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早稲田卒ニート104日目〜仰ぎ見るは、星空のみにあらず〜

星空は、無限の神秘としてぼくを打ち、自分の立っているこの地球すらも縮小して微塵になっていくような、目もくらむ不安にぼくを陥れるのだった。

(加賀乙彦『小暗い森』)

限り無き拡がりを前にしては、広大なはずの地球さえもが小さなものでしかなくなり、するとその中にある「私」の存在などはより一層、たったこれっぽっちに過ぎまい。空間の問題だけではない。人生も、たかだか80年かそこらの限定的時間が、電光石火のごとく光って散るだけだ。瞬く間に終わる。これはまことに「不安」なことである。

相手が星空でなくとも、こんな「不安」の襲来することがある。圧倒的な他者がそこに立っているのである。そこでは、今まで作り上げてきたとばかり思い込んでいた「自分」という存在が、音を立てて崩れ落ちていくのがわかった。そんな人と人生で何人に出会えるのかはわからないが、とにかく自分の矮小さに気付き、それを心の底から了解させられるような出会いがある。そんな、仰ぎ見るべき「師」を持てる人生ほど、幸せなものはない。自分の小ささを納得できることほど、有り難いことはない。これは、ちっぽけな自己を乗り越えなければならないという点において自己否定でありながら、そのためにまずは己の小ささを受け容れるという、謙虚な自己肯定の出発点でもある。

しかし、対象への素朴な敬意を持つということが、教育からは随分と疎外されているように思われてならない。「畏怖」の復権、果たしてなし得るか。

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