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蒔絵訪問記#2:「漆」とは、「蒔絵」とは

漆が海外に行くとjapan lacquerと呼ばれていると聞いたことがあります。そんな日本の代名詞が付く漆なのに、国産漆はとても希少だとも聞いたことがあります。気になって漆工芸の背景や実情を少し調べてみました。

出典:冒頭画像含む2点。八橋蒔絵螺鈿手箱 尾形光琳作 国宝 東京国立博物館蔵
ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)より

漆は東アジアにしか生息しない植物で、古来日本に限らずアジア諸国で使われてきた塗料です。土器の接着や装飾、木器の塗料として使われてきました。

漆について(Wikipedia)

また、「蒔絵」の起源は諸説ありますが、正倉院宝物の「金銀鈿荘唐大刀」が蒔絵の起源とも言われています。「蒔絵」の語源は乾ききらない漆の上に金や銀といった金属粉を「蒔いて」定着させ装飾を作るところからこのように呼ばれるようになりました。最近は割れた食器を復元する「金継ぎ」が身近でブームになっているのですが、これも漆を接着剤として破片を継ぎ、その継ぎ目の漆に金粉を巻いて装飾する蒔絵と同じ技法です。

出典:https://www.muji.net/foundmuji/flea/item23.html

※蒔絵の中にも様々が技法があります。詳しくはWikipediaへ。

江戸時代以前の蒔絵はかかる手間暇と材料の高価さ故に一部の富裕層の楽しみでしかありませんでした。しかし、江戸時代に入り、町人階級も香道や能楽を嗜むようになり、趣向を凝らした蒔絵が広く流通するようになりました。海外へは既に桃山時代から南蛮貿易を機にヨーロッパへ蒔絵製品は輸出されており、一部の貴族の間では高い評価を得ていましたが、19世紀の万国博覧会での紹介を機に海外で一層広く注目され、明治以降は美術工芸品として定着していきます。しかし、戦後の急速な生活様式の変化に伴い漆工品の需要が減り、さらにバブル期以降の海外から輸入される安価な大量生産の代替品に押され、衰退の途にあります。現在では漆工芸品の生産量はピークだったバブル期の半分以下になり、原料となる漆は国内消費量の98%をアジアから輸入しています。全国の漆工芸産地では官民一体となって振興に取り組んでいますが、職人の高齢化と担い手不足により存続が厳しい状況です。


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