見出し画像

【APSCC 2023】アジア環太平洋地域の市場を開拓せよー光通信は市場への普及のフェーズへー

 2023年10月10-12日に、カンファレンスイベント「APSCC 2023(Asis Pacific Satellite Communication Councile 2023)」がマレーシアで開催されました。カンファレンスの名前にもある通り、APSCCはアジア環太平洋地域での衛星通信にフォーカスしており、各国の民間企業や政府機関が積極的に商談を行う場となりました。ワープスペースからはCSOの森が参加し、パネルディスカッションに参加しました。

パネルディスカッションの様子

 森が参加したパネルディスカッションは「Free-Space Optical Communications: Proliferation is Finally Upon Us(宇宙空間での光通信:市場への普及フェーズへ)」というタイトルで、光通信の利点等の基本的な情報から、直近のトレンドについての議論が行われました。モデレーターはMAXAR社のシニアディレクターであるRizwan Parvez氏です。MAXAR社は米国に拠点を置く、通信衛星や地球観測衛星等を扱う宇宙技術会社です。パネリストとしては、カナダに拠点を置く小型衛星のネットワークを提供するKepler Communications社のCSOであるWen Cheong Chong氏、光を使った時刻同期システムの開発を手がけるスタートアップ企業Xairos Systems社のCEOであるDavid Mitlyng氏、そしてワープスペースCSOの森が登壇しています。

 パネルディスカッションでは、現在の光通信のトレンドを作った大きな流れとして、アメリカ宇宙開発局(SDA:Space Development Agency)によって提唱された、大規模な軍事衛星のコンステレーションを用いて情報を地上に送ることを目指す「PWSA:Proliferated Warfighter Space Architecture(*1)」構想の存在が非常に大きかったとパネリストにより語られました。

(*1【参考:SAD】SDA Layered Network of Military Satellites Now Known as “Proliferated Warfighter Space Architecture”)

 また、現在勢いのある通信システムとして、スペースX社が提供する通信サービス「スターリンク」の名前も挙がりました。スターリンクはLEOに大量の通信衛星を配備するコンステレーションにより、LEOの弱点であるカバレッジの狭さをカバーすることで、地上の顧客向けに通信サービスを提供します。またスターリンクは地上との通信にはラジオ波を利用する一方で、衛星間では光通信を利用することが計画されています(*2)。ですが、ワープスペースが提供する予定の通信サービス「WarpHub InterSat」は地球観測衛星に対して光通信による中継サービスを提供するため、スターリンクと競合するとは考えにくい、と森は述べています。

(*2【参考:X(Starlink)】)

 アジア環太平洋の国々における通信市場に対しては、世界中から注目が集まっています。例えばインドネシアなどは、国土が島嶼から構成されるため、国内の通信網を整備しようとすれば、地上の光ファイバー網だけでなく、大量の海底ケーブルを用いたネットワークの構築が必要になります。しかし、インドネシアを構成する17,500以上の島々の間に海底ケーブルを設置することは現実的ではありません。したがって、インドネシアには衛星通信に対する強い需要があるのです。このような、アジア環太平洋地域の課題と、米国や日本をはじめとする事業者が提供するサービスのマッチングが、APCSSの期間中には積極的に行われていました。

 ワープスペースはこれまでにアジア環太平洋地域のほとんどの主要な国々のステークホルダーとミーティングを行っています。その上で、APSCCへの参加によって、ワープスペースはそうした潜在的な顧客とさらに密なネットワークを築く事ができました。今後も、ワープスペースの活動にご期待ください。

マレーシア宇宙機関のブース展示。アジア環太平洋地域の様々な企業や宇宙機関の展示が多くありました。

(執筆:中澤淳一郎)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?