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「ユーアービューティフルだからプラウドオブユアセルフ」にはもうウンザリ

「本当に○○って良いやつだよね、一緒にいると楽」

昔、好きだった人に言われた言葉だ。
これを言われた時は舞い上がって、なにそれ、と言いながらも口角が緩むのを抑えられなかった。

元々誰かを好きになれば猪突猛進タイプ。
彼に振り向いてもらうため、ありとあらゆることをした。
今思い返すと、10代の恋愛にかけるエネルギーは半端じゃない。
恋愛中心に生活が回る。


自然に遊びに誘い出す方法のリサーチ、検討、そして実践。
(二人きりのデートかと思いきや、知らずのうちに共通の知人交えることに)

ぶきっちょメイク。
(タイムマシンがあればこの時に戻って過去の自分にメイクしてあげたいくらい、最悪の出来)

彼の友達からの情報収集。
(本田翼がタイプな時点で一呼吸おくべき)

くっそ、だんだん辛くなってきた。



あの頃の自分よ、まあ落ち着け、と言いたい気持ちもありつつ、見守りたい気持ちもある。


どちらかといえば、そういうのには敏感な方だから、気がつこうとすれば簡単だった。
こんなにもそこら中にヒントが落っこちているんだし。

だけど、気が付かないようにしていた。
目を覆い、耳を塞ぎ、自分にとって良いことだけをすくいあげようとしていた。


彼にとって、良い人でありたかったから。
今は好きな人がいても、良い人で居続ければ、いつかは自分にも順番が回ってくると思っていたから。

そんな私に、冒頭の言葉だ。

やったまじか嬉しい最高好き好き大好きが止まらない神すごい無理キャーーーー


脳内で無限リピートされた。

これ少女漫画的展開キタ!!

スキップせんばかりの足取りで友だちに報告すると、苦々しい表情で一言。

「気を悪くしないでほしいけど・・・
それって本当に喜んでいいことかな。なんか"都合の"良いやつ、って感じのニュアンスがあるよ」
「向こうからしたら暇な時に呼べば来てくれて、遊んでくれるし、楽しく話も聞いてくれるし、好かれてるのも分かってるだろうから、そりゃあ悪い気はしないと思う」


ガーーーーーン

さっきから脳内音声が騒々しいが、こないだまで高校生の大学一年生なんて、こんなもの。


私はどうしてそんな酷いことを言うんだ、と心の中では友だちに当てのない怒りをぶつけながらも、実際めちゃめちゃ納得していた。
そんなことない、とは言えなかった。

その言葉を聞いて、それまで見えないように聞こえないようにしていた現実が全部流れ込んできた。


マジか。

そうだったのか。

私って「都合の良いやつ」だったのか。


よく考えたら私、全然良い人じゃないし。
大学の用務員さんに自分から挨拶とかしないし、いただきますごちそうさまありがとうも不精だし、駅とかで子どもに突進されたら普通にイラッとしちゃうし。

でも彼といれば、自分がこんな人でありたい、という人を演じることができた。

それに、本田翼とはかけ離れたビジュアルだし。
スニーカーにスウェットで決まるような、華のある顔でもスタイルでもない。
私が真似しても、部屋着のこけしだ。

彼ウケを狙って買った服も、化粧品も、見ているのが嫌になって、妹にあげた。


自分がダサくて、悔しくて、辛くて、だいっきらいになった。
なんであんなことしたんだろう、もっと自分を俯瞰できなかったんだろう、もっと早く気づけなかったのか、グルグルグルグル・・・


時が解決するとか言うけど、そんなことを待つ暇もなく、次の恋愛が訪れるのが大学生。


そうして忘れていたけれど、今振り返れば、正直「あの時の自分ほんっと〜〜にかわいいな!」しかない。
なんか愛おしくないか?wと思うのだ。



最近、巷でよく聞かれるようになった、『自己肯定感』という言葉。
私がこの言葉の使われ方から連想する意味は、

「あなたって最高にビューティフルよ。そんなに素敵なんだから下なんか向いてちゃだめ。Keep your chin up. あなたに自信を無くさせる人達なんて無視すればいいの。Be proud of yourself.」

と女性シンガーが歌い出す、そんな感じだ。


でも。

別にビューティフルじゃなくても、上ばっか向いてなくても、電車で体幹弱い人にいらいらしちゃう、本来良いやつとは対極にいる人間だけど、それでもよくね?
そんな完璧じゃない自分愛おしくね?という気持ち。

これが、私にとっての自己肯定感だ。

自分で自分を愛しく思えるって、当然最高だけど、完璧じゃない自分もひっくるめて全て愛せたらもっと良い気がする。

ほら、「逃げるは恥だが役に立つ」でもガッキー演じるみくりさんが言っていた。


『可愛い』は最強なんです。『かっこいい』の場合かっこ悪いところを見ると幻滅するかもしれない。でも『可愛い』の場合は何をしても可愛い、『可愛い』の前では服従、全面降伏なんです!

完璧じゃない自分も、かわいいとこあるじゃん、ぺろっ☆くらいの感じで愛してあげたい。
自分のこと完璧だとそもそも思っているから、そうじゃない自分に幻滅するんだ。

まだまだだけど、私も自分の全てを愛したい!


ちなみにその彼は、その後私に恋愛相談までしてきて、めでたくその恋は実った。
そして数年後に「あの時、好かれてるのは気がついてたよ」と、語尾に(笑)でもつけてんのか?と思う具合にヘラヘラ言ってきた。


SNSでまじまじ彼女を見て、「全然本田翼じゃねえな」と思っちゃった私、まーーじで、かわいいとこあんな。



・・・いや、かわいくないか。

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