遺言書には厳格なルール(北海道新聞連載⑭)
遺産相続などについて自分の希望を書き残す「遺言書」。
「そこら辺の紙に書いて母印でも押しておけばいいんだよね」と言う方もいますが、
厳格なルールがあります。
代表的な自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを学んでみましょう。
Q 自分で書いて自分で管理。
手軽に作成できますが、書き方の不備などで遺言が無効になる可能性もあるのはどちらでしょうか。
① 自筆証書遺言
② 公正証書遺言
A 答えは①です。
日付と署名、押印が必要ですが全て自分で書かなければなりません。
意外に多いのが、本人から「遺言を書いた」と聞いたことがあるが見つからない場合や、見つかっても内容がよくわからないという例もあります。
Q 遺言書の主旨を口述したものを公証人が書面にします。
このため、書き方の不備などで遺言が無効になることは通常なく、遺言書の原本は公証役場で保管されるので紛失や改ざんの恐れはないのは、どちらでしょう。
① 自筆証書遺言
② 公正証書遺言
A 答えは②です。
ただ、遺言書作成には記載する財産の価格や、相続や遺贈の対象になる
人数によって計算される手数料がかかります。
Q 遺言作成時に証人が必要なのはどちらでしょう。
① 自筆証書遺言
② 公正証書遺言
A 答えは②です。
証人2人の立ち会いが必要ですが、公証役場で紹介してもらうことができます。
Q 遺言者が亡くなった場合を想定します。
遺言者の出生から死亡時までの除籍、改製原戸籍を含むすべての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本などの必要書類をそろえて家庭裁判所での「検認」が必要になるのはどちらでしょう。
① 自筆証書遺言
② 公正証書遺言
A 答えは①です。
公正証書遺言書は「検認」の必要はありません。
遺言書に厳格なルールがあるのは、遺言者が亡くなって実際に遺言書を使う時に本人に「これはどういう意味?」などと確認できないことも理由の一つです。
では、遺言書が無ければどうなるでしょうか。
法定相続人全員で協議をし、合意の上で遺産を分割することになります。
その際は必要書類に全員の直筆署名、実印と印鑑証明が必要となります。
「法定相続人以外に相続させたい」「子供がいない」「特定の遺産を相続させたい」「事業を承継する子供に自社株など遺産を多く渡したい」「法定相続人がいない」
などの場合は円滑な遺産分割に向けて遺言書を残すことを検討してはいかがでしょうか。
2016年(平成28年)6月1日(水曜日)北海道新聞掲載
「遺言」
2020年 自筆証書遺言の法務局での保管制度が開始しました。
ただ、法定相続人への通知が必要など、私はまだ大きなメリットを見つけ出すことができていません。
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