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誹謗中傷収益化スキームと背景にある問題点について

はじめに

この記事では、SNS上の「誹謗中傷収益化スキーム(※1)」の概要、プロセス、背景にある問題点を解説します。

「誹謗中傷」はデマや揶揄,罵倒,愚弄,嫌 がらせなどを含む「言葉による暴力」と同じ意味で ある。

子どもを守る防犯用語事典 - 誹謗中傷

誹謗中傷収益化スキームとは?

誹謗中傷収益化スキームは、首謀者が収益を目的として誹謗中傷を用いてコンテンツを作成し、それを拡散することで利益を得る手法です。
このスキームは、通常のネット炎上とは異なり、計画的かつ戦略的に行われます。

さらに、SNSプラットフォームや司法制度の問題がこのスキームの存在を助長しています。

具体的な被害
女性支援団体叩き(暇空茜問題)まとめ
暇空茜と支持者による個人への誹謗中傷の被害状況まとめ(2023年9月)

スキームのフェーズ分類

このスキームは、主に3つのフェーズに分類できます。

フェーズ1. 🔍被害者(収益化対象)の選定

このフェーズでは、首謀者が攻撃の対象を選定します。
その人物の影響力や注目度、過去の発言や行動などが考慮されることが多いです。ある首謀者は「戦いのセオリーは、影響力がある人物に挑むこと」と述べるなど、戦略的な考えを持って被害者を選定することが伺えます。

参考:暇空茜さん「戦いのセオリーは、影響力がある人物に挑むこと。であれば仁藤夢乃さんがよいだろうと目星をつけたんです」

フェーズ2. 🔥被害者を社会の敵として扱う

このフェーズでは、首謀者が選んだ被害者を社会全体の敵として見せるための戦略を展開します。具体的には、以下のような手法が取られます。

デマの拡散
情報をデタラメに繋ぎ合わせてデマを流布します。このデマは、被害者の評判を悪化させ、社会的な敵視を強化する役割を果たします。例えば、若年女性保護団体が不正会計やタコ部屋貧困ビジネスを行っているなど。

情報の脚色
首謀者は被害者の過去の発言や行動を取り上げ、それを過剰に脚色または歪曲して、被害者を悪く見せる情報として発信します。例えば、被害者の過去の発言を一部切り取り、文脈を無視して批判的な内容として拡散するなど。

支持者による拡散
脚色された情報やデマは、首謀者の支持者に向けて発信されます。支持者たちはこの情報を鵜呑みにし、喜んでそれをさらに拡散。結果として、被害者は膨大な誹謗中傷の対象となります。

参考:女性支援団体叩き(暇空茜問題)まとめ
参考:暇空茜と支持者による個人への誹謗中傷の被害状況まとめ(2023年9月)

フェーズ3. 💰収益化

このフェーズでは、首謀者は被害者に関する情報や発言を元に、収益化可能なコンテンツを作成します。

収益化コンテンツ例:
・脚色した被害者の情報や発言
・被害者との裁判の内容
被害者の著作物の不正販売

問題点1. プラットフォームの被害者への非協力的な態度

プラットフォーム上での誹謗中傷コンテンツは、加害者にとって収益を上げる手段となっています。

一方、被害者はこれらのコンテンツによる被害を受けますが、多くのプラットフォームは被害者の被害拡大阻止や被害回復に対して非協力的な姿勢を取っています。例えば、個人に対する誹謗中傷を通報しても削除されず、著作権侵害の申告に対する異議申し立てに対して審査を行わずにコンテンツを復活させます。

この非協力的な態度の背後には、プラットフォームがユーザーからのインプレッションを集めることで得る広告収入への依存があります。

このため、加害者には収益を上げるための「正の循環」が提供されているのに対し、被害者は被害回復のための手段が限られているという状況が生まれています。

問題点2. 法的措置を取る際の高いハードル

被害者が誹謗中傷に対して法的措置を取る際、まず「開示請求」という手続きが必要です。これは、匿名で行われる誹謗中傷の加害者の実名や情報を知るための手続きです。

しかし、この開示請求を行うためには弁護士に依頼することが一般的で、その際の費用は一件あたり約30〜50万円と高額です。さらに、多くの加害者に対して開示請求を行う場合、その費用は膨大なものとなります。

このような高いハードルが存在するため、被害者は泣き寝入りすることが多く、首謀者はこのハードルを有効に利用して、被害者を攻撃し続けることができます。

参考:誹謗中傷への開示請求をする流れとは?かかる費用や期間を弁護士がわかりやすく解説

問題点3. 首謀者の利益が賠償金額を大きく上回る

名誉毀損に関する賠償金は、個人に対しては平均的に10〜50万円、法人に対しては50〜100万円とされています。

一方で、首謀者が誹謗中傷収益化スキームによって得る収益は、この賠償金額を大きく上回ることが多いです。例えば、YouTubeの広告収入だけで1052万9641円(推定)の収益を得るケースも存在します。

このような状況が、首謀者にとって誹謗中傷収益化スキームを実行する大きな動機となっています。賠償金を支払うリスクを上回る収益を得ることができるため、首謀者はこのスキームを継続的に行うことができます。

参考:名誉毀損の慰謝料はいくら?請求事例と弁護士に依頼して訴える費用

おわりに

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

この記事では、誹謗中傷収益化スキームの解説とその背後にある問題について述べました。現状の各種プラットフォームや司法制度では、被害者が迅速に対応することが難しく、このスキームによる炎上を即座に止める方法は限られています。

この問題を多くの人に知っていただけるよう、この記事をシェアしていただければ幸いです。


※1. このスキームを表す呼称がわからないので、仮に「誹謗中傷収益化スキーム」と呼びます。