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アメリカにおけるUFO問題への取り組みの変化(3)

UFOが自分のライフワークになると確信したジャーナリスト、レスリー・キーンは、ロズウェルのような歴史的事件にこだわるのではなく、「プロジェクト・ブルーブック」終了後に報告された「本当に良質な事例」に的を絞ることにした。パイロットなどの専門家が目撃し、できれば複数の証人がいるもの、写真やレーダーの追跡記録で実証されているもの、そして特に専門家がUFO以外の解釈を排除している事例である。

キーンが注目したた事件のひとつは、1980年に起きた「英国のロズウェル」として知られる不気味な事件だ。数人の米空軍将校が、英国のレンデルシャムの森にあるRAFベントウォーターズ基地のすぐ外で至近距離からUFOを目撃したと主張した。基地の副司令官がその録音記録を残している。目撃者ジェームス・ペニストン軍曹は、静かな三角形の宇宙船に近づいて船体が帯電しているのを感じ、表面に象形文字のようなデザインが刻まれているのが見えたと証言した。

また1976年には「テヘラン上空における空中戦」と表現される事件が起こっていた。イラン空軍の飛行隊長パルヴィ・ジャファリ少佐が、テヘラン郊外のソ連との国境に近い地域に出現した「光るダイヤモンド」を迎撃するためF-4ジェット機で緊急出動した。ジャファリは、彼が近づくとその物体が「赤、緑、オレンジ、青の強烈な光を放って本体が見えないほどだった」と書いている。そして気づくと武器や無線通信が妨害されていた。

イランのアメリカ情報筋は、この事件について4ページにわたって記したメモを機密情報としてワシントンに送った。このメモには、ローランド・エヴァンス大佐が次のように書いた評価が添えられていた。
驚くべき報告である。これは古典的なケースだ。UFO現象の研究対象として必要な基準を全て満たしている

キーンはこの表現が「政府の文書には珍しい表現」であると思った。まして、政府はUFOには興味がないと公式に発表しているならばなおさらである。

米政府が作成させた「コンドン・レポート」がUFOを「実在しないフィクション」と結論付けたにもかかわらず、アメリカ政府がUFOに対する根強い関心を隠し続けてきたことは明らかだとキーンは考えた。

2002年、キーンは「Sci Fi Channel」のディレクター、ラリー・ランズマンから「UFO事例に関する新しい政府記録を探す取り組み」を指揮するために招かれた。プロデューサーたちは、弁護士や調査員に加えてワシントンにあるポデスタ・マトゥーン(PodestaMattoon)というPRグループを雇った。

当時ポデスタ・マトゥーンのエネルギー・環境部門の責任者だったエドウィン・S・ロスチャイルドは、キーンにこう言ったという。
「ほとんどの人が、われわれの知らない何かが存在すると思っているでしょう。でもそのことについて話し始めると、頭のおかしい人だと思う人たちもいるのです。わたしたちは信頼できそうな人とできなさそうな人との間に明確な線引きをしなければなりません」

キーンは、1965年12月9日にペンシルヴァニア州のケックスバーグという小さな田舎町にフォルクスワーゲンくらいの大きさの物体が空から急降下してきたとされる事件について調査することを決めた。複数の目撃者によると、どんぐり型の大きな物体が、銃を持った軍人が警備するなか、平台型のトラックに載せて森から運び出されたという。

キーンは情報公開法に基づいてNASAのファイルを請求した。その中には現場から回収された残骸についての情報が含まれていると彼女が確信している資料も含まれていた。NASAは関連する記録は1987年に所在不明となっていると主張した。キーンは、コンプライアンス違反を理由にNASAを相手取って訴訟を起こした。このときロスチャイルドが、クリントン大統領の元首席補佐官で政府の透明性とUFOの両方に関心があることで知られていたジョン・ポデスタ[ポデスタグループの共同創業者]をキーンに紹介してくれた。

キーンは4年をかけて実質的勝訴と呼べる和解を勝ち取ったが、その結果として彼女が受け取ったのは大部分が事件と無関係な何百もの書類だった。
ジョン・ポデスタはこう語る。
「NASAは実際に起こったことを認めようとしなかったのです。――事件から40年も経っているのに、NASAがそれが何であると考えているのかさえ言わないことを正当化できる理由は考えられません」

2007年、キーンはドキュメンタリー映画『ザ・フェノメノン』の監督であるジェームズ・フォックスと協力して、ナショナル・プレス・クラブで講演会を主催した。どの講演者も、ロズウェルや宇宙人の死骸、リヴァースエンジニアリングされたといわれる宇宙船や政府の隠蔽工作などには触れず、英国で起きた「オルダニーの遭遇」などを例に挙げ、UFOとの遭遇に対する諸外国(英国、フランス)と米国における公的扱いの違いについて説明した。

その後2年間、キーンはさまざまな事例での証言やその他の報告書を集め、成果を本にまとめた。彼女はその著書の中で「国家的安全保障のため、そして奇妙なものを空に見つけた人々に証言を促すためにも、政府はUFO問題を統括する機関を設置する必要がある」と主張した。

キーンの本は、理論物理学者のミチオ・カクが「UFO研究の金字塔」と絶賛し、元大統領首席補佐官のジョン・ポデスタが序文を寄稿した。この本が彼女の影響力を高めることに貢献した。

つづく

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