物語の中で言います。ハルのお姉さんは美人で器量がよく明るい女性です。田舎町で育ったハルにとっては、姉ちゃんは彼の親であり、また先生でもあったのだと思います。だからハルの正義や人としての立派さは「姉ちゃんが言ってたこと」に全て詰まっていました。

しかし、物語の中盤くらいからハルは登場時からの口癖である「姉ちゃんが言ってた」をどんどん言わなくなります。

後半に進むにつれ、物語はより複雑にそして残酷になるのですが、ハルは答えを出すことに悩んだり、足掻いたりして苦しみます。もうハルは「姉ちゃんが言ってた」を、彼が拳を振るう理由にはしません。私はそんな、悩んだりもがいたりしているハルが、迷いなく拳を振るっていた初期の彼よりもなぜだかずっと頼もしく見えました。

少年から大人へ

どうして物語が進むにつれて、ハルを頼もしく思えたのか。

それは、ハルの自立を感じたからだと思います。ハルの自立とはなにかというと、正しさや立派さの価値判断を「姉ちゃん」ではなく「自分の内側」に求めたことです。

これに気づけたのは、ある漫画を読んだからでした。
2017年、もっとも読まれたであろう漫画『君たちはどう生きるか』。その物語に登場するおじさんが、「人間の立派さ」について、こう言います。

修身で教えられたとおり、正直で、勤勉で、克己心があり、義務には忠実で、公徳は重んじ、人には親切だし、節倹は守るし……という人があったら、それは、たしかに申し分のない人だろう。
(中略)
もしも君が、学校でこう教えられ、世間でもそれが立派なこととして通っているからといって、ただそれだけで、いわれたとおりに行動し、教えられた通りに生きてゆこうとするならば、――コペル君、いいか、――それじゃあ、君はいつまでたっても一人前の人間にはなれないんだ。

子供のうちはそれでいい。しかし、もう君の年になると、それだけじゃあダメなんだ。肝心なことは、世間の眼よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。

物語が進むにつれ、ハルが「姉ちゃんが言ってた」と言わなくなった理由。それは長い旅の中でハル自身が、自分の心で感じたこととその意味を、自分の頭で考えるようになったからだと思います。

姉ちゃんの教えを行動・思考の指針にしていた頃には悩まないようなことも、自分の頭で考えるために悩んだりもがいたりしてしまうハル。その姿に私は、「立派になりたい」「正しくいたい」という彼の心意気を感じ、深く感動しました。

立派さを「姉ちゃん」ではなく「自分の心」に求め、自立していくハル。彼は立派そうに見える人から、立派な人になったのではないかと思います。そしてそれが、少年から大人になるということなんだろう、と。

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