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【Explore 23】衛星画像解析の現場から見える光通信市場の未来

 4月12-13日、ワシントンD.C.にてPlanet Labs社が主催するExplore 23 が開催されました。同社は、DoveやSkySatなど、多数の地球観測衛星を運用する米国の企業で(*1)、2019年から自社イベントとして「Explore」を開催しています。来場者は200-300名、オンラインで600名ほどにも上り、1企業のイベントとしては非常に大規模です。 Exploreでは、世界各国の衛星画像解析事業者が集まり、Planet社が販売もしくは自社他社問わず無料公開している衛星画像データをどのように活用しているかについて、多くの顧客やソリューション開発パートナーによって報告発表がなされました。本記事ではその様子をご紹介します。
(*1 【参考:s-net】衛星製造からデータ提供まで、Planetの衛星コンステレーションが目指す未来

衛星画像解析の現場からーリアルタイム衛星データの必要性ー

 ワープスペースからはCSOの森が現地に赴きました。ワープスペースは、民間として世界で初となる、人工衛星向けの光即応通信ネットワークサービス「WarpHub InterSat(ワープハブ・インターサット)」の開発を進めています。「WarpHub InterSat」を利用してもらうことにより、より多くの地球観測データ等をリアルタイムに近い形で取得、利用できるようになり、災害対応の高速化や資源管理の効率化など、持続可能な地球経済の実現に貢献します。ワープスペースがPlanet社の衛星が取得した衛星画像データを用いた解析を行っている訳ではありませんが、そうした衛星画像解析を行う事業者の現場のニーズを改めて知り、サービスをアップデートをする必要があります。その観点から、森が現地参加した衛星画像解析事業者から話を伺ったところでは、

「やはりリアルタイムのデータが重要で、たとえ1日1回のレベルでデータが得られても、それぐらいの頻度では重要な現象を見逃してしまう可能性が高い。」

といった声が多かったようです。現時点では、公開されている地球観測衛星データはLandsat(ランドサット)シリーズやSentinel(センチネル)シリーズなど先進国の政府が打ち上げた観測衛星による画像データがメインになります。こうした衛星によるデータは、地球上の各地点について1ヶ月に1回程度しか撮影されておらず、そのうちのいくつかは雲が重なってしまい、データとして利用できない場合もあります。またPlanet社のDove衛星のように200機ほど運用していると毎日全球の土地を一回は撮影できますが、こうした地球観測衛星は太陽同期準回帰軌道を周回するため(*2) 、画像取得の時間はローカルタイムで10:30ごろに限られます。そのため、無料公開されている衛星データのみを参照すると、月に1回のみ、有料データも含めると毎日データが取れても午前10:30ごろに撮影したそのタイミングで起きていなかった現象は捉えることができない、というのが現状です。
 衛星画像は農業や漁業、海洋系、物流など様々な産業などで活用されていますが、たとえ1日に1回観測データを得られたとしても不十分です。したがって、こうした現状を打破するため、リアルタイムでの観測データの需要がさらに高まってきているという背景が再確認され、ワープスペースの事業、その手段としての光通信の重要性が改めて実感されました。
(*2 【参考:宙畑】人工衛星の軌道の種類~目的地としての軌道と移動ルートとしての軌道~

Explore 23からも見える地球観測事業者と米国宇宙軍の接近

 また、森が今回のExploreに参加して感じたことは、以前にもまして安全保障色が強くなっていた点です。これまでのExploreに政府系関係者の参加は多くありませんでしたが、今年は、アメリカ宇宙軍作戦部長であるChance Saltzman氏など、宇宙軍の幕僚長クラスの幹部がオープニングキーノートととして講演するなど、防衛の観点からも地球観測事業の重要性を強く押し出している印象を受けたと言います。特に、今回の開催地であるワシントンD.C.には政府機関が集まっており、国防関係者も足を運びやすいため、そうした立地の条件も含めて、Planet社の方針が見て取れた、と森は語ります。
 一方で、昨年アメリカ宇宙開発局(SDA:Space Development Agency)は大規模な軍事衛星のコンステレーションを用いて情報を地上に送ることを目指し、「PWSA(Proliferated Warfighter Space Architecture)」構想を発表しました。そこで鍵となる技術こそ、宇宙空間での光通信技術です。Planet explore 23で見られた安全保障と地球観測事業者の接近は、ワープスペースの取り組む衛星間光通信サービスの市場の将来的な拡大を予見するものと言えそうです。

アメリカ国家地理空間情報局局長・Frank Whitworth氏(左)とアメリカ宇宙軍作戦部長・Chance Saltzman氏によるオープニングキーノートの様子。

(執筆:中澤淳一郎)


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