寄り添い方の正解。
以前、ウォームハートでは、お客様のお誕生日に、お祝いのカードを作ってお渡ししていました。最近は業務に追われ、お祝いの言葉をお伝えするだけで精一杯になってしまっていますが、カードを渡したときのお客様の顔を思い出すと、やっていてよかったなと思います。ただ、ひとつだけ、このお誕生日カードのことで、反省したことがありました。
お誕生日カードをお渡ししていた当時、お客様のお誕生日の2〜3週間前にメッセージカードを用意し、そのお客様に関わるスタッフさんたちに「お誕生日カードを事務所に置いておくので、メッセージの記入をお願いします。」というメールを送るのが、私のルーティンワークとなっていました。もちろん、喜んでいただきたいという想いはありましたが、あまり深く考えず、業務として機械的にこなしていました。そんなとき、とあるお客様のお誕生日3週間前、いつも通りカードを用意していると、先輩から「渡すのはいいと思うんだけど、◯◯さんが本当に喜ぶか、考えてみてほしい」と、ストップをかけられました。そう言われてはじめて、私はそのお客様の日頃の言動を思い出し、ハッとしました。
その方は、訪問すると毎回「また目が覚めちゃった…がっかりしちゃう…」「今朝も主人のお仏壇に『早く迎えにきて』って手を合わせたのに、全然聞いてくれない」と仰る方でした。1年前、その方にお誕生日カードをお渡ししたときは、「おめでたくないわよ〜」と言いながらも、カードを大事に飾ってくださいましたが、その頃とは状況が変わっていました。もともと気持ちが落ち込みやすい方でしたが、加齢によって足腰が弱り、数少ない楽しみだった縁側で庭の鳥を眺めることも難しくなってきていて、今まで以上に気持ちが沈んでいる時期だったのです。結局、他のスタッフさんたちとも相談した末、その方のお誕生日カードは用意せず、お誕生日当日もいつも通り過ごしていただきました。
身体介助の方法というのは、正解がありそうで、実はありません。基礎的な介助方法やコツはありますが、介護される人と介助する人それぞれの筋力と体格や、介護する場所の環境などによって、「ベスト」な介助方法が違います。それと一緒で、心への寄り添い方にも、正解がありません。寄り添われる人と寄り添う人の関係性、寄り添われる人の性格や価値観、話の内容、寄り添う場面に至るまでの経緯など、様々な要素によって、「ベスト」な寄り添い方が変わってきます。
身体介助も含め、コミニュケーションをとる上で大事なのは、日頃深く相手のことを知ろうと努め、その時々で自分なりのベストな方法を探ることだと思います。日々、仕事も含め、日常のいろいろに追われていると、つい流れ作業になってしまったり、深く考えずに「いつもやってるから」とこなしてしまうこともあると思います。時々でも、自分のやり方がベストだと胸を張って言えるか、振り返る時間がとれると、今まで見えなかった新しい選択肢が見えて、またひとつ、成長できるかもしれません。
(上條)
【今月の一言】
人々は悲しみを分かち合ってくれる友達さえいれば、悲しみを和らげられる。
(シェイクスピア)
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