ヘブバンと闇の一族と5章前編の感想

みなさんはヘブンバーンズレッドをご存じだろうか?

知らない人はググってくれ。

いずれにしろ、2000年代・2010年代にエポックメイキングな作品を作ってきた麻枝准は今やスマートフォンでユーザーをへブ泣きさせるために邁進している。

個人的にいえばヘブバンの音楽は結構いいと思うのだが、シナリオは正直どうかと思ってしまう部分がある。(世間的にはシナリオの評判は悪くないようだ)その理由のひとつがシナリオで頻繁に登場する「闇の一族」の存在にある。

闇の一族とは何か

闇の一族とはヘブンバーンズに頻繁に登場する「不自然なまでに悲劇的な宿命を背負った家系」のことを指している。私のカウントではヘブンバーンズレッドの登場キャラクターのうち48名のうちが8人が闇の一族であり、11人が準闇の一族に該当する。

まず間違いなく闇の一族と呼んでいいキャラクターが三名いる。「佐月マリ」「夏目祈」「小笠原緋雨」である。

順に説明しよう。イベントストーリー「やさしさと切なさと心強さと」では佐月マリの悲劇的な過去を知ることになる。ストーリーはぶっちゃけ忘れたが、佐月マリは忍者の家系として幼いころから修行を積むが、女性ということもあって身体能力的に戦力外通告を受け、正式な忍者にはなれず終わる……しかし母親は彼女を愛していた……みたいな内容だったと思う。まあとにかく、佐月マリは「闇の一族」の一員と呼んでいいだろう。

つづいて夏目祈である。彼女はそもそもプロフィールに「江戸時代から脈々と続く、罪人を処刑する建議を受け継いだ少女」との記述がある。確か『セラフ剣刀武術祭り』では、彼女の家系について語られ、なんかヤバそうな家だけど、苦痛を少なくするためのギロチンみたいないい剣だったから誇りに思っていいんだぜみたいなノリで過去が肯定されていた気がする。いずれにしろ夏目祈は明らかに「闇の一族」の一員と呼んでいいだろう。

最後に小笠原緋雨は『緋に染まる袖時雨』において「伝承の際に同門の弟子を皆殺しにする殺人剣の継承者」であることが分かる。まぎれもない「闇の一族」の一員だ。

さらに「月城最中」「柳美音」「丸山奏多」「水瀬いちご」「水瀬すもも」の五人も最初の三人ほど確実ではないものの、かなり闇の一族といえる部分を持っている。

月城最中は、3章の終わりに小笠原の一門の分派から継承した凄まじい手数を誇る奥義「無我夢中」を使用し暴走状態に陥ったことで、同僚の蔵里見を殺してしまう悲劇を経験する。闇の剣を継承している時点で闇の一族であることは否定しがたい。

柳美音と丸山奏多は丸山財閥という闇の財閥出身であり、なんか政治闘争で親が死んだりしてた気がする。流石に殺人剣に比べればマシだが闇要素はかなり強い。

水瀬いちごとすももは殺し屋である。殺し屋になった経緯は覚えてないが、かなり闇であることは間違いない。

準闇の一族はかなり多く11人が該当する。
東城つかさは親が闇の研究に関わっていたことでなんか記憶とかをいじられてた気がする。桜庭星羅は闇の占い術を持っている。國見タマはデザイナーズチャイルドであって、一族ではないにしろ出生が闇だ。
二階堂三郷は囲碁の棋聖の孫かなんかで、囲碁で祖父の期待に応えられなかったのではないかということを引きずっている。若干闇を感じる。31Eの6人に至っては全員闇の武器商人の子供である(親が消されたため貧乏暮らしを経ている。)

そしてタイトルに5章感想と銘打ったのは主人公の茅森月歌も準闇の一族に該当することがこの章で明らかになるからである。

5章においては現在の主人公(ナービィが茅森月歌に擬態したもの)の過去が語られる。
現在の主人公はかつての茅森月歌のペット的存在(ナービィ)であり、本物の茅森は「カイトを揚げている最中に強風にあおられて遭難し事故死」した事が明らかになる。そして悲嘆に暮れる母親の為にナービィが茅森に成り代わって生まれたのが現在の主人公という事が判明するのである。

その後、主人公の母親は本物の茅森の死の一年後に「カイトを揚げている最中に強風にあおられて遭難し事故死」する。ここで母親の事故死は嘘であり、茅森の入れ替わりに気づいて心を病み自殺したという真実が明らかになれば、闇の一族感は薄れる。それは単なる悲劇だからである。

しかし茅森の母親は普通に事故死していたことが語られる。入れ替わりに気づいてもその茅森を愛した母親の愛の強さを示す感動的なエピソードだが、「カイトを揚げている最中に強風にあおられて遭難し事故死」が一年で連続するのは流石に呪われていると言わざるを得ない。少し調べてみたところ、このような事故は少なくとも日本では起こっていなさそうだ(ウィンドサーフィンの事例はそれなりにあるようだが)。これには闇の一族の鼓動を感じざるを得ない。

たしかに母親が自殺ではなかったのは良いプロットの捻りな気もするが、一方でやはり逆にいえば常識的にはありえない特殊な悲劇がまた一つ導入されてしまったということであり、個人的には「主人公も闇の一族だったか……」という印象が先行してしまった。

よく考えると麻枝准の過去作品には闇の一族的設定はそれなりにある。ヒロイン数が5人ぐらいいて、一人や二人闇の一族出身というのはエロゲ的には良くあることだ。

しかしやはり48人いる中で19人が闇の一族の出身者ということになると食傷気味になってしまう。しかもこれは現在判明している闇の一族であり、今後も闇の一族は増加すると考えた方が良さそうだ。

ソーシャルゲームに出てくる多人数キャラクターの設定は何かと被りがちだが、「泣き」縛りを入れるとさらに被る可能性が高まってしまう。集金のシステム的には「推し」だったり関係性の面白みを出すために人数を出すのはこの手のゲームの定石なわけだが、やはりソーシャルゲームで面白いシナリオとか作るのは無理では?とまた思うのであった。

ヘブバンの音楽はいいのでCDは買おうね!

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