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早稲田卒ニート58日目〜三浦先生の蓄音機会@鳩山会館〜

5/21(日)、三浦先生の蓄音機会が鳩山会館にて開催されました。

三浦先生からお誘いいただき、東京は文京区音羽にあります鳩山会館へ出向いて参りました。鳩山会館は今回が初めてではありません。最初は大学4年生のとき、富山へ移る寸前に三浦先生から「力仕事」の依頼を頂戴し、蓄音機を鳩山会館の2階へと運び上げさせていただいたのであります。こんな経験を積ませていただけるなんて、本当にありがたいことです。

尤も、その時は東京に住んでおりましたし、鳩山会館は、私の住んでいた早稲田から歩いてでも行ける距離であります。しかし現在は仙台におりますし、何より問題はニートであること。即ち無収入、無貯金、借金150万円。どうやって東京までの交通費を捻出するのか!

三浦先生からお誘いを頂戴した時、金を作れるメドは立っていませんでしたが、「どうにかします!」と言ってしまったのでした。三浦先生からは、「どうにもならなかったら俺が貸してやるから」と言っていただきましたが、それでは、もしダメでも貸してもらえると甘えてしまうと思い、強がって自分でどうにかする旨をお伝えいたしました。

今回の鳩山会館の前に、仁さんでの蓄音機会があったのでした。


この会にて、ひと通り蓄音機の円盤を聴き終えた後の酒飲み時間で、私の隣にお座りになられた三浦先生が、「シューベルトは、家の中にあるものを全部売っぱらって、パガニーニのコンサートのチケットを“2枚”買った。2枚。1枚は恋人に。」というお話をなさったのです。

これはいい事を聞いたと思い、「僕も家にあるもの全部売って、仙台ー東京の新幹線チケット“2枚”買います。……、行きと帰りで2枚。」と申し上げました。笑いにこそなりませんでしたが、その日依頼、私は血相変えて家じゅうのものを次々と売り飛ばし、どうにか金を工面しました。パガニーニ・シューベルトは確か1828年のこと。それを三浦先生・早稲田卒ニートの間で、凡そ200年の時を経て反復しようと試みたのであります。

学生の頃から、そして富山へ移ってからも、三浦先生の蓄音機会があるたびに、赤坂なり神保町なり軽井沢なり…。その度に借金をしては馳せ参じておりました。しかも、私など音楽を聴いたところで何もわかりはしません。私には何も聞こえやしないのであります。しかしそれでもいいから、本物を聴くと申しますか、その時その場だけの、たった一回の時空を共有せんとして参るのであります。

いやしかし、鳩山由紀夫さんや、元官僚の方々もいる中に一人だけニートが紛れ込むのは、なかなか後ろめたい思いがなくもないことでありました。

池袋の中華屋

終わった後の打ち上げ、この中華屋はとてつもない店でした。ちょっと表現する言葉が見つかりません。そういうときは、実際に体験することが重要であります。



2年ぶりでしょうか、早稲田へも寄って参りました。

大隈講堂

早稲田へは、浪人時代の受験の日に行ったのが初めてでありました。その時この目で大隈講堂を見た時に起こったあの強烈な鳥肌、今なお、何度見ても最高にカッコいいと思います。

大隈重信像

毎日の様にこの像の前を通る生活が当たり前ではなくなったことの寂しさを覚えます。

大隈重信像の視線の先

いいキャンパスです。早稲田生、そしてOB・OGが、母校愛の強烈な集団になるのも無理はありません。街全体で「早稲田」という文化を作り上げ、そして守り抜こうとしています。

大塚駅前ホテル

浪人生の時に宿泊したのと同じホテルに再び泊まりました。あの時は、部屋の中で独り発狂していたのでした。何せ、早稲田に落ちたら自殺すると決めていたからであります。今なら、受験ごときで何を、と思うことかも知れませんが、ここで人生を変えられなかったら、もうこの先どこでも変えられないだろうと息苦しくあったのであります。

ホテルの下には24時間営業の本屋があります。受験の朝、ここで柳田國男の『遠野物語』を買って、周りが単語帳やら赤本やらを必死に見ている試験会場で読んでおりました。今でも大事に持っております。

それにしても、東京という街は歩くだけで気分が良い。これは私が学生時代を東京で過ごしたからでありますが、学生時代をどこで過ごすかは結構重要なことと思います。この土地を離れてしまったことを、ますます悔やむばかりであります。近いうちに必ず戻ってくる。といっても、今のところ次は横浜になる可能性が最も高いのですが。



こうして昔の足跡を辿るのは、ただ過去を振り返りたいのではないのです。そうではなく、何か自分の原点とでも言うべき場所に立ち戻る必要が今の私にはあるのであります。悩み詰め塞ぎ込んだ人生を受験を通じて塗り替え、三浦先生との出会いによって人生が救済されたこと。それが私の原点に他ならない、そう改めて心得たことと思います。私は、今一度人生を作り直す必要がある。やはり、教育が最も大事な営みだと思います。無論、勉強を教えるという狭い意味ではなく。

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