【PTA回想録(15)】子どもたちを応援する活動を創る―「わたしの好きなこと・興味のあること展」の思い出(その3・実施編)―
(前回【PTA回想録(14)】子どもたちを応援する活動を創る―「わたしの好きなこと・興味のあること展」の思い出(その2・準備編)― より続く..)
「わたしの好きなこと・興味のあること展」は,予想以上の大成功でした.出展された作品のテーマは,子どもたちも大人も,バラエティーに富んだものでした.美しい月夜の海の絵をかいた子,MINECRAFTで街をつくった子,恐竜や宇宙について教えてくれた子,折り紙でお寿司を作った子,鉛筆や絵の具など様々な道具でりんごを描き,丁寧に考察してくれた子,おうちで飼っているハムスターのことを紹介してくれた子,戦争や差別に関心をもったことを教えてくれた子,歴史上の人物に興味を持った子,サッカーや水泳,バスケットボールに一生懸命取り組んでいる子,将来医師になりたい夢をもち,赤ちゃんの誕生のことをまとめた子,などなど.野球が好きな子が,家族に手伝ってもらって作った野球グラブのはり絵や,お母さんと共作で大好きな岡本太郎のことをまとめた作品も印象に残っています.
大人の皆さんからも,さまざまなテーマの作品が集まりました.仏像のこと,歴史上の偉人のこと,大好きなフィギュアスケートや宝塚歌劇団,QUEEN,中森明菜のこと,韓国料理やカップ酒,クラフトコーラやホットクック,寅さん,漫画やラーメン,サブスク,富士登山,ミッフィー,炎のことや論語などなど...私も,鉄道旅行のこと,子どもたちの野球観戦のこと,読書と好きな本のことを作品にまとめました.
作品を募集するにあたっては,雰囲気がわからないこともあり,いくつか質問もあったのですが,その中で印象に残っているのが
「匿名で作品を出せませんか?」
というものでした.
実は私たちがこの企画展示の企画を考える際,最も注意していたのが,
「自分が大切にしていることを人前でさらけ出すことは,多くの子どもたちにとっては勇気のいることだからこそ,主催する大人の無配慮が原因でいじめられたり,嫌な思いをすることだけは絶対に避ける」
という点でした.この観点から考えれば,匿名で作品を出展できるようにすることは,私たちの懸念は解消できるかもしれません.でも私は,子どもたちも大人も,作品には実名を記載して提出してもらうことにしました.なぜなら,子どもたちは,この先成長していく中で,どこかで必ず自分の本名で「自分の為したこと」を形にして,世の中で評価を受けねばならないからです.作品を出してくれる子どもたちの多くは,表彰状や「博士のたまご」学位記がほしいと思っていると推察します.そうであれば,「自ら望むもの」を自分の手にしたいのなら,勇気をもって自分の名前を出して,自分の好きなことや興味のあることを披露した方が,作品を出してくれた子どもたちのためになる,と思っています.「勇気を持ってチャレンジする」ことが,「自分の欲しかったものを手にする」ことにつながった,と思ってくれたらうれしい,と考えていました.また,制作者の実名を作品に記載させることで,匿名作品に対する心無い言動を防ぎ,作品に対する鑑賞者のコメントを抑制の効いたものにしたい,という意図があったのも事実でした.
続々と集まってきた作品を会場の教室の壁面に掲示するときも,作品の並べ方によって子どもたちが残念な気持ちにならないように,事前に検討してもらいました.すべての作品の掲示作業が終わって,子どもたち,先生方,保護者の皆さんに見ていただきました.
皆さんから,
「作品を見ていて楽しくなりますね」
「作品を見ていると,大人と子どもとでさほど差を感じませんね」
とお伝えいただいたことには,本当にうれしく思いました.「一人ひとりが好きなことには,子どもも大人も大差がない」と思っていたので,そのことが実現できたことは,本当に喜ばしいことでした.
また,執行部の役員を務めてくれていたお母さんは,
「作品を準備している子どもたちの姿を想像すると,目頭が熱くなる」
とおっしゃってくださいました.
お子さんが作品を出してくれたお母さんは,
「好きなことを作品にまとめている子どもの姿を脇で見ていると,とても愛おしく感じ,取り組ませて良かったと思う」
と教えてくれました.私自身も,作品一枚一枚を見つめて,子どもたちが真剣に作品を作り,大好きなことや興味のあることを教えてくれたことに,敬意と感謝の気持ちでいっぱいでした.大人の皆さんに対しても,子どもたちが自由に表現することを応援するように,素晴らしい作品をご準備くださったことに,心からの感謝の思いを抱いたことを記憶しています.
企画展示は,好評のうちに無事終了できました.学校創立150周年の記念の年に,彩りを添えることができて満足でした.
「さて,これから表彰状と『博士のたまご』学位記を準備しようか」
と思いながら,せっかく実施した行事なので,記録に残すための報告書を作ろうと,一枚一枚作品を写真に収めていた時でした.私はこんなことを考えていました.
「子どもたちがすばらしい作品を準備してくれたのに,プリンターで印刷した賞状一枚だけじゃ,ちょっと味気ないなぁ...」
「せっかくの機会だから,子どもたちの作品だけでも私が作品の講評を書いて,賞状に添えて渡したら,喜んでくれないかなぁ...」
そう思ったら,私はやります.当時は平日日中は仕事,土日は子どもの野球で多忙な中,夜など時間をやりくりして,一枚一枚,こつこつと作品の講評を準備しました.ここで,講評のいくつかを紹介したいと思います.
作品の講評を一枚一枚書いていく中で,私は「世の中へ恩返しができたことへの喜び」をかみしめていました.作品をすみずみまで見て,子どもたちが好きなことや興味のあることに取り組む姿を想像しました.作品を準備している姿を思い浮かべながら,「健康に成長してほしいな」「幸せに生きていってほしいな」「夢を実現させてほしいな」などと思いつつ,自分の経験を思い返しながら,講評の作文を準備しました.私にとって,それなりの作業負担になることは間違いありませんが,負担感なんてどこかに吹き飛ぶほど,幸福と感謝の気持ちを感じる時間となりました.
この企画展示は,翌年も実施することができました.翌年は,二度目の作品を準備してくれた人向けに「博士のひよこ」学位記を準備しての実施となりました.一年目同様,素晴らしい作品が集まりましたが,二年目は先生方のすばらしい作品が増えたことが,何よりもうれしく思いました.教頭先生に「博士のたまご」学位を授与したことも,良い思い出となりました.子どもも保護者も先生方も,みんなでおもしろいことを共有でき,少々の達成感を覚えたことを記憶しています.
(次回 へ続く...)
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