【学童野球を愉しむ日々(3)】30年の歳月の意味をかみしめる
(前回)【学童野球を愉しむ日々(2)】足を踏み入れてわかったこと より続く..
子どもの野球生活がスタートし,わが子は休むこともなく練習に試合に参加するようになりました.父親としては,「どんなもんなのかな?」「入団が遅かったんで,あまりにも実力差があるのも気の毒かな?」と気になって,時間があるときに野球の相手をしてみることにしました.
投げさせてみると,そこそこ投げることはできます.ただ,このままではまずそうです.そこで,正しい投げ方をちょっと教え,何度かやらせてみて,最後に「今の投げ方が自然に感じるまでは,遠くまで投げることができなくてもいいよ」と言い添えることにしました.というのも,わが子を観察していると,近い距離で,遠くに投げる必要がない時にはうまくできるのですが,遠い距離を投げようとしたり,速い球を投げようとすると,とたんに元のフォームに戻ってしまうのです.このことは,これまでの自分の野球経験でわかっていたので,あまり無理をさせずに,どのポジションでも支障ないような投球フォームを体に覚えさせて,距離とスピードは徐々に高めていけばよいか,と考えていました.
「ボールを持って,右耳のちょっと上のあたりを手の甲で『ポン』とやる感じで...そうそう.」
投げる方は割と順調にいきました.
そこで次は,打つ方だな,と思い,バットを持たせてスイングさせることにしました.
1回,2回,3回とスイングさせてみます.すると,「???」.ちょっと違和感を感じます.音が鳴るタイミングがちょっとずれている気がします.
「あっ,そうか...ボールを思いっきり打ち返したことのない子どもは,インパクトの場所がわからないからこうなるのか!!」
それで,自宅での素振りは取りやめて,バドミントンの羽根を買ってきて,近所の公園で打たせることにしました.羽打ちやティーバッティングは基本的な練習方法なのですが,羽根は風があるとできないのが弱点です.ちょっとやってみて,夜に家の前で何度かバットを振らせてみて,なかなか難しいので,近所のバッティングセンターに連れて行って,ケージに入れて打たせてみることにしました.
1球目.2球目.3球目.
当然なんですが,なかなかうまく当たりません.
「困ったなあ...ちょっとやって見せてみるか...」と思い,
「おい,ちょっと代わってよ.やってみせてやるよ.」と声を掛け,
30年ぶりにマシンのボールを打つことにしました.
1球目,タイミングをとって....
「あれっ??」
2球目,今度こそ当たるだろう...
「???」「なんで当たらないのか?」
3球目,次はボールをよく見て,タイミングをとって...
「何でだろう,バットにかすりもしない....」
10球くらいやってみましたが,まともに当たらないのです.
30年前,あれほど練習したのに....
「老眼のせいかな?」「この辺が見づらいし...」
わが子にしきりに言い訳をしながら,みじめな思いでケージを後にしたのでした.
その後はマシンの球を打って見せるのは自粛して,バッティングセンターではティーバッティング用のケージを使って練習させることにしました.最初は,ネットの脇からボールをトスして打たせましたが,これもまた初心者のわが子にはうまくできない.そこで,ティースタンドにボールを置いて打たせることにしました.これを何度かやってみて,またボールをトスしますが,やっぱりすんなりとはいきません.
ここまでやって,ようやくわかりました.
バットでボールを打ち返す動作というのは,脳がボールの軌道を予測して,バットを出すタイミングと位置を合わせてスイングしているんですね.そうとわかれば,マシンのボールを打たせるのはやめて,ティーバッティングや羽根打ちなどを優先させることにしました.
それにしても,30年の歳月は,わが肉体を確実に老化させるのに十分な時間だったようです.その後もわが子のチームの練習につきあったりしましたが,50前のオジサンには,もはや遠投はできません.速い球も投げられません.力感をつけて投げると,地面にぶつけてしまいます.飛んできたフライを走りながら取ろうとすると,目が揺れてグローブからボールがこぼれます.飛んできたボールを追いかけると,突然ふくらはぎに「ドン」と来て,肉離れのようになって動けなくなります.野生動物だったら,とっくに食べられていますね.
いくら何でも,昔はこんなレベルではなかったのです.投げて,打って,走って...私のイメージは現実とは全く違います.でも,わが子はその姿を見たことがありません.30年前はスマホもないし,動画で見せることもできません.「動けない『動物』」であることの現実を痛感して,最後にわが子に一言.
「監督やコーチをよく見て,言うことを聞いてやったら野球うまくなるよ」
無駄なことはせず,最初からそうすればよかったのです.
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