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昼下がりの戦争。

クッソ、どうして……

俺は手を丁寧に動かし、チュッパチャップスを開こうとしていた。

どうして俺はこんな簡単なことさえできないんだ。
手が震えているのは怒りのせいか、はたまた疲れのせいか。あと少しでイケるという歓声と、それが失敗に終わった悲鳴とを交互に発している。

左右に一人ずついる戦友のうち、右の指令は早々にこの戦況をかいくぐり、目標を討伐していた。口に入れたその白いタバコのようなものが、俺の眼には憎たらしく映る。

左の彼は心身ともに満身創痍で、やつれた様子で鋏を握っていた。

「へ、へへ……お、おれには、これしかねぇんだ……」
「待てッ! お前……とうとう、イカれちまったか!?」
「イカれてるのはお前らの方だ」

彼は不気味な笑顔のまま言った。

「……結局、どうやっても無理なんだ。だったら、いっそ楽になった方がいいと思わねぇか?」
「……」

俺は何も言わなかった。
そして彼は、とうとう鋏で薄い膜を切ってしまった。俺は情けない声を上げる。彼は幸せそうに笑っていた。

俺は昔、誓ったんだ。
絶対に、絶対に鋏だけは使わないと。

「……ッ! これは……!」

俺は指先に手ごたえを覚えた。
今なら、仲間の成し遂げなかったコトが成せるかもしれない。

ここに全身全霊をかけるのだ。
泣いても笑っても、これが最後。
成功すれば楽園、失敗すれば……

「ウオォォォォッッ!」

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