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早稲田卒ニート131日目〜驕慢を排除し己を虚しくする〜

文字は、同時代において空間を飛びこえることができる乗り物であるだけでなく、さらにはそれを時間軸にそって運行することも可能でした。記録された文字が伝承されれば知識を後世に伝えることができますし、逆に後世の歴史家たちは、古代の遺跡などから発見された文字を読むことによって、過去の時代の詳しい状況を知ることができます。文字こそは、人類の歴史におけるもっとも偉大な発明であったといってよいでしょう。

(阿辻哲次「漢字のはなし」)

小4の教材である。文字の功績というのは、まあ内容としてはありふれた文章だなと思った。

今回は要旨と要約の問題だったので、意味段落ごとに「話題」「音声としての言葉」「文字としての言葉」に分けて板書し解説をした。

音は単なる空気の振動だから、生まれたそばから消えてしまう。けれど、「書く」ってのは元々「引っ掻く」で、そこに「残す」ということだった。それゆえ本が読めるというのは、聞けるはずのなかった人の話を聞ける。図書館という巨大な文化の集まりも極めて重要である。僕らは文字の恩恵に与っている。

そんな話をしたところ、ある生徒が、「この文章が読めるのもそうですね」と言った。「その通り!」と返したところ、また別の生徒がこう言った。

ということは、先生の話も聞いてるだけじゃなくてメモを取れば忘れないようになるってことだ!

文章を読んで何かに気付き学び取ってくれたことが、大変に嬉しいと思った。同時に、ありふれた内容だとして文章を侮っていた自分に、その場で深く恥じ入り反省させられたことである。

何かを知った気になって驕慢にならぬこと。生徒と同じスタート地点から始め、1文字ずつ読み進めていき、何かに気づき学んでいく過程を充実させること。そのためにやはり、読解には、己を虚しくする姿勢が求められる。

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