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「あのとき、私は」#2 川口航さん

早稲田演劇のOBOGに「学生時代、何をしていたか?」をインタビューし、演劇との向き合い方や生き方を探る記事企画。

第2回目のゲストは、劇団森出身の川口航さん。

早稲田に入ったきっかけは、「意外と聞かれたことないですね。あれじゃないですか、賢かったからじゃないですか。」
どうやら演劇が理由ではないらしい。劇作・演出までやった川口さんと演劇との出会いは何だったのだろうか。
「興味は高校の文化祭とかで、やってたのが楽しかったなと思って。青春でしたね。部活はサッカー部、文化祭で演劇やって、そこからおもろかったなあっと思って」サッカーから演劇、全く違う分野への方向転換。しかし、大学に入って演劇をやろうと決めていたわけではないらしい。「あるサークルに入っていたけど、すぐ飽きて違うことやろうと思って。サッカーやってたので、交わらない世界の演劇をやってみようと思った。」

川口さん学生時代

(学生時代の川口さん。王子小劇場にて)


川口さんが所属していたのは劇団森。入った理由は「遅くまで募集してたからですね。」
新歓期間には別のサークルのお試し稽古に行ったという。「まず雰囲気がすごく怖くて。そんな中にトレーナー?みたいな方に『今から私が言う色を身体で表現してください』って言われて。赤・青・黄色みたいな。意味がわからなくて、面白くなって思わず1人で笑っちゃいました。それでお腹いっぱいになって他は行ってないです。あ、『君は何色を言っても黄色に見える』って言われたのが衝撃でしたね。暖色の照明だからじゃない?って思いましたけど。」と冗談まじりに教えてくれた。

劇団森で始まった川口さんの演劇人生は徐々に活動の場を広げていった。「どらま館、学館、岐阜県の美濃加茂も行きましたね」
その中でも印象に残っているという美濃加茂市での公演の様子を聞いた。「本番の会場でお世話してくれた職員さんがあまりにもいい人だったので、出演もお願いして、芝居に出て頂きました。地元の人も嬉しいのかなと思って。結婚式の祝辞を読んでもらうという役で、台詞書いた紙を用意したんですけど、「覚えてきます!」って言って笑。案の定本番セリフが吹っ飛んで、美濃加茂に異様な時間が流れました。Mさん元気かなぁ。笑」

川口さん美濃加茂

(美濃加茂でのリハーサル時の写真)

少し話を変えて、お酒について聞いてみた。「俺はめっちゃ好きだけどね。いますぐにでも飲みたいくらい。」この一言で私の緊張は一気に解けた。「打ち上げでよく行く店があったんですけどそこが苦手でした。ビールが一番好きなのに不味すぎて。誰も飲まないからずっと飲んでて。みんなバナナジュース飲んでて」と話してくれた光景は今の早稲田演劇には消えつつあるものなのかもしれない。

話を本筋の演劇の話に戻し、どらま館での思い出を聞いた。「僕が卒業する時、どらま館で初めて2週間のロングラン公演を打ったんです」学生の公演は4日間くらいがほとんどだ。2週間という長さに不安を感じるが「採算ちゃんと取れるんですよ。僕の公演は、スタッフにも役者にもギャラがはらえて採算取れる公演でした。どらま館無料だからっていうのが相当でかいですけど。ギャラを払うっていうのはこだわっていました」

学生演劇では、チケット代がなかなか黒字にするのは難しいだろう。ほとんどの場合が、公演をやる主宰と役者のノルマから公演の資金を調達する。2週間の公演の話を詳しく聞こうとすると、「でも自慢になるからやめよう。これくらいにしよう」と謙遜したのち、私がしつこく聞いたせいか「いいやボイスメッセージに向かって言おう。ノルマとかとってやってるのダサすぎるんでやめたほうがいいと思いますね。本当に。3、4万円取らなくてもいいものはできるので。」と強めのメッセージを残してくださった。学生時代の川口さんの異端児ぶりがうかがえる。

川口さん 推し

(約3年前に2週間の公演をしたどらま館の前で)

お金とクオリティに妥協のない川口さんは、どらま館についてこう話す。「どらま館のなにがよかったってチケット代が取れるから。フリーカンパって言うと気合入らないから。客から金取ってるんだぞっていうのが好きで、それはずっと当時から言ってましたね」

演劇以外のエンタメの中でも映画は特に観にいっていたそうだ。「文学部映画学科だったからな。映画は好きですね」
学生時代のデートは映画館が多かったそう。大学時代に見た映画で印象に残っている作品は、「『君の鳥はうたえる』石橋静河さんとか柄本佑さんが出てる映画です。」

「武蔵野館の近くにあるライオンっていう食堂レストランでビール飲んでから観ようぜってなって、観たら割と好きで、感動するレベルで、でも一緒に行った子がすごい嫌いだったっていう。笑 映画の帰り道はすっごい好きでした。ビール飲んでからっていう流れも良かったし、意見割れたのも最高だった。その子が読んでくれることを願うわ。」


川口さんの学生時代のある1日はこのような感じだった。

2限 授業
お昼 お昼ご飯は調べて食べるところを決める。
3限 映画を見に行く
4限 授業
5限 部室で雑談
6限 稽古

「演劇人で成績悪いっていうタイプがテンプレすぎて嫌いだった」と話す川口さんは授業をきちんと受けて成績もとっていたそうだ。

当時の川口さんの憧れだった劇団は「当時かっこいいなぁと思っていたのは範宙遊泳でした。もちろん今もかっこいいですけど。映像の演出とかは真似している人も同世代でちらほらいた気がします。あとは今でも観にいってますけど、ケラさんとかハイバイとか玉田企画とか…、結構観てたかな」
その他にも「劇団スポーツは、うちだってやつは俺の同期で一番仲良くてずっと遊んでるね。あいつらはかっこよく見えたからそいつらとばっか飲んでましたね。いまだに関わってるよ。4月は衣装もやったし」川口さんはスタイリストという一面も持つ。「スタイリストは演劇以外にもCMとかMVとか衣装を選んでこういうふうにきたらこの人に似合ってテーマにあってるんじゃないってディスカッションしながらっていう感じかな。」

筆者が大学3年生ということもあり、就活や進路についても聞いてみた。「インターンは一回もやったことなくて、好きな漫画家さんの経歴見たらある会社が載ってて、この人がいたんだから面白いだろうと思って受けました。演劇と違うことやろうって思ってたから、4年周期くらいで違うことできたら楽しいなって。」とサッカーから演劇、演劇の次は映像と活躍の場を移す川口さんがとてもかっこよく見えた。


最後に好きだった劇場を聞いてみた。
「出るのは小さいとこしか出たことないからな。」
どらま館ですか?
「どらま館、、。いやいや誘導されたな。笑
じゃあ宣伝のために言っとくわ。どらま館がよかったわ。」

ゲスト:川口航 映像制作会社・スタイリスト
1996年4月7日生まれ千葉県出身。
早稲田大学文学部演劇映像コース出身。劇団森出身。
筆者:にいづま久実
2000年生まれ、横浜市出身。法政大学人間環境学部在学中。
脱スマホを目指し日々努力中。


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