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意味が分かると怖い話~事件~

  私は十七歳の、ごく普通の女子高生だ。時は夕暮れ、私は帰路についていた。とはいっても高校がかなり近いのですぐにマンションに着いたが。

 私が住んでいるマンションは何と破格の三十階建て。超が付く田舎っ子の私にはこれがどれくらい高いのかよく分からなかったが、少なくとも田舎では絶対に見ない高さだった。

 でもって私の部屋はその三十階にある。両親は既に他界しているのでとても心細かった。

 お陰様で毎日毎日エレベータを利用していた。まあもっとも私は軽度の閉所恐怖症だったので、エレベーターは極力避けていたが。

 しかし今日はそういうわけにもいかなかった。何と、物騒な事に階段で殺人事件が起きたというのだ。ブルーシートが張られたその異様な光景は、まるで私の侵入を拒絶するようにして立ちふさがる。

「……はぁ」

 私は深々とため息をつき、エレベーターのボタンを押した。

 四階、三階、二階、一階……

「ポン」と音がしてエレベーターの扉が開き、不審者が登場した。

 そう、読んで字のごとく『不審者』。マスクに深く被った帽子、サングラスに血の付いた軍手。トドメに全身黒づくめと来た。驚いた事に、外見からでは性別が分からなかった……

 って、そんな事じゃなくて。私は踵を返して逃げ出したいという欲求を堪えてエレベーターに乗り込んだ。「何も見てませ~ん」みたいな白々しい様子で口笛を吹いて見せる。

 幸いな事に不審者は私の方には目もくれず、マンションを出て行った。丁度そのタイミングでエレベーターのドアが閉まる。

 私は安堵で泣きそうになった。アイツがここの殺人事件の犯人なのだろうか。いや、軍手に血がついてたから間違いない。そう考えると恐ろしくて仕方なかった。

 さて、こんな時どうする? 警察って110番だっけ? この際どうでもいい。私は急いでケータイのボタンを押そうとして……

 踏みとどまった。

 ここで通報したら、私が犯人と疑われるのでは? そうでなくともかなり尋問されるだろう。私は学生だし、その時間すら惜しい。

 でもそれは『通報したら』の話。通報しなければ面倒な事には巻き込まれないはず。それに警察の人たちの質問ってかなり厳しいみたいだし。豆腐メンタルで有名な私の事だから。多分耐えきれないだろうな……

 私はケータイをしまい、震えてエレベーターの停止を待った。

 次の日の早朝、ドアのノックに私は目覚めた。

「はい、今行きまーす」

 寝ぼけた頭で玄関に向かい、ドアを開ける。そこにはなんと、警察らしき男が立っていた。

「警察の佐藤粉雪(さとうこゆき)と申すものです。朝早くに申し訳ないですが、少し質問をしてもよろしいですか?」

 まさに、私の寝ぼけた頭に水をかけたたような内容だった。事故紹介はそれだけでとっとと本題に進んでしまう。

 まあ一応ここは事件の現場になってるマンションだし、来るのは当然なのか。多分私以外の所にも出向いているから疲れてきているのだろう。

 そう察した私は、適当にねぎらいの言葉をかけた。

「ああ、は……はい。お勤めお疲れ様です。上がってください」
「いえ、口頭で結構ですので。貴方、ここで起きた事件については知っているでしょう? その事件の手がかりについて何か知りませんか?」

 折角提案したのに……とも思ったが、私はもう迷わずに答えた。

「いいえ。全く知りません」
「そうですか……ありがとうございました」
「もう行かれるのですか。頑張ってくださいね」

 それから二日後、私の学校で「ある内容」が話されていた。

「マンションの殺人犯、捕まったらしいね」
「え~、マジ? 私初耳なんですけど~」

 私はその話題につられて友達の方へ寄っていった。それを見た友達が私にスマホを見せてくる。私はスマホの画面を見返し、絶句した。

「ほら、写真だって載ってるでしょ? 『マンションでの殺人事件、犯人逮捕。犯人は無職男性』……良かった、私の知人じゃなかった~」
「あ……はは、そうだね~、うんうん」

 写真に乗っていたのは、つい最近会って話したあの男だったのだ。

≪解説≫
 要点を絞ります。

①主人公の元を訪れた警察は男だった
②二日後の会話で主人公たちは「犯人は知らない男」だと言っている
③犯人は無職男性
④主人公の元へ訪れた警官(警察)は殆ど自己紹介をしなかった

 ③より犯人リストから主人公が通っている学校の生徒・先生は全員除外されます。さらに主人公の両親は既に他界しているため両親も除外。

 つまり主人公と「会って話した」「男」となると消去法で犯人は警官だったという事になります。

 でも、③に犯人は『無職男性』だと書いてありますね。ここで大きな矛盾が生じます。でも、『無職男性(犯人)が警察風の衣装を用意して目撃者がいないか探していている』のだとしたら。矛盾は発生しません。まあ、事実だけ見れば全く怖くない話ですね。ただ……

 主人公が、訪ねてきた警察の質問に「はい」と答えていたら、主人公は今頃この世にいないかもよ……って話です。

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