【極短編】Happy Halloween🎃

今日も今日とて
窓からの景色は同じ
先々週くらいから
中庭の観葉樹が黄や赤に変わり始め
最近はヒラヒラと落ちていくのも見える
「最後の一葉が落ちる頃、
　私はこの世にいるのかしら…。
　…なんてね…。」
ほぅっ…と一息つくと、
かすかに聞こえる楽しそうな笑い声。

窓辺に寄ると、
中庭をはさんで、コの字型の建物の向かいの部屋の窓から漏れる子どもたちのはしゃぐ声だった。

屈託のない笑顔で数人の子どもたちが
魔女やジャック・オ・ランタンに扮した
医師や看護師に
「トリックオアトリート！お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ！」
と言って、お菓子の代わりに小さなおもちゃをもらっているようだ。
病衣や点滴がなければ、普通の元気な子どもたちと見違うほどだ。

互いの窓越しに、医療用帽子をかぶった一人の子どもと目が合う。
私が手を振ると、その子も手を振り返した。
口パクで何か言っている…。
「…ろり…？？」
あぁ！「ハッピーハロウィン！」ね！
私は嬉しくなって、
「ハッピーハロウィンー♪」
と口パクしながら手を振る。

すると今度は、
①両手でお花を開いた形を作ったところに顔をのせ、
②敬礼のような仕草をしたあと、おでこからピッと手を離し、
③力こぶを作って見せた。

ん？？何のジェスチャー？？
頭を悩ませていると、

その子が、また同じ口パクをしながら
その動作を繰り返した。
①ハッピー
②ハロー
③ウィン

あぁ！！
①HAPPY②HELLO③WIN（ween）ね！

そして、最後に私と自分を交互に指差した。

しあわせに🤗
あいさつして🙋
（病気に）勝つ💪
お互いに⇔

あんな小さな子どもが
私にエールを送ってくれたのだ…。

気弱になっていた自分が情けなくなり、
私も窓越しに同じジェスチャーで
HAPPY！　HELLO！　WIN！
と返す。
もちろん、力強く💪目一杯💪
うん、明日の手術なんて、もう怖くない！