宇宙の創造

ブラフマーもかくや、という心境である。


その日我が家に届いたのは、月であった。

などと詩的に言ってみたが、正確には月ではない。
それは月のような色で光り、月の模様を持つが、ごく小さい恒星である。

その天体をゆっくりと持ち上げると、何のはずみか淡いオレンジに光った。
手の上で回すと、今度はほの白く光った。しばらく触っていると、光は消えた。
神秘的である。神秘的とは月並みな表現だが、月のようなものなのだから構うまい。


天体の入っていた箱に、文字のかかれた紙が同封されていた。
読むと、天体にエネルギーを補充するには正しい位置で浮遊させる必要がある、と書いてある。

浮くことにかけては右に出るもののいない私だが、浮かせるのは初めてである。
「椅子を探すように、上から下ろす」と唱えながらしかるべき場所を探すが、うまくいかない。天体は幾度もあらぬ方向へ引き付けられる。


上げて下ろして、とやっているうちに、突然天体はストンとあるべき場所におさまった。行方不明の胃の腑が戻ってきたかのような安堵を感じた。
時計を見ると、30分が経っていた。

たった一つの小さい星を浮かせるのにこれだけかかるのだから、宇宙の創造はどれほど大変だっただろう。
全てを思うように配置するために、恒星の火力を調節したり、惑星の密度を変えてみたり、ダークマターの注ぎ方を工夫したりしたんだろうなあ。

結局、全てを思うように配置することはできたのだろうか。案外ブラックホールあたりは偶然の産物だったりするかもしれない。


その美しい天体の名前はLEVIMOONという。
どうですか。あなたも、おひとつ。


追記

下手くそなので浮いているのかわからない写真


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