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靄の中にいる!

話題の中国SF、三体シリーズの最新作『三体X』を読みました!

最新作ではあるけど、三体三部作とは別の作者による二次創作なので、正当な続編というよりはスピンオフ的な、パラレルワールド的な、それくらいの距離感で読むのが丁度いいかな、という感じでした。

三体の三部作は全部めちゃくちゃ面白かったから、二次創作ねえ…どうなの?まあ、公式から本が出てるから読んでみるか…。と思って読み始めたけど、結構面白かったですね。

『三体Ⅲ 死神永生』の登場人物、雲天明をメインに、これまでの作中では語られなかった舞台裏を明らかにしつつ、異なる場面の要素を繋いで伏線として回収するあたりは、これはかなり三体を好きで読み込んだ人間が書いた本だぞ!ということを実感できて良かったですね。

そして、そういう舞台裏の話に留まるかと思いきや、章を跨ぐとあっという間に時代を飛び越えて、『三体Ⅲ』の続きとも呼べるような物語が展開されて、ファンの妄想で隙間を補完するだけの作品には留めないぞ…!という気概を感じましたね。

そういう、時間経過のとんでもないスピード感って三体三部作を読んだ時にも強く感じていて、それを三体Xでも同じ様に感じることができたので、今、三体を読んでるぞ、という感覚で読み進められたのは良かったですね。

ただ、この作品を書き上げる程の熱意を持ったファンと比べると、ぼくってあんまり三体のこと覚えてないな〜、という悲しみはありましたね。〈歌い手〉の世界のSF的なディテールが描かれたところもこの本の見せ場だと思うんだけど、正直、「あ〜、こんなのいたな〜」くらいの熱意で読んでしまった。

〈歌い手〉が使う独自の名詞(太陽弾きとか)も、よくわからん、わからんけど、なんとなくわかる、くらいの気持ちで読んでたら段々眠くなってしまった。わからない本って眠くなるので…。

あと、キャラクター同士の会話が多いのも、二次創作だな〜、妄想が具現化されてるな〜という雰囲気が付き纏っていて、三体三部作よりもなんかウェットな会話だな、と感じました。この辺も好みが分かれるところかもしれない。

なんか悪いとこばっかり書いちゃってる気がするな。ちゃんと面白かったです!でも気になるところもあるなあってね、そんな感じです!

それにしても、三部作でも出てきたキャラクターに、実在の日本のAV女優と全く同じ顔という設定が追加されるとは、驚いたね…。公認の二次創作ってそんなことしていいの?ダメじゃない?

小説を読む時、キャラクターの顔はディテールまで想像せずに、靄がかかったような感じでぼんやり空想しながら読んでいるのですが、どんな顔か気になって画像検索してしまったので、このキャラクターだけハッキリと顔のイメージが浮かぶようになってしまった。

靄の中、AV女優だけがくっきり浮かぶ読書体験、かなり独特だったので、みなさんもやってみては如何でしょうか???

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