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「暇な空白」と称する発信者によるnote記事一部削除のお知らせ

 このたび、2023年7月10日付でnote株式会社を債務者とする仮処分命令を東京地方裁判所に申し立てたnote記事について、このnote記事を投稿した「暇な空白」と称する発信者が当該note記事の一部を削除しました。

1. 仮処分命令を申し立てた裁判所および年月日

裁判所: 東京地方裁判所

係属部: 民事第40部(知的財産権部)

担当裁判官: 古賀千尋 裁判官

年月日: 2023年7月10日

2. 仮処分命令を申し立てる対象としたnote記事

タイトル: 堀口英利さんからnote削除仮処分申立がきました

投稿者: 暇な空白

投稿日: 2023年7月6日

URL: https://note.com/hima_kuuhaku/n/n92286cd5e613

3. 仮処分命令を申し立てた原因 (手続に至った当方の主張)

 当該note記事を投稿した「暇な空白」と称する発信者は、当方が別のnote記事について削除を求める仮処分命令申立事件のため東京地方裁判所およびnote株式会社に提出した申立書を無断で公開した。
 当該note記事において、当該申立書のPDFデータへのURLおよび当該申立書を切り抜いた画像を公表している部分は「有料部分」とされており、当該note記事において投稿者は当該申立書を無断で有料販売したと評価できるこの投稿者の行為は、当該申立書について、公衆によって直接受信されることを目的とした無線通信または有線電気通信の送信であり(著作権法2条1項7号の2)、未公表の当該申立書を公衆に掲示(同4条)するものであるから、当該申立書に係る当方の著作権(公衆送信権)および著作者人格権(公表権)侵害を構成する。
 当該申立書は、当方が裁判のため作成した著作物であり、当方が著作権を有している。なお、著作権法40条1項は「公開して行われた(中略)裁判手続における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」と規定している。しかし、当該仮処分命令申立事件は本件記事が公開された時点で期日を迎えていないから、当該申立書は未公開の書類で「公開の陳述」といえない。当該申立書の自由利用ができないのは著作権法40条1項の文言から明らかである。
 よって、当方はnote株式会社を債務者として、当該note記事の削除を求める仮処分命令を申し立てた。

4. 仮処分命令の申立てを受けたnote株式会社および発信者の対応

 note株式会社が当該note記事を投稿した「暇な空白」と称する発信者に意見照会を実施したところ、当該発信者は、代理人弁護士(小沢一仁 弁護士)により2023年8月23日付で作成された「当該note記事の権利侵害部分(当該申立書のPDFデータへのURLおよび画像データ)について『削除済み』である」とする回答書を回答書を同社に提出した。
 同社は受領した回答書を同社代理人弁護士を通じて2023年8月25日に裁判所および当方に宛てて送付した。

 また、2023年8月24日に、X(旧: Twitter)において当該発信者と同一人物とみられる「暇空茜」と称する発信者が当該note記事の権利侵害部分(当該申立書のPDFデータへのURLおよび画像データ)について「いま削除した」旨を述べた。

5. 権利侵害部分の削除を受けた当方の対応

 当該回答書(2023年8月23日付)には権利侵害部分について「削除済み」と記載されていた一方で、当該発信者は翌日に権利侵害部分を「いま削除した」と述べており、多少の矛盾が見受けられたものの、当該note記事の権利侵害部分の削除により一応は当方の要求が満たされたため、当方は当該仮処分命令申立事件を2023年9月1日に取り下げた。

 しかし、当該note記事の権利侵害部分の削除によって、当方の損害が回復したとはいえない。
 当該発信者は当該申立書のPDFデータへのURLおよび画像データの掲載された部分を有料販売していた。著作権法114条2項には「著作権を侵害した者が著作権侵害により受けた利益は、著作者が受けた損害の額と推定する」旨が規定されている。つまり、当該発信者が当該note記事の有料販売によって得た利益は、当方が受けた損害の額と考えられる。
 また、東京地方裁判所は2021年7月16日判決において「公開の法廷において陳述されていない訴状について自由利用を認めるべき理由は存在しない」旨を判断した。この判決では「未陳述の訴状が公開の法廷における陳述を経たとしても、それ以前の侵害行為が遡及的に治癒され、原告の受けた損害が消失すると解するべき理由はない」とも述べられている。この判決は訴状に係るものながら、仮処分命令申立書も同様に考えるべきである。

その上、著作権法40条1項は自由利用の対象を「公開の陳述」に限定しているところ、もし当該申立書が期日を迎えて陳述されたとしても、仮処分命令申立事件を含む保全事件は非公開の裁判だから、当該申立書につき自由利用が認められるべき理由は存在しないし、当方の損害が消失したとは解せない。

 よって、当該申立書の有料販売によって当該発信者が受けた利益について、当方は損害賠償を検討している。ただし、当該発信者からの補償その他があった場合は、この限りではない。

以上

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