2020年7月の俳句。
夜の雷 睡蓮鉢の 海騒ぐ
さかあがり くるりと背には 木下闇
木下闇(こしたやみ)は 夏の木々がうっそうと茂り 樹下は昼とは思えぬほど暗い様子をいう。
校庭の外縁にある鉄棒、得意のさかあがりでグランドを少し高い位置から見渡す。
しかし背後には夏の木々が生い茂り。樹下には不穏な闇が広がっている。
あさがおや 反時計回りに わが身抱く
あさがおの蔓は支柱にたいして半時計周りに巻くというが、そもそも蔓はそこに支柱があることをどのようにして認識するのだろうか。
上から観察すると、蔓は直径10cmの範囲の空間を一時間ほど動きながら支柱をさがしているのだという。
そしてなにかに触れたときそこに巻き付くのだが、人間に例えれば左肩を柱に押し付けながら回転していく要領なのだという。
鍵穴に 潮風の息 梅雨じめり
かくれんぼ もう出ておいで 月見草
目立たぬ場所で 日が落ちてから先始める月見草。
だれにも見られないままひっそりと咲いている。今ならだれもいないから出ておいで。
かくれんぼをしたまま出ることをわすれていた者たちが現れる。
夏風邪に 音の本だな 聞いており
髪洗ふ いつも木曜 理髪店
風食むや レタスとチーズ ハムサンド
レタスの葉脈は 帆柱のようだ。
それは風をはらんでふわりと緑の翼を広げているかのようだ。
夏帽子 空のにほいを 纏いおり
夏の雲 岬めぐりの バス遥か
水平線にもくもくと広がる雲の峰。どこまでもバスを追いかけてくる。
山本コウタローの「岬めぐり」の歌が聞こえてきそうだ。
コロナの季節が終わって こんなバスの旅が楽しめる時が早く来ればと思う。
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